ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」
Chapter 24 "Men and Women"
Action45 −私撰−
――メジェールの司法制度において、何らかの犯罪を犯した場合は幾つかの種類による刑罰が適用される。
例えば死刑は犯人の命を奪う刑罰で、最も重い処罰である。国家を脅かした海賊の場合本来これが適用されるが、マグノ海賊団となれば話は違ってくる。
さまざまな政治的思惑が複雑に絡み合った上、裁判においても肝心の裁判官までが国家の勅命と正義の板挟みに苦しむほどである。
彼女達の実刑は通常では考えられなかった。
"ねえねえ、あんた達の武勇伝とか聞かせておくれよ"
そうして流刑地まで流されたマグノ海賊団への注目は高い。
流刑地に追いやられる犯罪者は、厳密に言えば懲役刑には科せられない。これには理由がある。
懲役刑は、犯人を刑務所などの矯正施設に収容して、強制的に働かせる刑罰だ。
この罪は死刑の次に重いとされているが、あくまでも矯正が前提だ。
流刑地へ送られた犯罪者は政府が重罪だと定めた犯罪者であり、矯正など望まない。この世から抹殺したい人間であるが、表立って殺すことは出来ない。
単純に殺すだけなら死刑で済むが、死体であっても晒せない都合の悪い者達がいる。そういった者達は流刑されるのである。
つまりは禁固刑、死ぬまで閉じ込められる檻の中である。
"最近音沙汰なしだったんで、既に捕まったとか、政府に抹殺されたんじゃないかとか言われてたんだ"
そうした流刑地においてでも、そこに人がいる限り噂というものは流れる。
完全に孤立しているのであればともかく、人の出入りはどうしたって閉ざすことは出来ない。
犯罪者だけの巣窟ならともかく、刑務員などの人員だって必要となる。となれば物資や資材が必要となり、人の流れができてしまう。
人の流れが出来れば、情報だって流れ込んでしまうのだ。
"フフン、どうやらジュラとカイ達の華麗な冒険談を話す時が来たようね"
"……自分語りじゃないだけ、この一年の旅の変化が出ているのかしら"
そしてジュラやバーネット達は、まさに外から来た人間である。噂話一つだけでも大いなる娯楽となり得る。
禁固刑は犯人を流刑地などに収容するが、厳密に言うと強制労働はない。強制労働は矯正が目的であって、これから死ぬ人間を苦しめる必要がないのだ。
犯罪者だからこそ労役を科して苦しめるべきという考え方もあるが、強制労働させるのも労力が必要となる。
そもそもの話流刑地でやらせる労役などありはしない。嫌がらせならいくらでも出来るが、そんな事をしたって意味がない。どうせ死ぬのだから。
毎日、何もせずに牢獄の中で暮らすだけの毎日。多くの禁固刑の受刑者は1日何もしないと、かえって苦痛が強くなるという点でも効果的である。
実際受刑者達は、娯楽に飢えていた。
"ディータも宇宙人さんの話ならいっぱいあるよ!"
"ならパイもドクターの話でもしてあげようかな"
そして何よりも男、タラークという別惑星の話であれば格別である。
確かに男はメジェールの女にとって敵ではあるが、だからといって目くじらを立てるほどではない。
近隣住民ならともかく別の惑星にいるとなれば、庶民からすれば対岸の火事だ。メジェールの教育を受けた洗脳状態であれど、自分達には影響はない。
何よりここにいる犯罪者達に、国家への忠誠なんて無い。そんな物があれば、そもそも流刑されたりはしない。
"ディータやパイウェイまでカイ達の事を話す気満々ですがどうしましょうか、お頭"
"かまわないさ。むしろディータのような子達が話すほうが、アタシら大人が先導するよりも効果的かもしれないよ"
ドゥエロやバートが同胞達の説得を行っていたその頃――
彼らとは違ったアプローチではあるが、ディータ達もそれぞれ動き出していた。
自分の友達を自慢することで、男を理解してもらう――とても純粋で政治的思惑がないからこそ。
それは例えようもない、真実となった。
<to be continued>
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