ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 24 "Men and Women"






Action91 −那賀−








「来たか、若人達」


広大な荒野で、一人の老人が大地を耕している。

明らかな第一世代、それでいて権力に甘んじず世界の開発に勤しんでいる。

老人と称したが、その肉体に衰えは感じさせず、大地に根付くエネルギーに満ち溢れていた。


若者達は車を停車させて、自然と礼を尽くして頭を下げる。


「お初にお目にかかります。突然のご訪問、失礼いたします」

「僕達は真実を知るべく、そして真実を明らかにするべく参りました」


 若者達の嘘偽りなき言葉を聞いて、老人は耕す手を止めた。

警戒心はない。頭を下げる若者達に対し、老人は目を細める。

お互いに初対面であり、首都の外である未知なる大地でありながら、舞台は整っていた。


老人は汗を拭いて、若者達を促す。


「よく来てくれた。
こちらから出向くつもりではあったが、よもやこのような出会いが待っていようとは」

「! 今この国で起きていることを察して、貴方も行動させる決意を固められたのですか」

「ほう、聡い坊主だな。そちらはまだ坊やのようだが、共に行動する気概はあるか。
お互いを支えあう良き関係であるらしい」

「ぐっ、子供扱いされてる……仕方ないけど」


 ドゥエロとの評価の違いに肩を落とすバートに、老人はカカと笑った。

国の外を飛び出してまで、自分に会いに来たその危害を認められている。

そういった意味では評価は同様なのだが、言葉一つでうろたえてしまうようではまだまだ坊やと呼ばれても仕方ないかもしれない。


その後ドゥエロ達は、大地に建てられた小屋へと招かれる。


「あいにくと水と簡易食料しかないが、気を悪くせんでくれ。歓迎はしているつもりだ」

「いえ、お心遣い感謝します。水や食料の重要性は、我々も理解しているつもりです」

「ふむ、そこまで言うからには旅をした経験があるのだな。
タラークの中にいては言えない言葉だからな」


 老人は感心したように唸り、ドゥエロ達も目を丸くする。

タラークの住民だからこそ分かる。国の外へ出ることがどれほど困難で、過酷であるかどうか。

まず国家が許さないし、国を出る手段も限られている。少なくとも軍人でもなければ不可能だろう。


そうしたタラークのいわゆる常識を、老人は意にも介していない。


「確か一年前、新造された軍艦がメジェールの海賊に襲われた事件があったな」

「ご存知でしたか」

「国の外にいるが、蚊帳の外というわけではない。世情は把握しておるよ」


 ドゥエロは感心する。情報を把握していることではない、真実を知ろうとする行動力にだ。

国から与えられた情報に甘んじるのではなく、自分で集めた情報を真実とする。

国を疑っていなければありえない行動であり、同時に国を思うからこそ世情を知ろうとしている。


ドゥエロはこの老人に、グランパやタラーク上層部にはない大人を感じさせた。


「ここへ来た時点で察してはいたがな。
過酷な旅であったであろう、お主達だけで生き延びるには困難であった筈だ。

海賊たちへの私怨を感じさせんところを見るに、お互い力を合わせて生き延びたといったところか」

「す、すごい……何もかもお見通しだ」


 まだバート達は何も語っていないのに、その行動だけでは背景まで察している。

推理に洗脳や思い込みがあれば容易く捻じ曲げられるが、老人はすんなり真実へとたどり着いている。

ドゥエロとバートはお互いを見やり、頷いた。足を運んできた甲斐があったかもしれない。


老人からしても、それは同じだった。


「儂はジンと言う。見て分かる通り第一世代、「八聖翁」の一人じゃ。
ああ、変に畏まる必要はないぞ。しょせんは冠に過ぎん。

絶縁こそしとらんが考えが合わんでな、国とは距離を置いておる」


 ジンと名乗った老人の紹介を受けて、ドゥエロは半分予想通りであり、もう半分は予想外だった。

八聖翁の一人である事は勘付いていた。第一世代である以上、よほどの事情でもない限り無関係はありえないだろう。

だからこそ辺境に住んでいるこの状態を受けて、国とは袂を分かっているのだと思い込んでいた。


ドゥエロは切り込んでいくことにした。


「考えが合わないというのは――地球に関する考え方、ですか」

「やはり知っておったか……
国の外を出てまで儂に、いや儂のような人間がいないか冒険に出るとなれば、よほどの事態であろう。
いいだろう、腰を据えて話そうではないか。

だが、その前に」

「? 何でしょう」


「これまでよく頑張ったな、お前たちは立派じゃ」

「あっ……」


 ジンより心からの笑顔を向けられて、バートは思わず口を押さえて涙を持した。

懸命に生きてきた一年間、命懸けの旅。

仲間のために、国のために、そして自分自身のために頑張ってきた。けれどそれが当たり前とされていて――


誰かに、褒められたことはなかった。



本当の大人に出会えて、ドゥエロ達はようやく報われたのである。

















<to be continued>







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