ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」
Chapter 24 "Men and Women"
Action74 −手結−
情報共有や意見交換を行った後は、自然とカイに関する話題となった。
難しい話ばかり続けていても頭を悩ませるだけなので、一休みがてらにその話となったのだ。
カイの父親であるマーカスは一度席を立って、酒の入ったグラスと水の入ったコップを用意する。
酒のつまみはペレット、タラークでは主食となっている栄養補給食品だった。
「飾り気のねえつまみではあるが、これでもお前らを歓迎しているつもりだ。まあゆっくりしていってくれ」
「いえ、お心遣いは伝わっています。それに故郷へ戻ったばかりの我々としては懐かしいものです」
ペレットはバートの家が起業するガルサス食品の主販品で、バートも旅の初めは好んで食べていた。
カイは当初から女性のいるカフェに行って食事を取ったりしていたが、その分女性からは最初煙たがれていたので良い行動では言えなかったかもしれない。
海賊たちと仲良くなるにつれてバート達もメジェールの食事を進んで取るようになって、ペレットを口にしなくなっていた。
だからこそタラーク原産品のペレットは味気なくとも、懐かしく感じられるのだ。
「お前らがいなければあいつは野垂れ死んでいただろう。面倒見てくれてありがとうよ」
「お互い様です。彼が命がけで戦ってくれなければ、我々は生き残れなかった」
「一年間、一緒に住んでたからね僕達。洗濯とか掃除とかもいつの間にか三人でやるようになってたな」
マーカスより礼を言われて気を良くしたのか、ドゥエロ達も当時の生活について話す。
同名こそ結んでいたが、当初カイ達はマグノ海賊団の捕虜として監房に収容されていた。
閉じ込められてはいなかったが南京に近い状況で、自由な行動はあまり許されていなかった。
だがいつの間にか、監房はただの同居部屋のようになっていた。
「ドゥエロ君は船にあった本を持ち込んでたし、カイも女性から貰った生活用品とか持ち込んでたよね。
二人して好き勝手に生活していて、なんだか僕もすっかり慣れちゃってたよ」
「意外というのは失礼かもしれないが、君は行儀良い生活を送っていたな。親や祖父の教育がよかったのだろう。
今にして思えば生活による面倒をかけてしまったのは、申し訳なく思う」
「ははは、男三人の生活となれば雑多にもなるだろうよ」
いつの間にか心の壁が無くなり、男三人の気ままな生活となった。
ディータを含めた女の子たちも足を運ぶようになり、やがて垣根もなくなっていった。
旅の途中水道管の事故で監房は使えなくなった時は、むしろ残念に思ったとドゥエロ達は語る。
「それじゃあ女との共同生活みたいなのになっちまったのか。実際のところどうよ?」
「タラークの女性蔑視は間違えていますが、性別や環境による違いはありましたね」
「女は鬼とか言われてるけど、実際は男よりデリケートだったもんね」
水道管の事故で監房が使えなくなった際、海賊団お頭のマグノは正式にドゥエロたちを仲間として迎え入れた。
それ以前からも共に戦う同志となっていたのだが、生活環境の大幅な見直しもされたのだ。
これによりドゥエロ達の待遇も海賊達と同じになり、生活環境も整って十分な旅暮らしができた。
そこで同居人の話もなった。
「はあ? 女のガキをあいつが引き取ってる!?」
「はい、旅の途中ミッションと呼ばれる地球の中継基地がありまして、補給目的で立ち寄りました。
その基地には住民がいまして、孤児だった少女もおりました。
気の強い少女ですが孤独を強いられており、カイが面倒を見ることになったのです」
「あのバカがガキを連れてるのか……マセたガキっぽいが、関係性はどうなんだ」
「年の差はあるけど子どもというより、妹みたいな感じかな。生意気というか、すごくしっかりした子なので」
ミッションの少女、ツバサを紹介する。
身寄りのない少女を引き取ったと聞けばカイの養子を連想するが、実際は兄妹に近いかもしれない。
今もカイを頼って震えているのではなく、シャーリー達と船に乗って行動している。
孤独に生きてきただけに、逞しく育っている。
「……タラークに住んでいた頃は自分のことばっかりだったくせに、いつの間にか他人の面倒を見れるようになったのか」
「懸命に変わろうと努力しています。彼も、そして我々も」
「ガキが舐めたこと言ってんじゃねえ、と言いたいが、今の状況はむしろ大人がだらしないんだろうな。
よし、俺もいっちょ行動するか」
「と、いいますと?」
「お前らに協力すると言ってるんだ。この酒場は俺が趣味で経営しているんだが、流行ってこそねえがこれでも客はいる。
第2世代の連中もよく来てくれるからコネもツテもある。
お前らは第一、第三世代の連中を相手にしていくんだろう。第2世代は俺に任せとけ」
ドゥエロやバートは顔を見合わせて破顔し、グラスを合わせて乾杯する。
それぞれの世代に向けての行動、すぐには変われずとも声を掛け合えば違ってくる。
大した酒宴にはならなかったが、それでも楽しめた。
<to be continued>
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