ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 24 "Men and Women"






Action43 −位地−








 医療カルテを利用したデータ、女性に関する詳細が刻まれていて明白に描写されている。

マグノ海賊団個々人のデータそのものではない。ドゥエロは船医、患者のプライバシーを侵害したりはしない。

あくまでも女性という生物に関するデータが取り上げてられている。だからこそ客観的であり――


自分達と同じ生物であるかのような、生々しさがあった。


「例えば彼女達は鬼羅刹であるかの如き生き物だと、タラーク上層部は主張しているが――
このレントゲンにもある通り、生物的見地からみても我々と同じ生態をしている」

「つ、つまり、マクファイルは男と同じだと言いたいのか……?」

「その点については否定させてもらう。
私とバートは一年ほど彼女達と生活を送っていたが、男と女は別の生き物だ。

価値観や考え方、文化や技術がまるで異なる」


 ドゥエロ・マクファイルが徹底して気を使ったのは、タラークそのものへの完全否定をしないことであった。

もはやタラーク上層部が地球の言いなりであることは明白ではあるが、さりとて自分達を育ててくれたのは彼らである。

親を否定することは、子にとって耐え難いものだ。その点を否定してしまうと、下手をすれば自分達の主張が頭ごなしに否定される危険がある。


だからこそ、根気強く説明する。全てが違うのではなく、違っている点があるのだと。


「マグノ海賊団の女達が怖い連中だってのは、僕も否定しないよ。
僕なんて操舵手としてこき使われたし、ヘタレだの何だのとバカにされたんだからさ」

「そりゃあ流石にガルサスが悪いだろう」

「まったくだ。女達がお前の扱いに苦労していたのが目に浮かぶよ」

「女達よりひどいこと言ってる!? 君達、僕の同僚だよね!」


 集まっていた場に、笑い声が響き渡る。

バート・ガルサスという人物が持つキャラクター性に、ドゥエロが口元を綻ばせた。

彼自身気付いていないのかもしれないが、この明るさには自分もカイもずいぶん助けられた。


昔はただの軽薄であったかもしれないが、今は現実の苦労を乗り越えてこその明るさであった。


「マクファイル、ガルサス。女海賊達が怖い連中だってのは事実なんだよな」

「ああ、彼女達が海賊なのは間違いない。それは認める」

「だったらどうしてそんな奴らと一緒に旅ができたんだ。
アイツラだってメジェールの連中だ、男を嫌っていたんじゃないのか」


 ドゥエロとバートが視線を交える。この質問は大いなる契機であった。

同僚達が自ら問うてくれたことに、意味がある。自分達の話が受け入れられている証拠だった。

喜んで飛びつきたいところではあるが、慎重にならなければならない。


何故ならこの点については絶対に持ち出せなかったデータ――地球や刈り取りに関する事であるからだ。


「君達を信用して話す――心して聞いて欲しい」

「質問は後から受け付けるから、まずドゥエロくんの話を最後まで聞いてくれ」

「あ、ああ……」


 地球について――これは禁忌に値する。ゆえに女達のことよりも気を使わなければならない。

いきなり刈り取りの話を持ち出し、臓器の強奪を口にしたところで狂人扱いされるだけだろう。

狂気を口にすること以上のバカバカしさはない。自分たちの祖先がイカれていると言っても、ピンと来ないだろう。


だからこそまず、地球そのものの危機――つまり刈り取りの動機について話した。


「――この話は同じ地球より出立した祖先、タラーク・メジェール以外の星より辿り着いた先人よりもたらされた情報だ。
地球は今危機に瀕しており、我々の"資源"を狙っている」

「ようするに自分達の星がやばいからって、僕達の星を狙って戦争を仕掛けようとしているんだよ。
故郷へ目指す最中で何度も襲われて、男と女は手を組んだってわけさ」

「……」


 同僚達は唖然呆然として――同時に、ある種の強い納得を覚えた。

ドゥエロやバートの話が衝撃だったこともあるが、同時に突拍子もないあの話が腑に落ちたのだ。


タラークとメジェール、2つの国が突如同盟を結び、共同で軍事行動に出た。


若者達にとっては青天の霹靂であり、故郷の価値観からすれば全くもってありえない話である。

しかしありえない話だからこそ、ドゥエロ達の衝撃的な話を受け入れることが出来る。


結果的に――地球の言いなりになってしまったタラークとメジェールが、ドゥエロ達の真実を証明してしまったのである。

















<to be continued>







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