ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」
Chapter 24 "Men and Women"
Action69 −議定−
地球人の生死は戦場に委ねるとして――
地球人が主戦力を率いてタラークとメジェールを攻めるのはある意味朗報だと、メイアは言う。
「無人兵器との戦いばかりでは埒が明かないからな。
災害を相手にし続けるよりも、責任が発生する戦争の方が白黒がつく」
「戦争の是非はともかくとして、決着をつけるのには地球人の存在が必要ということか」
「そういった意味では、地球人を捕縛するのは悪くはない。戦争犯罪人として立件すればその後の処理はやりやすいからな」
メイアの意見はあくまでカイへの温情であって、地球人に対する情けでは決してない。
先程彼らが話していた通り戦争が勃発すれば生死を分ける死闘となるだろうし、情けをかける余地はなくなるはずだ。
地球の母艦は一隻でも死力を尽くさなければならないのに、数隻攻めてくるのである。
手加減できる相手ではなかった。
「それで戦いの趨勢を分けるであろうオリジナルペークシスの存在が、このユメだということか」
「ソラの存在があるから、予想はできていただろう」
「確かにそうだが、確証に至るまで踏み込めなかった。
ユメ、この先決戦となるがカイの味方でいてくれるのだな」
『とーぜん、ちきゅーじんなんてもうどうでもいいもん。
あんたらのことは知ったことじゃないけど、まあ……カルーアがいるから一応手を貸してあげる』
「ありがとう、それだけで十分だ」
ユメは結局マグノ海賊団の味方とまではならなかったが、メイアは大いに安堵した。
生き方が違いすぎる上に、カイが好んでいない海賊だ。最悪敵にならなかっただけでも御の字だろう。
それに他でもない赤子のカルーアの存在が、ユメの協力を得られる起因となった。
未来の光が結果としてメイア達を守ってくれたのだ。カルーアが架け橋となってくれた。
『ただユメの本体が船に積み込まれちゃってるから、露骨に裏切れないんだけどねー』
「ペークシス・プラグマの結晶体が動力源となっているなら尚更か。
戦う際には考慮しなければならないな」
「船ごと破壊してしまうと、ユメまで吹き飛んでしまうからな」
この点はカイやミスティが既に話を聞いていて共有していたが、難しい問題だった。
手加減できる相手ではないが、敵側の本艦は完全に破壊できない。
ある種ユメの本体が人質に取られている形だが、不幸中の幸いなのは敵側がその事実を認識していないことだろう。
もっとも知られたとしても動力源であるペークシスを破壊なんて出来ないのだから、意味合いはあまり変わらないが。
「とりあえず話はわかった。こちらの報告だが、ソラの協力があればある程度奪取したこの母艦の制御は可能だ」
「以前からパルフェやガスコーニュ達も頑張ってくれていたが、実を結んだのか」
「制御系の掌握に時間を費やしていたが、その点はソラがシステムに介入して何とかなりそうだ。ただ」
「ただ?」
「刈り取り兵器を建造する工場を、フル稼働させるのは無理だ。
ソラの分析ではシステム面の問題ではなく、膨大なエネルギーが必要となるらしい。
先の我々との戦いで欠損も生じていて、無尽蔵に兵器を作り出すのは不可能だ」
「ちっ、何もかもうまくはいかないか」
つまり母艦そのものを戦力とすることは可能だが、母艦より生み出される無人兵器の大群を当てにするのは困難との事だった。
当然だが、無から有を生み出す事はできない。兵器を作り出すには、兵器の材料とエネルギーが必要となる。
ペークシス・プラグマは無尽蔵にエネルギーを生み出せるが、制御ができない。オリジナルを制御できているのは、ソラとユメという存在があるからだ。
リソースを割けば彼女達の負担まで増える。戦力として組み込むのは諦めるしかなかった。
「調べてみたが、まだかなりの数が残っている。残存戦力があるだけでも儲け物と思うしかない」
「分かった。とりあえずこの母艦は使えそうだな」
「調べてみたが、ステルス艦もあった。これを使って次の行動に出よう」
「考えがあるのか」
「ああ、ここは故郷だからな――アジトに戻って仲間達と合流する」
――メジェール惑星外にある、マグノ海賊団のアジト。
海賊の本家ともいうべき荒くれ者たちがいる。
<to be continued>
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