ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 24 "Men and Women"






Action89 −開邦−








 ――しばしの沈黙が流れた。


「……ユメというあの精霊とやらに、追求したじゃと?」

「うむ」

「取り繕っても無駄じゃぞ。
あれほど怪しい存在を放置しておいて、何故今更追求なんぞしたのじゃ」

「だから、ミスティに指摘されたからだっての」

「むっ……」


 アイが突きつけているレーザガンの銃口に、ブレはない。

だが、相対するカイは平然と受け答えしており、スパイといった様子は一切見受けられなかった。

一流のスパイであれば素知らぬ顔をすることくらい出来るだろうが、それにしてもカイは泰然とした態度を崩さない。


アイは鋭く睨みつける。


「ならば追求した内容をこの場で説明してみるがよい」

「別にいいけど、皆に話すつもりだから二度手間になるんだが」

「ええい、ゴチャゴチャ言わずに言ってみるのじゃ」

「分かった、分かった」


 ユメの本体は、地球側が所有するオリジナルのペークシス・プラグマである。

そもそも彼女はオリジナルのみに宿る精霊であり、これについてはカイが以前立ち寄った惑星で聞かされた話の通りだった。

ペークシス・プラグマ同士の交感を行うことは出来るが、行き来が可能なのはあくまで精霊同士のみ。


地球人がマグノ海賊団側のペークシス・プラグマを行き来して、直接乗り込んでくる真似はできない。


「だから俺本人が地球と行き来する事なんて出来ないんだよ」

「今の話では、ユメを介せば連絡は取り合えるではないか」

「じゃあバラす必要がないだろう」

「スパイである可能性が増しただけじゃが……まあいい。続けよ」


 地球人がオリジナルのペークシス・プラグマを通じて、こちらへ攻めてくることは出来ない。

理由は非常に単純で、ユメが交感させないようにしている。

むしろ地球人には何一つ情報は打ち明けていない。


精霊であるユメの存在ですら、明らかにしていないのだと言う。


「つまり向こうはオリジナルの力を有しているが、ユメの能力は行使できないということかの」

「顔も見たくないっていう態度だったな」

「なるほど、地球人は存在するという事か」

「? 存在するから刈り取りなんぞという暴挙に出ているんだろう」

「無人兵器が飛び交っているのじゃぞ。
生身の人間が存在しているか、怪しいじゃろうが。

儂は正直兵器による暴走の線も疑っておったくらいじゃ」


 刈り取りという狂気、地球という悪夢。

どれもこれもが現実味がなさすぎて、認識するのも拒んでしまうほどの絶望。

おおよそ正気の人間が考えられる事ではなく、アイは兵器による暴走という推論も行っていたのである。


あれほどまでに卓越した技術を見せつけられては、無理もない推測であった。


「誰もペークシス・プラグマを行き来することができんのじゃな」

「俺なら可能性があるとか言ってたな」

「……何故お主は自分がスパイである可能性を上げていくんじゃ」

「あ」


 ユメの本体が地球側の船に格納されており、どうしてもユメの行動が制限されてしまう。

本当なら完全に見限ってカイの力となりたいそうだが、現実的には出来ない。

ユメの存在そのものは知覚していないにせよ、ペークシス・プラグマのオリジナルそのものは地球が管理している。


もしもユメの裏切りが発覚すれば、結晶体が破壊される危険がある。


「お主、その点はどうするつもりじゃ」

「どうするとは?」

「お頭達に話せば、なるほど協力してくるやもしれん。
しかしじゃ、事は戦争である。必ず勝たねばならん戦じゃ。

万が一となれば、地球の船ほど滅ぼす選択肢も考慮せねばならん」

「なんだと……!?」

「これまでの戦いを振り返ってみよ。
船を破壊せずにペークシス・プラグマを奪還するような余裕があったのか」


 ――地球との戦いは、常に総力戦である。

手加減するような余裕は全くといっていいほどなく、全力を尽くさなければ殺される。

相手が弱ければ話は別だが、地球側の戦力は惑星を破壊するほどである。


全力を尽くさなければ負ける。


「お前こそ、これまでの戦いを振り返ってみろよ」

「む……?」

「二度目の母艦戦では相手を破壊せず、停止して母艦そのものを奪うことが出来ただろう。
その要領でやればいい」

「何を言っておる、バカバカしい。ウイルスを使う作戦なんぞ二度も通じるわけがなかろう。
敵側にも伝わっているのは間違いない。ウイルス対策は徹底しておるはずじゃ」


「俺が言いたいのはやり方次第だってことだ。
少なくとも俺はユメを見殺しにするつもりはない。

お前が俺のエンジニアであれば、この蛮型を使った行動で判断しろよ」

「……」


 アイが突きつけているレーザガンの銃口に、ブレはない。

まるで、確信があるかのように。


まるで、カイのことを信じているかのように。

















<to be continued>







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