ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」
Chapter 24 "Men and Women"
Action57 −虎居−
『ここからの行動だが――ミスティの話を聞いて、私から提案がある。二手に別れよう』
『チーム編成はどうするんだ』
『私とソラが母艦内の兵器システムを探索、カイとミスティ、そしてユメが地球の手がかりを探せ』
メイアからの提案により、母艦の探索は二手に分かれた。
マグノ海賊団が無条件降伏をして、マグノ達は流刑地による幽閉。ドゥエロ達はタラークへ戻って英雄として扱われている。
両極端な扱いとなっているが、過去の行いを顧みれば無理もないかもしれない。マグノ達は海賊であり、ドゥエロ達は軍人なのだから。
そしてどちらでもないカイ達は潜伏し、過去の激闘で鹵獲した母艦の探索に取り掛かっている。
『ますたぁー、ユメが案内してあげるね!』
「……何で案内できるんだ、お前」
「もう正体を隠そうともしていないわね……」
メイア達と別れたカイ一行は、母艦の探索に取り掛かっている。
目的は地球に関する手掛かりであり、刈り取りに関する情報。主にミスティの目的に従って行動している。
カイ本人は無目的というより、仲間達を支援することで自分の目的を果たせると信じている。
刈り取りを打破して、地球の企みを阻止する。それが平和に繋がることとなり、男女の友好に繋がると信じていた。
「――ちょっとカイ」
「何だよ、コソコソと」
「ユメの事、そろそろちゃんとしてあげた方がいいわ」
「……」
カイの役に立てるとルンルン気分で先行するユメを前にして、ミスティが耳打ちする。
ミスティが言わんとしている事は、カイにもよく分かる。分かりきっていた話である。
ユメという少女は、一体何者なのか――?
「あの子が悪い子じゃないことは分かってる。
どう見たってあんたに懐いているし、カルーアの事を自分の妹のように大事にしている。
アタシ達の事は邪険に扱ってるけど、以前のように牙をむき出しにもしないしね」
「人間自体嫌いだったからな、あいつ」
「この旅を経てみんな成長しているもの、あの子だって変わったんでしょう。
その事は喜ばしいし、これから一緒に戦う上で不満もない。
けど――副長さんの事があったでしょう」
ブザム・A・カレッサは、タラークが派遣したスパイだった。
あの人のことを敵だと思っている人間は居ない。素性を疑っていても、敵視はしていない。
スパイであることが明らかになった理由も、マグノ達を守るためだった。
しかし経緯はどうあれ――ブザムという人間がスパイであった過去は消せない。
「あの人はスパイとして拘束されて、本人も言い訳しなかった。
そしてお頭さん達に何一つ言い訳せず、タラークへと戻っていった」
「……」
「繰り返して言うけど、みんなあの人を敵だと思っていない。
けれど今まで通り味方として、何より副長として見れるか不安な人は多いと思う。
明白に溝が出来てしまったのよ、今回の件で」
未来はいくらでも変えられるが、過去を変えることは出来ない。
今が良ければそれでいいと考えられるほど、マグノ海賊団は単純な生き方をしていない。
故郷を追放された悲痛な過去があるからこそ、彼女達は非常に用心深く生きている。
敵国のスパイというのは本来、決して許されない存在なのだ。
「地球との決戦でユメがアタシ達の味方になれば、地球側だってリアクションを起こす。
相手は刈り取り兵器だから知恵なんてないかもしれないけど、地球側が正体をバラすかもしれない。
やむを得ず打ち明けるという状況になるより、今のうちに仲間内で明らかにした方がいいわ」
「……なるほど、お前の言いたいことはわかった」
ミスティはようするに、ブザムの件で起きた悲劇を再燃するなと言いたいのだ。
ブザムの件はスパイ発覚後にタラークとメジェール両軍が襲撃し、マグノ海賊団が無条件降伏してしまった事で有耶無耶になってしまった。
もし両軍が来なければ、マグノ海賊団内の雰囲気は最悪となっていただろう。
そんな最中で決戦となっていたら、目も当てられない。
「幸いというのも変だけど、今この場にいるのはアタシとあんただけ。
アタシらは海賊でも何でもないし、故郷なんてものもないんだから、ユメだって話しやすいでしょう。
あの子から打ち明けられた事にして、アタシ達を通してお頭さん達に話しましょう」
「了解。お前って意外と、色々考えているんだな」
「意外は超余計」
マグノ海賊団は無条件降伏し、メイア達とも別れた今が絶好の機会。
今こそユメという少女と向き合う時が来た。
<to be continued>
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