VANDREAD連載「Eternal Advance」




Chapter 7 -Confidential relation-






Action2 −密談−




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 タラークが誇る戦艦イカヅチにマグノ海賊団の半数以上を収容できる母船が融合した巨大戦艦「ニル・ヴァーナ」。

男三人に女百五十名を乗せて稼動し続けるこの船は全長三キロを優に超える巨大戦艦である。

ペークシスプラズマの暴走が原因でという偶発的な誕生をしたニル・ヴァーナは、その全てが規格外だと言えた。

何人たりとも近づけない高密度な防衛ラインに強固なシールド。

母船を脅かす敵が近づけば最新鋭の武装とドレッドが即座に対応して殲滅する。

総合的戦力では、タラーク・メジェール両軍と渡り合える力を有しているのだ。

あらゆる意味で常識外れな船だが、外枠に囚われず内装もまた変わっている。

元々二つの船が一つになったと言う事もあり、元のイカヅチと海賊母船はそれぞれ上下に展開して融合された形になっていた。

お陰で完全に繋がってしまったものの、ペークシスの浸食こそ受けても二つの船の内装には大規模な変化はない。

イカヅチ側には主要機関として主格納、メインブリッジ、ペークシスプラズマが管理されている管理機関、そしておなじみの監房が、

海賊母船側には主要機関としてカフェテラス、レジシステム、そしてプライベート・エリアがある。

内包される機関はまだまだ存在はするが、常時フル活動されている部署がこのそれぞれの機関なのだ。

これだけのシステムとクルー達を収容している艦内は当然の如く広大で、一つの街と呼んでも差し支えはない。

マグノ海賊団お頭のマグノですら全体は把握出来てはおらず、植民船団の名残があるというイカヅチにはまだ調査未の箇所は残されている。

副長のブザムも推し進めようとはしているのだが、如何せん度重なる敵の攻撃や長旅に必要な補給で頭を悩めているのが現状だ。

融合戦艦ニル・ヴァーナ。

誕生から始まる一連の謎を保有するこの船の秘密を知る者は現時点では誰もいない。

深夜時大半のクルー達が眠りに就いている艦内を歩きながら、カイはそんな船内をテクテク歩いていた。


「相変わらず広い船だな・・・目的地に行くまでにえらい時間がかかっちまう。
ま、暇だから別にいいけど」


 Tシャツに黒のズボンというラフな格好で歩くカイに、腰に着けている十手は揺れて輝いている。

監房を出て来たカイはクルー達の自室のあるプライベート・エリアへ赴くべく、一路母船側へと向かっていた。

カイ達男のいるイカヅチとディータ達女のいる海賊母船は上下に分かれているために、かなりの距離がある。

両者を端的に繋ぐエレベーターは一つだけ設置はされているのだが、そこまで歩くのも一キロは足を運ばなければならない。

その気になれば機関クルー達がエレベーターの増設を行う事は可能だが、必要がないからと工事すら行われていない。

理由は単純だった。

男に自分の母船に入られたくはない、土足でプライベートを踏み躙られたくない。

この理由はメジェールに住んでいた女達の意見としてはもっともであり、マグノやブザムも取り立てて反論はしなかった。

嫌がるクルー達を無理やり命令づくにする程の不便さを感じていなかったからだ。

バートやドゥエロにしても女性達のいる母船にわざわざ足を運ぶ理由もないので、反対も賛同もしていない。

共同生活という形はとってはいるが、両者不可侵という暗黙のルールが冷たく漂っているのである。

結局この船内でエレベーターが少ない事に不便さを感じているのはたった一人、カイのみだった。


「夜中は爆睡しているから気づかなかったけど、かなり静かなんだな」


 イカヅチ側には最低限のクルーしか普段は在中していないので元々静かだが、夜の時間は一層の静けさがあった。

無機質な冷たさのある艦内通路はカイの足音しか響かず、小さく鳴っては消えていく。

周囲の照明も辛うじて歩けるほどしか点火されておらず、壁に設置されている通風孔からは空調音しかない。

それでいて無闇に広いともなれば、寂しがり屋ならば心中不安になってしまうだろう。

生憎そんな繊細な神経はカイにはないが、話す相手もいないとなると退屈は退屈だった。

以前もこうして船内を探検した事はあるが、あの時はピョロも一緒だった。

船も暴走した状態であり、クルー達もてんやわんやしていたので、ある意味で賑やかだったと言える。

物足りなさを感じながら歩き続けるカイだったが、やがて中央部を抜けて通路は枝分かれしていた。


「・・・ふむ」


 前左右に分かれている通路は、それぞれ別の部署への通路となっている。

左はペークシスプラズマのある機関部、前はメインブリッジ、右は海賊母船へのエレベーターへの近道だった。

カイはその場で立ち止まって考える。


「向かう先は女達のいる船。となると右だけど・・・・」


 目的地が決まっている以上悩む事はないのだが、カイはある疑問にかられていた。

正面通路より繋がるメインブリッジ。

昼間は暇な時マグノやエズラ、アマローネ達やバートと話をする為に行く場所だが、深夜はどうなっているのだろうか?

バートは寝ているので船そのものの操縦はオート操作になっているのだろうが、肝心のブリッジ内に人がいるのかどうか怪しい。

マグノ達にしても日夜働く訳にも行かないので休息は取っている筈であり、真夜中の活動を行っているとは考え難かった。


もしかするとコンピューター管理となっていて、夜には誰もいないのかもしれない。

例えば、もし例えばである。

ブリッジにこっそり忍び込んで誰もいなければ、何をしようと咎める者は誰もいない。

そう例えば普段何度頼み込んで使わせてくれなかったコンソール類や、秘密のありそうな艦長席を調べてみても誰も分からない。

誰もいないのだ、こっそり元に戻しておけば朝連中が来ても自分がやったとは誰一人思わないだろう。

セキュリティが万全である可能性も十分あるのだが、カイはその可能性を頭の中から締め出してにんまりとする。

まだ朝までの時間はある、ちょっと寄り道してそれから女達の元へ向かっても支障はないだろう。


「よーし、そうと決まれば早速ブリッジへ行くか!」


 るんるん気分で軽いステップを踏みながら、カイは正面の通路を歩いていく。

そのままブリッジへ一直線の通路は、カイにとってはもうおなじみだった。

目を瞑っても辿り着けるほど何度も何度も歩いてきたのだ。

カイは一心に向かいながら、今までなかった見果てぬ極地に子供のようにわくわくさせていた。


「あー、夜中に起きていてよかった。
うんうん、女を知るという意味でもばあさん達の職場を俺様が調べるのは論理的に当然だな。
個人的にバートがいつもいるナビゲーション席にも興味あるし」


 どの辺が論理的なのかさっぱり分からないが、カイは自分を納得させてブリッジへの自動扉前で足を止める。

この向こう側に無人のブリッジがある。

普段はマグノやブザムがいてなかなか手が出せなかった機械類にも、今この時ばかりは遠慮なく触りたい放題なのだ。

カイは気合を入れるべく指を鳴らす。


「いざ、ゆかん!俺の遊び場――もとい、メインブリッジ見学に!」


 高々と拳を上げて足を一歩踏み出すと、呆気なく扉は左右に開閉して入室を促した。

カイは躊躇う事無く中へと入ると、案の定アマローネ達の姿はなかった。

昼間は明るいブリッジ内は夜は真上のたった一つの照明を除いて電源を落とされており、正面窓に見える宇宙のように暗い。

中へ入って周りを見渡すが、中央の艦長席から真正面のブリッジクルーシートに至るまで無人だった。

カイは物陰に入ってこっそりと様子を伺うが、人の気配は一切感じられない。

きょろきょろと見ても声も何も聞こえないので、カイは安心してスタスタ歩いていった。


「うっしゃ、誰一人いねー!これでここは俺の自由し放題・・・!」

「―――ぇ?」


 カイはビクりと全身を一瞬振るわせた。

そのまま即座に回れ右をして再び物陰へと高速ダッシュをして、辺りを見渡す。

自分の声に重なるようにして聞こえたか細い声。

カイの耳に届いたのはまさしく人の声だった。


「だ、誰かいる・・・・のか?」


 見つからないように配慮しながら、カイは四方八方視線を動かした。

ブリッジクルーのアマローネ・ベルヴェデール席は無人。

オペレーターのエズラ席も無人、ドクターのドゥエロ席は先程主が就寝しているのを確認した所である。

艦長のマグノ席・副長のブザム席にも人影すら見受けられない。

ブリッジ先端のナビゲーション席も遠目から目を凝らしてみるが、光一つ発していなかった。

だいたい操舵手のバートも可愛げのあるデザインのパジャマを着て寝ているのを見かけたばかりだ。

ブリッジには誰もいない筈である。

カイは扉付近の影に埋もれながら、しきりに首を捻った。


「俺の幻聴かな・・・?」


 人間生きていれば一度や二度は幻聴を耳にはする。

呼びかけられたかと思えば気のせいだったり、人の声と思えば機械音であったりする事だってある。

その場で五分ほどじっとして何も起きない事を確認して、カイはそっと物陰から出た。

初めこそゆっくりと歩くが物音一つ立たない事に安心して、今度こそ堂々と歩いた。


「何だ、驚かせやがって。誰一人いないじゃねーかよ。
じゃあ気を取り直してまずはアマローネ達の席をばちょっと拝借・・・」

「―――ぁ、あ・・・!」


 今度こそ幻聴ではない。

カイは真顔になってとりあえず近くのドゥエロの席の影に入って、声が聞こえた方を見つめる。

自分とは対面側、中央を挟んだ左手のシートの影にこそこそ隠れる何かが目に入った。

何とか正体を確かめたかったが、薄暗くてはっきりしない。

カイは隠れながらも十手を腰から抜いて、用心深く構えた。


「アマローネやベルヴェデールとかだったら、俺が来ても隠れたりはしないよな。
ブザムやばあさんが俺に対して逃げたりはしないし・・・・・
はっ!?
こ、これは、ま、まさか・・・・」


 何かに気がついたように、カイは戦慄する。

緊張感を周囲に漂わせながら息を呑んで、じっと十手を握る手に汗を滾らせた。

ブリッジクルー達ではなく、こんな深夜にこそこそと隠れてブリッジにいて、しかも自分を見て隠れる存在。

心当たりはたった一つしかなかった。

タラークでの酒場の生活で、育ての親であるマーカスに借りて読ませてもらった書物に記載されていたもの。

それは――


「幽霊だ!」


 何故か自信満々に小声でそう言って、カイはごくりと唾を飲んだ。

まさか宇宙の彼方を航海している船のブリッジで見られる事になるとは夢にも思わず、カイは再び震えが走るのを感じた。

恐怖ではない。

それは未知なる存在に触れる事が出来るかも知れないという生物学的な好奇心。

人類が今まで発達させ続けた起因となるその感情が、カイは人一倍強かった。

襲われるかも知れないという危機感は確かにあるが、それを上回る高鳴りにカイは知らず口元が緩む。


「夜とはいえ人様の船に、しかも船を支える要となるブリッジに無断で入るとはふてえ野郎だ。
不法侵入で俺が直々にとっ捕まえてやる」


 自分の事は完全に棚に上げて、カイは決意しゆっくりと行動を開始する。

物陰から物陰へ、床から床へと移動を繰り返して、幽霊に気づかれないように接近を試みていく。

カイから向こう側が見えないように、相手側からもカイの姿は見えづらいようだ。

隠れに隠れて位置を悟られまいとするカイの行動が適ってか、隠れたままの幽霊は身動き一つせずにいる。

順調に移動する事が出来たカイは、そのまま近くのシートの下に隠れて十手をそっと握った。

目測にして約数メートル先。

幽霊が動いていなければ、そのまま走って近づける間合いにまでカイは辿り着いた。

いよいよ遭遇となるチャンスに、カイは体がうずうずするのを抑えられない。


(捕まえたら青髪とかに見せてやろうっと。
普段は冷静な青髪もさすがにびびるだろうな・・・くっくっく・・・)


 大分近づいてきているので心の中で成功を確信して、カイは笑う。

段取りとしてはカイが考えた作戦はこうだった。

見つからぬように接近、不意をついて十手で打ち倒し、その場で捕獲。

捕まえてしまえばこっちのもの、メイア達に突き出すなり見世物にするなり何なりとできる。

安易かつ力任せな作戦だったが、カイは成功を信じて一度深呼吸をした。

隠密行動を行うには冷静な判断力と、即座に行動を起こせる思い切りが必要とされる。

最後に一度様子を探ってみるが、物陰の主は沈黙を保ったままだった。

何かたくらんでいるのか、警戒して隠れでもしているのか。

いずれにせよ、行動すると決めたからにはもう迷いはなかった。


(3・・・・2・・・・1・・・)


 心の中でカウントダウンしながら、カイは瞬間的に立ち上がった。


(0!)


 そのままシートから飛び出すと、カイは幽霊が消えた辺りに突撃をかける。

一瞬もういないのかもと懸念したカイだったが、その心配は杞憂だった。

もぞりと何かが動く影があるのを目に捉えたカイはにっと笑って、そのまま影に体当たりを行う。


「ぃっ!?」


 まさか攻撃されるとは思っていなかったのか、そのままカイと共に幽霊は床に転がった。

カイは抵抗されないようにがっしり肩を捕まえて、十手を突きつける。


「よっしゃ、確保!」


 むんずと毛触りのいい腕を力強く掴んだカイは、自分の勝利を確信して会心の笑みを浮かべた。

思っていたより手ごたえのない相手だったのか、若干拍子抜けするほどだった。

幽霊というものは姿形が希薄の存在だと書物に書いてはいたが、こうして触れてみるとちゃんとした感触があるではないか。

そもそも幽霊とは死した魂が未練を残して具現化したものであり冷たいと記されてもいたが、手から伝わる感触は暖かい。

――ん?

カイは思い当たって眉を潜める。

毛触りのいい腕・・・・・毛触り?


「えぅ〜、た、助けて下さい。殺さないでくださいぃ・・・」

「あ・・・・・・・・・」


 組み拉がれて泣き声を上げて助けを求めているのは、可愛らしい熊の着ぐるみを着た女の子だった。

ブリッジクルーの一人セルティックがべそべそ泣き続けていた。

















「ご、ごめんな。ちょっとお兄さん、勘違いしちゃってさ」

「・・・・・・・」

「いやほら、ちょっと夜中に目が覚めてしまって、暇になってここに来たんだけど・・・・」

「・・・・・・・・・」

「そうそう、こんな夜に健気に頑張るクマちゃんを応援しようと思ってきたんだっけ」

「・・・・・・わたしに聞かないでください」

「機嫌直してくれよ。あれは事故なんだって・・・・」

「・・・・・・近づかないでください」

「えぅ〜・・・・・・」


 静かな騒動が一通り終わって、ブリッジ内にカイとセルティックの二人がいる。

カイは何とか宥めて事の経緯を説明したのだが、セルティックを怒らせてしまってこの有様である。

セルティックが今座っている席は自分の席だが、カイはその対極のドゥエロの席にまで後退させられていた。

両者の間にはブリッジの端から端までに匹敵するほどの距離感がある。

完全に怒ったセルティックが「一歩でも近づいたらお頭達を呼んで処罰してもらう」と脅したのだ。

どちらに非があるか一目瞭然のこの状態に、カイは困り果ててしまっていた。

仲直りをしたいとは思うのだが、少しでも近づいたらセルティックは手元のコンソールに手を伸ばそうとする。

カイが接近すれば、すぐに緊急回線を開ける準備が整っているのだろう。

もしも艦内放送ででも大声で悲鳴をあげられたら、寝ているクルー達が一斉に起きて来る。

発信源がブリッジだとすぐに感づくであろうクルー達が殺到してこの場に現れたら、皆はどう思うかたやすく想像がつく。

悲鳴を上げているセルティックに、傍で詰め寄ろうとしている男(自分)。

間違いなく保安クルーにでも縛り付けられて連行され、二度と監房から出してもらえなくなるだろう。

そうなったら、前回の戦いでようやく少しは仲良くなれつつあるメイア達への信頼度は一瞬で奈落に落ちる。

カイは仕方なくその場に腰を下ろし、出来る限り優しく話し掛けた。


「いや〜、それにしてもこんな夜まで仕事って大変だな」

「・・・・・・・・・」

「アマローネやベルヴェデールにこき使われてたりするんじゃないか」

「・・・・・・・・・」

「あいつらは夜が苦手そうだもんな、うんうん」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・はあ・・・・・・」


 以前のアマローネ達との喧嘩からでもそうだったが、セルティックとカイとの仲は悪い。

悪いと明記するより、一方的に避けられていると言った方がいいだろうか。

元来より人見知りする傾向のあるセルティックだったが、こと男となると態度は豹変する。

看護婦を勤めるパイウェイが男嫌いなのに対して、セルティックは男恐怖症と言えた。

親しい間側のアマローネやベルヴェデールとなら打ち解けて話せるのだが、例え同性でも他のクルー達が相手だと尻ごみをしてしまう。

ましてや男のカイとなると、セルティックは話をするだけで窮屈さを感じてしまうのだ。

特に今はいきなり襲い掛かられて、不満と怒りが心を渦巻いている。

カイが溜め息を吐いているのを感じながらも、セルティックは見ようともせずに手元のコンソールで作業を続けた。

本当なら追い出したい所だが、そこまでの勇気はない。

もしカイが本気で襲ってこられたら抵抗出来ないので、その時は迷わず緊急コールをするつもりだった。

今現状でそうしないのは、ひとえにアマローネやベルヴェデールへの義理立てである。

もし通報すれば一番に駆けつけるのがこの二人だろう。

セルティックは一番の年下で友達も少なく、アマローネとベルヴェデールの二人が親友同士なのだ。

カイとの事で変に勘ぐられて、友情にひびが入るのは嫌だった。


「せ、せめてなんか返事とかしてくれると嬉しかったりするんだけどな、ボク・・・」

「・・・・・・・・・・・」

「う〜・・・・・・・・・」


 完全にへそを曲げられて、カイはがっくりと肩を落とした。

悪気があった訳ではない、それは本当だ。

セルティックだと事前に気づけば捕まえようとは思わなかったし、怖がっているのが分かれば何とか宥めようともしただろう。

きちんとセルティックの席を確認していなかったのが不運だった。

謝りたいとは思うのだが、こうまで頑なだと取り付く間もない。


『畜生、もういいよ!へん、お前みたいな縫い包み野郎にご機嫌なんぞとってられるか、バーカ』


 などと言うのは簡単だが、その瞬間セルティックとは永久におさらばだろう。

感情的になってもどうしようもないのだ。

人との仲は、特に反目しあっている女との仲を得るには戦い以上に困難である。

以前の苦い経験から、カイはその事を時間として受け止めていた。


(どうしよう・・・?何とかして機嫌を回復させたいんだけど・・・)


 それに、これはいい機会でもあった。

アマローネ達とは少しずつ話せるようにはなってはいるが、セルティックは今だに避けられ続けている。

男と女である以上仲がよくならないのは当然という考え方はもうカイにはない。

ディータ、ジュラ、バーネット、アマローネ、ベルヴェデール、ガスコーニュ、ブザム、エズラ、マグノ、そしてメイア。

女の思いもよらない面の数々を知って、男とは違う別の魅力や強さを見つめられたのだ。

目の前のセルティックにも、自分の知らない顔がきっとあるに違いない。

何より、カイはセルティックの隠れた素顔が見たかった。


(う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん、女を喜ばすには・・・・・・・そうだ!)


 カイは手をぽんと打ち、そのままブリッジを飛び出していった。


「??」


 その後姿を見送って、セルティックはカイが呆気なく退散した事に戸惑いを感じこそ感じたが、


「ようやく静かになった・・・」


 セルティックは一呼吸ついて、そのまま仕事に戻った。

























<続く>

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