ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」
Chapter 24 "Men and Women"
Action68 −距?−
政治犯とは基本的に国の政治的秩序を侵害する罪を指すが、メジェールにおいては政治的動機によって犯される罪を含んでいる。
特に顕著なのが、政治的思想の対立。すなわち国家タラーク、そして国家に所属する男達。こちらへの政治的干渉は罪が重い。
メジェールの政治的思想における根幹に、異性への対立がある。対するタラークも同様の思想を持っているが、同胞であっても政治的思想が対立すれば容赦はしない。
では何故政治犯と呼ばれる者達は、政治的思想を対立させるのか。
「メジェールという国家は今疲弊している。テレフォーミング政策は明らかに停滞しており、船団としての国家運営はこのままでは立ち行かなくなる。
こんな状況で男達を相手に戦う余力などないのだ。だというのにメジェールは今も変わらず論争と戦争を繰り返さんとしている。
私はあくまで国家を憂い、立ち上がったのです」
「なるほど、仰ることはご尤もですね」
メジェールを思っての政治的対立、これは政治犯だけではなく庶民にも潜んでいる。
少しでも頭が回れば、誰だって考える。そもそもメジェールは惑星を持っておらず、船団として国家が形成されている。
故郷とする星はテラフォーミングがうまくいっておらず、環境改善が行えていない状態にある。
となればまず第一に資源が足りなくなる。全てが有限である以上、生産が追いつかなければ不足してしまう。
勿論すぐにではないにしろ、今のメジェールは徐々に疲弊している。国家も静観はしていないが、改善は行えていない。
ならば内政に集中するべきという考え方は至極最もで、他所の国と戦争している余裕はないという意見は当たり前だった。
だがメジェール国家はその思想を許さない。
「私は元教師ですが、子供達への教育としてまず男性への敵対心を徹底されます。こんな教育は間違えている。
子供達に教えるべきなのは平和であり、戦争への加担ではないはずです。
私は国の未来、子供達の夢を応援したいのに、こうして国家に迫害されました」
「なるほど、仰ることはご尤もですね」
次に多いのが、平和的思想である。
戦争なんて間違えている、国は平和であるべきだ。理想論だが、常に時代を蔓延する考え方である。
この思想は一長一短ある。平和なのは結構だが、平和を維持する余力がなければ難しいのも事実だ。
だが、だからといって男達への戦争を焚きつけるのも極論だろう。
「流民政策を一体政府はいつまで繰り返すのか。私はこうして幽閉されたが、断固として声を上げる。
特権階級のみ蔓延る今の世の中は腐っている。国を支えるのは民であるというのに、その民を切り捨てるとは言語道断。
今の政府は古き地球の思想に染まり、過ちを犯し続けている。正さなければならない」
「なるほど、仰ることはご尤もですね」
あと意外に多いのが、『地球による洗脳論』である。
これについてはいわゆる都市伝説に近く、それでいて今日に至るまで決して消えない考え方であった。
メジェールは都市規模の区域を閉鎖し、国民を強制的に追放した過去がある。
これについては当時より批判が多かったが、同時に皆の頭の中で連想をさせた。
――地球から出立した植民船も同じだったのではないかと。
新しい世界を目指して旅立つといえば聞こえはいいが、そもそもの話何の保証もない船出である。
何故そんな行動に出たのか、連想したのがメジェールによる流民政策である。
地球の悪しき思想がメジェールを洗脳しているのではないか――そうした疑惑が、政治犯を誕生させてしまった。
『それとかねてより懸念されていた政治犯への接触ですが』
『やはり目をつけてきたか。それで?
奴らは海賊としての価値観や意思を強制しようとしたか!』
『いえ、更生させています』
『は……?』
『政治犯の過激な思想に対して、マグノ海賊団達は彼らを更生させて考え方を改めさせています」
「はぁ!?」
――こうした政治犯達に対し、マグノ海賊団が干渉を行っているということだ。
<to be continued>
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