ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 24 "Men and Women"






Action90 −精確−








惑星タラークはテラフォーミングに成功した、黄土色の惑星。

かつてテラフォーミングに失敗したメジェールとは違う成功例ではあるが、実を言うとメジェールの衛星である。

そういった意味でも因果関係はあるが、本星メジェールは人間が住める環境ではなくなっている為、タラークとメジェールとの間で差は生じる。


そんな地表を、一台の車が走っている。


「……首相達は演説とかで、タラークはかつてない繁栄を遂げているとか言ってたけど」

「一歩、国の外を出ればこんなものだ。
まあ現実というのはえてしてそんなものかもしれないが」


 惑星タラークはテラフォーミングに成功している。ただし決して完璧ではない。

テレフォーミングの定義は学者に任せるとして、タラークにおける環境は人は住めるが、あくまで住めなくはないと言った程度だ。


ドゥエロとバートが見つめる世界は、荒廃していた。


「痩せた大地。
シャーリーの住んでいた世界ほどでないにしろ、草木もあんまり生えていないね」

「首都は都市建設が加速している分、環境を無視した工事を進めているからな。
公害も懸念されているが、あのままだと時間の問題だろうな」


 ドゥエロに無理強いされた車の運転、才能があったのか荒廃した大地でもスムーズに進めている。

草木が少ないということは当然、動物が住める環境でもなくなっているということである。

こうした自然の世界で人間にとって動植物はある種のリスクとなるのだが、その点不幸中の幸いというべきか、ドゥエロ達の運転は問題なく行われている。


国境を超える上で下手な武装が出来なかった分、自然の脅威にさらされると対抗できない。


「僕達、無事に帰れるのかな……」

「専門ではないが、それでも士官学校卒業の身だ。
方角などは正確に掴んでいるので、迷走することはない」

「おお、頼もしいナビゲーターだね」

「ただ国境外の未開拓地域について、情報は公開されていない。
当然正確な地図などはないので、このまま手がかりを得られなければ撤退を視野に入れないといけない」


 未開拓地域については、極端に情報が不足していた。

これについては主に2つの理由がある。まず1つは未開拓地域は基本的に進入禁止となっている事。

首都の外は危険であることを理由としつつ、外部への関心をなくすことで閉鎖的な空間の中で思想の教育を行っていく。地球に、献上するために。


そしてもう一つは、単純に情報が少ない為である。


「げっ、燃料次第ということか……」

「首都から極端に離れているとは考えにくい。
あまりにも隔絶していると、監視や管理も出来なくなるからな。

私なりに計算し、目処をつけた上で動いているのでナビゲートに従ってくれ」

「分かった。ここまで来たら一蓮托生だよ、ドゥエロ君」

「君もすっかり度胸がついたものだな」

「……まああの馬鹿も含めて、僕にも友達なんてものが出来たからね」


 指針なき旅路、往くあてのない希望。されど、友だちはいる。

バートはカイを含めた男三人の生活を思い出す。官房の中での共同生活を。

楽しいことばかりではなかった。最初は面識もない三人だ、壁もあり思想の違いもあった。


それでも笑いあり、喧嘩し合い、一緒に生活を過ごした。命懸けで旅をしてきた。


「そうだな、私も友達などいなかったが……あの旅は楽しかったよ」

「今度はもっと平和に旅したいもんだね、三人で」


 荒野を旅する時間は続く。

天候は良好だが、広大すぎて目眩がしてしまう光景。こんなところで誰か見つけられるのか。

ドゥエロ達が探しているのは味方となってくれる地球人達、現在コールドスリープをしている、地球から旅立った人達。


今の自分達と同じ旅人、地球に染まっていない人間を探している。


「! ドゥエロ君、あれ……!」

「むっ……!」


 広大な荒野で、一人の老人が大地を耕している。

明らかな第一世代、それでいて権力に甘んじず世界の開発に勤しんでいる。

あまりにも堂々たるその姿勢は、都市で生きてきた若者達にある種の羨望を与えてしまう。


あまりにも人間らしい、その男ぶりに。



「来たか、若人達」

















<to be continued>







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