ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 24 "Men and Women"






Action80 −後部−








現在タラーク・メジェール両軍により閉鎖された格納庫へ向かうと、着物姿の少女が一体の蛮型の前に立っていた。

全面降伏して、マグノ海賊団の全武装が封印された。システム類にはロックが掛かり、武装類は全て物理的に拘束されている。

特に蛮型とドレッドは海賊団にとって主武装なので、格納庫ごと閉鎖されていた。


それが今全てではないにしろ、解除されつつある。


「むっ、戻ってきたか」

「俺の蛮型、使えるようにしてくれたのか」

「お主の専属エンジニアじゃからの、これが儂の仕事じゃ――と言いたいが、流石に大変じゃったわ。
整備スタッフの苦労が偲ばれるの、帰ってきたら労ってやらんとな。

閉鎖は解除できたが、拘束を解くには力仕事も必要じゃった。やれやれ」


 アイと呼ばれる少女は奇抜な服装と物言いをする人間で、海賊団の中でも浮いた存在である。

独特の気品があり、世間離れした器量と容姿を持っているが、独自の価値観が浮世離れしていて浮いてしまう。

世間にも馴染めず、国からも追い出されて、海賊に入った。そういった経緯を持っている――


と、本人が周囲に語っている。


「取り急ぎ、お主の機体は発進できるようにしておいた。
弄られていたシステム類も時間がかかったが解析できたので、幾つかの機能が使用できるようになっておるぞ」

「システムが弄られている……?」

「お主らがスーパーヴァンドレッドとか抜かすアレの影響じゃ。お主の機体もバージョンアップされておったろう。
一応言っておくがお主にとってはパワーアップで浮かれておっても、エンジニアからすればありがた迷惑なんじゃぞ。

なんせ訳の分からん理由でシステムが性能アップして、今までの運用が出来なくなったんじゃからな」


 カイやマグノ海賊団の一年間は、決して物語ではない。

フィクションの世界であればパワーアップしたら大喜びなのだろうが、現実世界では違う。

システムが理由不明でバージョンアップしたら、大騒動である。


これまでの運用方法では対応できず、全て一から構築し直さなければならない。


「おかげで随分苦労させられたが、元のシステムまで改変されずに済んだのは幸いじゃった。
改変を行ったペークシスの配慮だったかもしれんな。精霊なる意思があったようじゃからの」

「そうか、ソラやユメが配慮してくれたのか」

「超常現象はあまり信じぬが、自分の目と耳で確認したことは受け入れる。ゆえにこそ、決戦前に間におうたよ。
この船に残った儂の仕事は何とか果たせた」

「色々助かったよ。いつも世話になるな」


 改変されたシステムを解析して、運用可能な状態となった。おかげで使えなかった機能もようやく使用可能となった。

二人ならんで、SA蛮型を見上げる。一年間もの死闘、何度も傷付き、その度に改修と改変を経て今の状態となっている。

本来であれば機体を動かしたこともない素人のカイが戦えたのは、蛮型とペークシス・プラグマのおかげだった。


そして今、その感謝の列にエンジニアも加わっている。


「後は儂自身の責任を果たす時が来た」

「責任はすべて果たしてくれただろう」

「それはあくまで儂の仕事じゃよ。これから果たすべきは責任じゃ」

「だから責任って――っ」


 ――カイが並び立つ隣を見た瞬間、銃口が向けられる。

マグノ海賊団の標準装備であり、メジェール軍の兵士が愛用するレーザーガン。

殺傷能力は低いが、決してゼロではない。


「本当に単細胞な男じゃの。少しは考えなかったのか」

「お前、どういう――」


「副長のブザムがタラークのスパイだった。ならば――

メジェール側にもスパイが居るのだと、考えんのか」


 カイの専属エンジニア、彼女の名前はアイ・ファイサリア・メジェール。

少女の出身は、少女の口から語られている。


彼女本人が、そう言っているだけである。

















<to be continued>







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