ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」
Chapter 24 "Men and Women"
Action77 −部雨−
メジェールの隔離施設で行われる刑務作業は、幾つか種類がある。
まずは生産作業。物品を製作する作業であり、隔離施設においては労務を提供する為の作業である。
メジェールという国から隔離されている地で需要と供給のバランスは取れていないが――
隔離されているという状況下でのみ、成り立っている。
「原材料の追加? そんなもの、いちいち採用するわけがないだろう。
どうせマグノ海賊団からの希望だろうが、奴らは重犯罪者だ。当然却下だ」
「いえ、それが……刑務官達からの要望です」
「なんだと、どういうことだ!?」
「マグノ海賊団の連中が極めて質の高い物品を生産し、需要が増えているのです。
矯正刑務作業などというのは基本的に受刑者は受け身であり、質の低下が著しいものです。
ただマグノ海賊団の場合非常に意欲的に活動しており、その幅も広く――結果として生産性が高くなっています」
「くっ、あいつらめ……」
施設内における刑務作業で生産される物品は、基本的に質が低い。
外部へ搬出されるものではないので、生産された品は施設内で利用される。質が悪ければ、当然好まれない。
これは悪循環となるのだが、刑務官も受刑者達も犯罪を取り締まる側と行う側なので、こういった事には意識しないのだ。
マグノ海賊団がこの点に切り込んで、生産力を上げている。品の質が良くなければ、材料の質を求められるのは当たり前だった。
「それと職業訓練ですが」
「待て、職業訓練だと? 当の昔に希望者は潰えたはずだ」
メジェールの隔離施設で行われる刑務作業に、職業訓練がある。
犯罪者を構成する手段の一つとして一応存在するのだが、受刑者が率先して行うことはない。
隔離施設に送られるのは重犯罪者であり、隔離されれば元の世界へかえることはほぼ不可能と言っていいだろう。
だったらわざわざ職業訓練してまで、仕事を増やしたくはない。
「マグノ海賊団が積極的に参加していて、訓練官が張り切っています。
マニュアルが古いとのことで、こちらも更新許可を求められています」
「奴らはそもそも何故今になって職業訓練なんてものまでやり始めたんだ」
「彼女たちは元々若い世代が非常に多く、職業訓練を受けられるのであればむしろありがたい様子で」
「……マグノ海賊団の出身に、難民者が多いとは聞いているが」
不可解な動きばかりしている連中だが、この動機ばかりは刑務官達も納得できるものだった。
国から追い出される前も彼らが生活に困っているものが多く、社会に出るのも苦労する者達だった。
メジェールも教育制度や施設はあるが、女尊男卑の思想が優先される為、職業に関する訓練は率先して受けられない。
皮肉にも重犯罪者となった今となって、ようやく職業訓練を受けられる機会が来たのである。
「ま、待て、いちいち奴らに同情的になるな」
「では、棄却されるのですか?
強権を発動させることは確かに出来ますが、正直そこまでして反対する理由が浮かびません」
「ちなみに刑務官達の意思としてはどうだ」
「刑務官達も仕事とは言え、隔離の地に身を置いていて閉鎖的になっています。
外に関する知識を求める声は、彼女たちの間にもありますね」
「まあそうだろうな……職業訓練なんて教室が閉ざされたままであれば、風化していたものを」
ここまでで見えてきたものがある。
マグノ海賊団は敵対する意思はなく、刑を受け入れている。隔離施設を同行するつもりはなく、むしろ改善している。
政治犯を正しく諌め、刑務官側にも寄り添った上で意見を述べている。
これが意味するところが、刑務長には見えてきた。
「マグノ・ビバンを呼び出せ。私が直接話をつける」
「な、何をなさるつもりなのですか!?」
「奴らの目的は反逆ではなく、改革だ。国を改善し、人を改める事を目的としている。
危険ではないが、放置できない。国が奴らを持て余す理由もよく分かる。
連れてこい」
「ラジャー!」
――刑務長は有能な人物であり、国家に忠誠を誓っている。
国に対して誠実であるからこそ、こうした施設の長を務められる。
だからこそ国が変わりゆくのを見過ごせない。
<to be continued>
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