ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」
Chapter 24 "Men and Women"
Action68 −夜狼−
――ユメから地球に関する事情を聞き終えたカイとミスティは、一旦メイアやソラと合流することにした。
タラークとメジェールに主戦力を向けてくる敵は、地球人が主導している。
これまで多くの刈り取り兵器と戦ってきたカイ達だが、相手は強大であろうとも無人兵器。人間ではなかった。
しかし、次に戦わなければならない相手は地球人である。
「なるほど、地球人が刈り取り兵器を先導して攻めてきているのか……よく聞き出せたな、カイ」
「全部簡単に喋ってくれたぞ」
『ふふん、ますたぁー相手に隠し事なんてしないよ』
『マスター、念の為申し上げておきますが、私も問われていたら答えていました』
合流したメイア達に、カイが聞き出せた内容の詳細を説明。
メイアは半ば呆れた様子で返答している傍らで、得意げな顔をしているユメを尻目にソラが珍しく自己主張している。
ソラの言葉を聞いて、ミスティもその時初めて気づく。
ソラとユメが同じ精霊同士であるのならば、お互いに事情を知っていて不思議ではない。
「カイ、一応言っておくが手加減は出来ないぞ。倒すつもりでやらなければ、甚大な被害が出る」
「それは……分かってはいるつもりだ」
メイアはあえて倒すという表現を用いたが、意味合いはあくまで殺人である。
メイアの厳しい問いかけに、カイは若干口ごもりながらも答える。
謎の商人であるラバットやミッションに住んでいたリズ達、荒くれ者相手に戦った経験もあるが、死人は出ていない。
明確に言うと病がはびこっていた惑星では死人も出たが、あくまで病死である。
「ヴァンドレッドシリーズは全員が登場して力を発揮する。
お前一人に責任を押し付けるような真似は皆しない。
いざとなれば私が引き金を引けばいい。変に気負う必要はないが、覚悟は必要となる」
「それこそお前に責任を追わせるつもりはない。
俺も乗り込んで戦っているんだ、誰かのせいとかではないはずだ」
地球人は同胞とも言える自分たちの臓器を奪おうとしている。
未遂ではない、実際に滅ぼされた惑星だって存在する。
既に被害が出ている現状、ここで確実に食い止めないとタラークとメジェールは滅び――
被害はさらに拡大していくだろう。
「代わりと言っては何だが、一度話をさせてくれないか」
「ちょっとあんた……話が通じる相手だと思っているの?」
「思っていない。だが刈り取り兵器ではない以上、話し合いは出来るはずだ。
あくまで向こうが応じればでいいんだ、問答無用であれば容赦はしない」
「ふむ……」
カイの妥協案にミスティが神経をとがらせるが、メイアは一考する。
人を殺すのが嫌だからではなく――いや、嫌ではあるのだろうが、自分の感情1つでカイは話し合いを求めているのではない。
恐らくカイはマグノ海賊団との対立、過去敵だった相手はこうして仲間となれた事を経験としているのだろう。
穏便にはすまなくても、話し合う余地があればと考えている。
「……分かった。
その時になってみなければ何とも言えないが、もし話し合える状況となれば私がリーダーとして口添えしよう。
仲間達も説得はする。だが危険と判断すれば、戦闘は再開するぞ」
「ありがとう、助かる」
――カイは自分の記憶を全て思い出せている。
思い出してみればさほど大した記憶でもなかった。
地球で重要な研究をしていた博士のクローン、失われた技術を取り戻すべく生み出されたが本人と同じにはなれず廃棄。
殖民船に積み込まれて廃棄された存在、何者でもない。
故郷への思いはないが、同じ地球人という存在と対話をしたかった。
多分向こうはなんの感情もないのだろうが、刈り取りを先導しているのであれば立場ある人間だろう。
どうしても聞きたかった――自分という存在は何だったのか。
「ま、話し合う余地があるのなら、あたしも文句言ってやりたいわね。
スーパーヴァンドレッドはあたしも乗船する必要ありし、ついでに色々言ってやるわ」
「考えてみれば俺よりお前のほうがよほど地球には言ってやりたいんだよな……」
なんだか暗い雰囲気になりかけていたところを、ミスティの元気ある一言が払拭する。
ミスティは冥王星出身、既に地球に滅ぼされた惑星の生き残りである。
自分よりも明確な被害者であることに、カイは苦笑した。
<to be continued>
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