ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」
Chapter 24 "Men and Women"
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結局マグノ海賊団への徹底的な面談を行ったが、不審な点は何一つ見つけられなかった。
刑務作業を否定する根拠は何もなく、彼女達の労役は結局認められてしまう。
海賊と聞くと荒くれ者達のイメージがあるが、不遇の時代を生き抜いた彼女達の能力は荒事以外にも高い。
面談した結果本人の希望こそ監獄側が拒否したのだが――能力面が際立っており、結局彼女達に適した労役が課せられた。
「余計な真似はせず、淡々と労役に従事する事だ。不審な点を一つでも見つければ、監房行きとする」
『ラジャー!』
「ず、ずいぶんと気合が入っているな……まあいい、作業に入れ」
そして何より誤解しているのが、海賊達は不真面目であるという偏見である。
確かに海賊達は国家の資材や物資を奪って、生計を立てている。その点だけ見れば、他人の物を奪って生きている怠け者に見える。
だが略奪という行為はマグノ海賊団にとって、必要であるから行っているに過ぎない。嫌々ではないのは事実ではあるのだが――
必要に迫られて、彼女達は奪う道を選んだのだ。
「刑務官さん、洗濯物溜め過ぎです」
「清掃する道具が酷すぎるので、修理しますね」
「包丁などの調理道具を使うな? キッチンを舐めているんですか」
「監房システム、不具合多すぎ。こんなのちょっと弄れば脱獄出来ますよ」
お頭のマグノと副長のブザムは、基本的に優しくて厳しい。
誰であろうと平等に扱い、平等に叱りつける。仕事に手抜きは許さないし、成否を正しく評価する。
よって、マグノ海賊団クルー達は皆職務には忠実だった。仕事ぶりは見事であるし、完璧に行う。
そもそも手を抜いたら、生きていけない家業である。上下関係は恐ろしく厳しいのだ。
「ちょっとあんた達、真面目にやりなさい。刑務官さんに迷惑かけるわよ」
「この場の刑務官殿は、アタシ達にとって神同然よ。命令は真面目に聞きなさい」
「刑務官の言うことにいちいち文句言わないの。手伝ってあげるから謝っておきなさい」
そしてクルー達の目は自分にも他人にも非常に厳しい。
上下関係を正しく維持する環境であったからこそ、規律はきちんと守る。
海賊が規律を口にすると笑われるかもしれないが、無法だからこそルールというものが存在する。
社会の枠組みからはみ出そうと、ルールを守らなければ人間として生きていけない。
「仕事、終わりました。見分お願いします」
「労務時間、終了です。ご指示お願いします」
「資料作成いたしました。レビューお願い致します」
クルー達がどの部署に飛ばされようと、彼女達は不平不満一つ口にしない。
流刑地の労働環境なぞ劣悪の一言で、好き好んで刑務に励む者などいなかった。
だというのにマグノ海賊団のクルー達はどれほど過酷な労働を強いても、黙々とやり遂げてしまう。
仕事ぶりは完璧であり、何一つ不審な点などはなかった。
「監督官。海賊達の仕事内容に不備の一つも見いだせません」
「今までの誰よりも生真面目で、キツイ仕事を押し付けても見事にこなしています」
「むしろ他の労役者達の態度が目をついてしまい、徹底した監視を行うのが逆効果になってしまっています」
「くっ……どういう事だ。流刑地での仕事に何故そこまで完ぺきにこなす」
流刑地での刑務作業を喜んでやる人間なんていない。
他の刑務所であれば減刑を狙う目的もあるのだろうが、ここは終身刑や死刑囚が集まる牢獄である。
生きてシャバに戻ることなんて出来ず、当然刑務にも力なんて入らない。
真面目にやっても評価されないというのに……マグノ海賊団は大真面目に仕事していた。
「監視がむしろ仇になるとは、厄介な連中だな……
奴らに真面目にやられてしまうと、他の労務者達の手抜きぶりは浮き彫りとなってしまう」
全く意味がわからず、監督官は頭を抱えてしまった。
こんな流刑地で真面目に仕事できるのであれば、何故海賊なんてしているのだろうか。
故郷を追い出されたから仕方がなかったとはいえ――もう少し他の生き方が出来たのではないか。
刑務官達はそう思い、『同情してしまった』
<to be continued>
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