ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」
Chapter 24 "Men and Women"
Action79 −宇曽−
母艦に保管されていた小型機とソラのバックアップにより、カイはニル・ヴァーナへコッソリ戻ることが出来た。
メイアはマグノ海賊団のアジトへ戻り、ミスティは母艦に残って地球に関する情報収集をユメと一緒に行っている。
ニル・ヴァーナはマグノ海賊団の無条件降伏により本来の乗員はおらず、静まり返っている。監視の目はあるが、徹底はされていない。
館内を静かに歩きながら、カイとソラは連れ立っている。
『今からいかが致しますか、マスター』
「パルフェとエンジニアのアイに艦内の確認をした後、仲間達の今の状況を知っておきたい」
今回カイは切り札として船内に残ったので、自ら主導して動くつもりはなかった。
切り札は温存してこそいざという時に発揮されるのであって、切り札から動いていては意味がない。
今は場に伏せられているのだから、開示する危険性は侵さない。
仲間達がそれぞれ表舞台で活動しているのであれば、支援や援護に回るのがいいだろう。
『おかえりー、こっちはニル・ヴァーナのシステム関連はほぼ掌握。
今は偽装しているけど、セキュリティ類は解除しているから、すぐに再稼働できるよ』
「さすが仕事が早いな」
『お褒めに預かりと言いたいところだけれど、肝心の自分の部署が厄介だね』
「なにか問題が起きているのか」
『機関室にはペークシス・プラグマがあるでしょう。流石にそっちは警戒されていて、がっちりガードがかかってる。
オリジナルの結晶体からおいそれと触れないし、カイ達が隠れていても大丈夫だけど――
再稼働させるには思い切った行動に出ないと駄目だね』
パルフェの話は厄介ではあるが、至極当然でもあった。
ペークシス・プラグマは無尽蔵のエネルギー体であり、そのオリジナルとなれば破格の価値がある。
タラークとメジェールに取り上げられていないのは、オリジナルだからこそ迂闊に動かせないためである。
少し邪推するのであれば、地球にとっても貴重な資源であるからこそ、両国のトップが手出しできないのかもしれない。
「つまりニル・ヴァーナを動かすのは、バアさん達が戻ってからしか無理か」
『厳密に言うと船そのものを軍事活動するのであればそうだけど、システム関連は使用できるよ。
ソラちゃんにお願いしたら、ニル・ヴァーナのシステムを利用してタラークやメジェールのシステムにも干渉できる』
つまりニル・ヴァーナを戦艦として活動は出来ないが、船そのものの機能は有効活用できるということだ。
そもそも戦艦として再稼働させたら両国にだってバレるし、両軍が攻撃してくるだろう。
カイとしても今思い切った行動に出るつもりはないし、機能が使えるだけでも前進だった。
カイ達の敵はあくまで地球であって、タラークやメジェールではない。
『後は武装も一応使えるかな、バレそうだからあまりおすすめしないけど』
「ニル・ヴァーナの武装というと、バートが使っているホーミングレーザーとかか」
『後はバリア系統かな。うちの運転手くんが今いないから、ソラちゃんの補助があっても完全な制御はキツイけどね』
パルフェが通信画面越しに苦笑いしている。
バートのこの船における貢献度は一年前とは比べ物にならないほど高まっている。
この船はバートがいなければ成り立たないほどになっており、地球側も操舵手が不在では自由に動かせない。
キーパーソンになっているが、バーと本人は恐らくわかっていないだろう。だからパルフェは苦笑している。
『とりあえずこんなところかな。アタシは安全と作業のため、機関室に籠もってるね』
「そうしてくれると助かる、じゃあな」
カイは話し合いを終えて思案する。この船をとりまく状況は改善されつつある。
このままタラークやメジェールに見つからなければ、仲間達が再度合流すれば一気に動けるようになるだろう。
カイ本人は切り札とはいえ、あまり貢献できていない点が少し不満だった。勿論仲間達が第一なのは分かっている。
だからこそ何をするべきか、思案している。
「タラークやメジェールのシステムに干渉できるのなら、あいつらの行動を追えそうだな。
今の状況がどうなっているか、確認してもらってもいいか」
『イエス、マスター。お任せ下さい』
ドゥエロ達はタラークで、マグノ海賊団はメジェールでそれぞれ活動している。
無条件降伏してしまったので立場は雲泥の差だが、志は同じである。
とはいえ世の中、思い通りには進まないものだ。
いざとなれば、何か手助けできるかもしれない。
<to be continued>
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