ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」
Chapter 24 "Men and Women"
Action44 −无言−
ドゥエロとバートの懸命かつ真摯な説明により、元士官候補生達は真実を知った。
ある程度の表現を曖昧にこそしているが、概ねドゥエロ達は真実を話している。
地球と女に関するデリケートな点は真実であるからこそ気を使い、中立的な立場で本質を物語っていた。
暫くの間その場は静寂に満たされていたが、やがて若き軍人達は口々に問いかけていった。
「祖先の星が危機的な状況ってのは、実際のところどんな感じなんだ」
「タラークよりも逼迫しているといえば、真実味は伝わるだろうか」
「本当かよ……自分達がヤバいからって、俺達の星を襲うなんてあんまりじゃねえか!」
実際は臓器を奪いに来ているのだが、資源を奪うという表現をしたドゥエロの目論見は完璧なまでに成功していた。
目的が臓器だと狂気的なサスペンスにしかならないが、資源であれば脅威的な世界危機として受け止めてくれる。
どのみち地球はタラークとメジェールを滅ぼすつもりなので、着地点は同じである。
ドゥエロ達も敢えて、つまびらかにしようとは思わなかった。
「正直俺はいまだに信じられないんだが……どうしてグラン・パ達は地球の言いなりになっているんだ。
祖先が偉大だからって、自分の国を差し出すなんてどうかしているだろう。意味が分からない」
「ふむ……」
いずれ来る質問であろうとも、この点についてはエリートであるドゥエロも一考せざるをえない。
タラークとメジェールの指導者達は刈り取りの例外になっている可能性は、無くもない。
ただ刈り取りの驚異を考えると、その可能性は極めて低いだろう。
地球が自分達を同法だと思う気持ちがあれば、こんな悲劇は起こらないからだ。
「グラン・パ達は地球に強い忠誠心を持っている。
その忠誠は度が過ぎたものであろうとも、あの方々からすれば当然の帰結なのだろう」
「士官学校の教官が常日頃教えていたサムライって奴か……だからって俺らは、我が子同然だろう!?
俺達のことを家族のように扱ってくれていたのは嘘だったのか!」
「……大切な子だからこそ忠誠を捧げるのに値する、と受け止めているのかもしれない……」
「何だよ、それ……冗談じゃねえよ!」
あまりにも理不尽な愛に、若き軍人達の間で怒りと悲しみが波紋のように広がっていく。
この点についてはドゥエロ達も軍人達に共感こそ出来るが、同時に複雑でもあった。
あくまで想像の域を出ないのだが、グラン・パ達も苦渋の末の決断だったのではないだろうか。
バートの祖父が事情を語ってくれた時の悲痛さは、今でも忘れられない。
「話はわかった。ドゥエロ達が俺らにこんな話を語ってくれたのは、当然反旗を翻すためだな」
「我々も、そして君達も軍人だ。故郷にもそれなりの思いがあることは承知している。
クーデターを起こして罪なき者達まで巻き込むつもりは毛頭ない。
地球が行おうとしている刈り取りに対抗するべく、君達の力を貸してほしい」
「地球はもう目前にまで迫っているんだ、本当に時間がない。
話の流れから分かってくれると思うが、海賊達とも協力して乗り越えるつもりなんだ。
メジェールも目標となっている以上、彼女達だって例外じゃない」
「なるほど、だから故郷まで一緒に旅が出来たんだな……
変だと思ったよ。ドゥエロならともかく、ガルサスまで丁重に扱われていた理由がわからなかったんだ」
「なんで僕の評価だけ、そんなに低いんだ!?」
相変わらずオチのような扱いされて笑われているが、実のところバート本人もそういった素振りを見せている。
親同然だった人達に裏切られて、彼らが苦しまないはずがない。怒りや憎しみは、尊敬していてたがゆえの反動なのだから。
この先どうしたって、親と対決しなければならない時が来るだろう。その辛い時間を前に、今少しだけでも笑って忘れたい。
悲しみを乗り越えて――ドゥエロとバートは故郷の星で、多くの仲間達を迎えられた。
<to be continued>
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