ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 24 "Men and Women"






Action48 −結魂−








 ――地球から略奪した母艦への侵入は、予想外にもスムーズだった。

レジシステムを利用してカイ達はニル・ヴァーナより脱出、ガスコーニュが使用しているレジの船に乗って母艦へと向かう。

ニル・ヴァーナには監視船が一隻、牽引用の船がもう一隻ついていたが、ガスコーニュの船は電子迷彩機能があって発見されずに済んだ。


タラーク・メジェール両軍も一応監視はしていたが、神経を尖らせるほどではなかった。


『お頭の決断により、我々は無条件降伏したからな。誰も居ないはずの船を監視こそしても、過敏な警戒はされない』

『俺達がペークシス・プラグマに隠れている間にも、船内は徹底して無人であることを調べられただろうからな』

『伏兵は戦術の基本。何より我々が無条件で白旗を上げたことも警戒させたのだろう。
艦内は徹底的に調べたはずだ。だからこそこうして無事に脱出できている』


 カイとメイアが顔を寄せ合って現在の状況を確認し合っている。

ペークシス・プラグマという結晶体の中に人が隠れているなどという発想は、非現実的すぎて頭の範疇にもないだろう。

ましてその結晶体が精霊という意思を持って人間に協力しているなんていう話は、ファンタジーでしかない。


カイやメイアもこの一年間の旅を経て、ようやく実感し始めているところである。


「ユメ、母艦の中にタラークやメジェールの兵士はいるか」

『んーと、誰も居ないよ。人間達の通信も聞いてみたけど、母艦に入るのは禁止されているっぽいね』

「立入禁止――地球の舟に土足で入れないようにしているのか」

「――協力関係、というよりも主従関係になるのは間違いなさそうだ」


 カイに問われてユメはウキウキで確認し、状況を報告する。

ユメが聞いた通信というのは本国とやり取りしている軍船の通信であった。

タラークやメジェールの通信技術は地球に比べれば劣っており、システム介入が容易いユメであればお茶の子さいさいであった。


特にユメは一応立場上は地球のペークシス・プラグマであり、敵側の立場だった――もはや忠誠心も何もあったものではないが。


「お姉様。パルフェやアイちゃんは留守番で大丈夫かな」

「パルフェはニルヴァーナと母艦のシステム掌握、アイは蛮型やドレッドのメンテナンスに励んでもらっている。
ニル・ヴァーナを本当に無人とするのはまずいからな。いずれ行われる一斉蜂起に向けて準備を進めてもらう」


 パルフェはハッキングして、ハードウェアやソフトウェアに干渉。

パルフェにとっては自分の専門分野である機関士としての仕事に取り掛かり、母艦側のシステムも再起動させるべく準備。

高いスキルを持つパルフェがシステムを解析して改変し、ソラやユメの協力を得て現在封鎖されている母艦への干渉も行えている。


カイの蛮型を整備するエンジニアのアイ――他の整備クルーが連行される中、彼女はドレッドや蛮型を守るべく一人残っている。


SP蛮型は特殊な機体なので、彼女ほどの天才がなければ整備ができない。ドレッドや蛮型を破壊されないように、システムを通じてガードしている。

両軍もすぐ破壊する気はないのか、メイア達の機体は物理的な拘束を行って動かせないようにしている。


マグノ海賊団の主力を確保するべく、彼女も一人孤軍奮闘していた。


「パルフェ達のお陰で母艦への侵入も行える、このまま乗り込むぞ」

「分かった――それにしても因果というべきか」

「? 何がだ」

「この母艦を内部破壊するべく、ウイルス担いで乗り込んだことがあっただろう」

「……あんた達の馬鹿な作戦のおかげで、あたしまで乗り込む羽目になったんですけど」

「スーパーヴァンドレッド誕生のきっかけとなった作戦だったな」


 思い出話というのは極めて物騒ではあったが、カイ達は互いに笑いあった。

カイ達が奪い取った母船とは、数ヶ月前に死闘を繰り広げている。


偽ニル・ヴァーナを共に襲い掛かってきた母船に、カイ達は大いに苦しめられた。


ガスコーニュを危機的状況に追い詰められるほどの激戦となり、カイ達はミスティが持つウイルスを利用した内部工作に打って出る。

その時作戦に参加したのがカイとメイア、ミスティに、ソラとユメ――全員が協力した結果、スーパーヴァンドレッドが誕生した。

母艦相手でも戦える強大な戦力、カイ達にとっても今では切り札となっている。


「しかし――なるほど、悪くはないかもしれん。当時の侵入ルートを頼りに潜入しよう」

「無人兵器がウヨウヨしていたあの時より遥かにマシな状況だからな」

「思い出話を参考ってのも複雑だけどね」


 こうして、カイ達は母艦内部への潜入を果たす。

結局発見されることもなく、比較的にスムーズに事が進められた。

タラーク・メジェール両軍が禁忌としているだけあって、広大な母艦内部は一切手を付けられずに静まり返っている。


とりあえず無事確保できたわけだが――


「結局ガスコーニュが色々手を尽くしてくれて、無人兵器システムも掌握しつつあったんだったな」

「うむ、今パルフェが再稼働させるべく手を尽くしている。とはいえ、今の状況で動かす訳にもいかない。
お頭達はメジェールに捕まっており、バート達はタラークへ凱旋している。

この状況下で我々が突飛な行動に出る訳にはいかない」

「でしたらお姉様、この船の操縦室へ案内してもらってもいいですか」

「それはいいが……何か考えでもあるのか」


「あたしが持っている故郷からのメッセージ――この真実をタラークやメジェールにも伝えられないか、手段を探りたいんです」

















<to be continued>







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