ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」
Chapter 24 "Men and Women"
Action75 −部路−
「――それで?」
「徹底的に見張りましたが、怪しい行動一つ取っておりません。
それどころか刑務作業も非常に意欲的で、各部署からも能率が上がっていると報告を受けています」
看守長室にて、隔離施設におけるマグノ海賊団の報告を受けていた。
看守長は首席矯正処遇官であり、この隔離施設においては支所長の地位が与えられている。
船団国家メジェールにおける法律の規定により、矯正監を除けば最高位となる。
矯正監はメジェールの第一世代に類する立場となるので、メジェール国家では看守長の権限は大きい。
「資材や物資などの管理はどうなっている」
「立ち入ろうとする素振りすら見せません。敢えて隙を見せたこともあるのですが、目にも止まっていませんでした。
むしろシステム面の不備を指摘するほどでして、強化されています」
「まさかとは思うが、システムに触らせていないだろうな」
「干渉はさせていません。と申しますか、我々が目を尖らせていることを考慮してむしろ彼女たちが一線を引いています」
結局、マグノ海賊団に刑務作業が許可された。
幽閉していれば何の問題もないのだが、さりとて静かに閉じ込めたままでも不気味だった。
このまま追い詰めて良からぬ考えを起こさせるよりも、常に目の届く範囲で行動させるほうが得策と考えたのだ。
少しでも怪しい行動を起こせば、処分する理由にもなる。
「それとかねてより懸念されていた政治犯への接触ですが」
「やはり目をつけてきたか。それで?
奴らは海賊としての価値観や意思を強制しようとしたか!」
「いえ、更生させています」
「は……?」
「政治犯の過激な思想に対して、マグノ海賊団達は彼らを更生させて考え方を改めさせています」
「はぁ!?」
困り果てた様子での副看守長の報告に、看守長は頭を抱えた。
明らかに逆張りしているというか、こちらに迎合する動きを見せている。
そんな事で絆されるとでも思っているのだろうか。囚人と馴れ合いするような刑務官達ではない。
しかしながらこういった動きをされるのも、困る。
「一体何が狙いなのだ、あいつらは!」
「模範囚になろうとしているのでは?」
「刑期が終わることのない囚人だぞ、何の意味がある」
「だからこそ、とも考えられます」
「というと?」
「刑期が終わることがないのであれば、一生ここから出られません。
反抗的な真似をして自分達を追い詰めるよりも、この場所で生涯を終えるべく整えているのではないかと」
「馬鹿な……あの連中は海賊だぞ。安々と牙を抜かれたりしないはずだ」
報告を受けて、看守長は難しい顔を崩さなかった。
副看守長の意見は確かにもっともではあるが、看守長はメジェール政府より強い警告を受けている。
マグノ海賊団が移送されるにあたって、くれぐれも注意するように厳命されているのだ。
絶対に何か企んでいるはずなのだが――
「まだ捕縛されていない仲間がいるかもしれん。そいつらが襲撃を仕掛けてくる可能性もある」
「つまり仲間達が助けに来るまで大人しく収監され、我々に従う態度を見せていると」
「今考えられる、一番可能性の高い予測だ。外部からの襲撃にあたって警戒をしろ」
「承知いたしました。準警戒体制を取り、班編成をいたします」
「頼むぞ。私は政府に掛け合って増援を要請しておく」
刑務官達は優秀であった。あらゆる可能性を考慮して警戒を続けている。
実際はマグノ海賊団は何の犯行も行っていないので、ほぼ徒労には終わっている。
ただ怪しい真似をしないということが怪しく見えているので、ある種悪循環と言えた。
刑務作業に意欲的な者達に対する過剰な警戒は――
確実に、刑務官達を疲弊させていた。
<to be continued>
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