ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」
Chapter 24 "Men and Women"
Action81 −小美−
カイの養父であるマーカスの酒場で一晩お世話になった二人、ドゥエロとバートは礼を述べて酒場を後にする。
カイより生まれた縁は思いの外有益な時間と、何よりの機会を二人に与えてくれた。
マーカスが味方になってくれたことで、第二世代の人間達を説得してくれるとの確約を頂けたのだ。
残るは第一世代と、第三世代となるが――
「これからどうするの、僕達」
「我々は独自に行動して第三世代、士官学校の同期達。そしてカイの父上である方と、第二世代への糸口を掴む事が出来た。
後は第一世代となるが、説得は容易ではない」
「マーカスさんの話だと、グラン・パを始めとした八聖翁は間違いなく地球の手先になっちゃってるもんね……」
タラークは軍事国家として成り立っているが、帝国主義に基いた身分制度が存在している。
タラークの全国民は身分証明用のID携帯が義務付けされており、一等民は短剣を模した構造、三等民はカード構造といった具合で区別する。
こうした社会体制が、地球からの教育を徹底する土台となっている。この構造を作り出したのが第一世代「八聖翁」である。
タラーク国家誕生の秘話から地球と関係しているようでは、説得するのは不可能に近い。
「そもそも八聖翁に接触するのも困難だ。軍部を通して打診しても到底許可は下りないだろう」
「僕達ってほら、名目上は恐るべき女海賊を捕まえた英雄になってるじゃん。その功績を持って何とかならないかな」
「殊勲式を打診するのは出来なくはないだろうが……出てくるのは軍部の最高責任者、首相クラスだろうな」
「首相か……あの人って熱血って感じで僕苦手なんだよね」
「ある意味タラーク軍人らしい気質はある」
何をかくそう、約一年前に行われた新造軍艦イカヅチの出陣式と、その後襲撃してきたマグノ海賊団との抗戦を指揮した張本人である。
結果としてイカヅチを放棄、当時乗船していたカイ達ごと吹き飛ばそうとした。被害を拡大するのを防ぎ、マグノ海賊団もろとも滅ぼそうとした強行策である。
カイ達はワームホールが発生して難を逃れたが、首相達からすればそのまま吹き飛んだように見えて、事無きを得た形となってしまった。
だからこそ今でも首相を続けられているが、マグノ海賊団は結局生きていたことになるので、状況が落ち着けば評価は改められるだろう。
「じゃあやっぱりツテを頼るしかないか」
「ああ、八聖翁の他にタラークに辿り着いた移民船団当時の方々を頼ろう」
マーカスの話では地球のやり方に賛同する者達が集った世代、それが第一世代「八聖翁」の正体と言う。
今も眠りについている移民船団の者達は、植民船で地球を出て他の惑星へ向かったことからも地球側とは言い切れないと判断している。
タラークをひっくり返し、八聖翁を相手に戦うのであれば――彼らを味方にしなければならない。
「話はわかるけど、その人達って何処で眠っているのさ」
「八聖翁の一人が守っていると聞いている。普通に考えれば国家の最重要施設、それこそ軍事施設になるだろう。
ただし軍事機密であればいざ知らず、移民船団の方々となれば他の人の目が届かない場所でなければならない。
軍事施設はセキュリティこそ高いが、それでも管理するのは軍部側の人間だ。八聖翁からすれば知られたくはないだろう。
となると国内には存在しな可能性が高いな」
「国外、タラークの外……えっ、まさか"未開拓地域"に隠しているの!?」
メジェールは船団国家だが、タラークは一応惑星に国家の基盤を築いている。
ではテラフォーミングに成功しているのかといえばそうとはいえず、あくまで人の住める環境を軍事の観点で整えているだけである。
国から外へ出れば荒野が広がっており、荒れ果てた大地が広がるばかり。好き好んで国を出る人間はいない。
そういった場所は全て、未開拓地域とされている。
「どうやって国外へ出るのさ。国境線に見張りが居るよ」
「何らかの名目が必要だな……今タラークはメジェールとの共同戦線をはっており、マグノ海賊団を捕らえたばかりだ。
国の注目は外に集まっていて、国内も落ち着かない状況となっている。この喧騒を利用して、それらしい理由をでっち上げて出るしかない」
「いやいや、怪しいでしょう!? 外へ出れたとしても、すぐ目をつけられるよ!」
「ああ、だから一発勝負だ。移民船団の方々を守る八聖翁と接触し、味方につける。それが出来なければ終わりだ」
無茶苦茶だった。ハッキリ言って後先を考えていない。
ドゥエロ・マクファイルという人間はこういった一か八かを嫌う人間だった。
人生を賭けてまで戦おうとはしない、賢い人間であるはずだった。
「……ドゥエロ君、カイの悪影響を受けたんじゃないか」
「ふっ、何を他人事のようにいっている。私は君の影響だって受けている」
慎重に動いていたが、ここから先勝機を掴むには行動に出なければならない。
ドゥエロは今この瞬間だと決めたのだ。
自分の人生を賭けるには、この機会なのだと。
<to be continued>
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