ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」
Chapter 24 "Men and Women"
Action36 −星灯−
刈り取りの事を伝えたメッセージポッド。タラーク・メジェール両国に向けて送られた、マグノ海賊団からのメッセージ。
故郷では略奪行為を行っていた彼女達ではあるが、メジェールが滅ぶことは望んでいない。
彼女達は故郷を追い出された身ではあるが、それは政府の責任であって民ではない。故郷に対する想いが消えたわけではない。
ゆえにこそ彼女達は義賊として、人々から恐れられつつも人望がある訳だが――
(せっかく送った彼女達のメッセージを、政府はもみ消したというのか)
(むしろ彼女達のメッセージから、地球の命令を感じ取ったのかも知れない。今こそ地球の命を果たすべき時だと)
刈り取りの動きをマグノ海賊団からのメッセージを通じて知った彼らは、事を起こした。
タラークとメジェール。両国家は睨み合っていたが、統率する第一世代は共通の目的を持っている。
地球より端を発した彼らが命令には逆らえずに、地球の軍門に降る道を選んだ。
それで両国家は軍事行動を中止して、着々と準備を進めていたのだ。
「目の上のたんこぶだった海賊達が事故で居なくなって、今こそって感じだったんだけどな」
「そういう意味じゃ、行方不明だったマクファイル達がむしろ俺達より頑張っていたんじゃないか。
士官学校卒業後も軍事演習ばかりの日々で、実戦なんてまるでない日々だったからな」
ドゥエロ達が旅をしていた間の日々を聞かされて、ドゥエロやバートは表面的に苦笑いするしかない。
せめてパフォーマンス的にも撃ち合いの一つでもすれば、彼らもこうして疑問には思わなかっただろう。
取り繕うことさえ止めた両国家は自分たちの国の民を生贄にするべく、この一年間内々に準備を行っていたのである。
まさか指導者に殺されるとは夢にも思わない彼らは、呑気に笑っている。
「平和であったのなら何よりかもしれん。海賊に襲われたばかりだ、君達も戦々恐々とはしていたのだろう」
「まあそれはそうだけど、俺達だって軍人だからよ……海賊連中だけではなく、女達にだって一泡吹かせてやりたいさ」
ドゥエロやバートも士官候補生ではあるが、軍人には興味がなかったので彼らの感性にはピンとこなかった。
むしろヒーローとしての活躍を望んでいたカイのほうが、彼らの意気込みには共感していたかも知れない。
当時軍艦イカヅチに襲撃を仕掛けてきたマグノ海賊団相手に、彼は独自に立ち回りを行なっていたのだ。
自分達の友人の事を思い出してしまい、ドゥエロ達は嘆息するしかない。
「我々が居ない居ない間、何があったのか分かった。だが、ここ最近はどうなんだ。
我々が故郷へ辿り着いた時、メジェール軍と足並みを揃えていたように見えた」
「分かる、お前らもビビっただろう。なんせメジェールと手を組んでいたんだからよ」
ドゥエロが核心に切り込むと、同僚達もまた揃って顔を見合わせる。
最悪戒厳令でも敷かれているかと思いきや、同僚達にも軍部の動きは伝わっているらしい。
カマをかける程度の揺さぶりに対して驚くほど反応があったことに、ドゥエロもやや拍子抜けしてしまう。
だが、ここで聞かぬ理由はない。固唾を飲んで、彼らの言葉を待った。
「軍部が大きな動きを見せたのは、つい最近だ。国家の一大事が迫っているとのことで、上層部が慌ただしい動きを見せたんだよ」
「具体的になにか掴んでいるか」
「大っぴらにはいえないけど、お前らならまあいいか……
行方不明だった海賊達が攻めてくるってんで、大規模な捕縛作戦が展開されたんだよ」
――ドゥエロとバートが、顔を見合わせる。
彼らの一言で何故タラークとメジェールの両軍が足並みを揃えられたのか、分かった。
恐らくマグノは最初から見透かしていたのだろう。だから無条件降伏を行う決断をした。
衝撃的であり、それでいて当然の帰結を彼らは語る。
「一年前の事故でマグノ海賊団は滅んだかに見えたが、国家は生存を何らかで掴んでいたみたいだな。
軍部にとっても、頭の痛い問題だ。なんせ事故があったからなし崩しで有耶無耶になったけど、実質完敗してしまったんだからな。
連中がまた攻めてきたら、今度はやばいかも知れない。だからこそ――」
「同じく海賊に悩むメジェール軍を手を組んだということか」
「同郷でも容赦なく略奪行為をしていたみたいだからな、だいぶ恨みを買ってたんじゃないかな」
マグノ海賊団を捕縛するべく、両軍が手を組んだ――第1世代の本当の狙いを、知らぬままに。
第一世代はマグノ海賊を『地球の』驚異となるので捕縛したのだが、タラーク・メジェール両軍は『故郷の』驚異だと思われている。
彼らの話を聞いたバートは焦った顔でドゥエロに耳打ちする。
(どうするの、ドゥエロ君。この誤解、解けないんじゃ……)
(そもそもの話、誤解ですらない。彼女達が両国を狙って海賊行為を繰り返していたのは事実だ。
どんな理由があろうとも人間を襲い、物資を奪った罪は消えない)
罪と罰、そのどちらもどう受け止めるのか本人次第。
とはいえ彼女達が両国家で暴れ回った事実がある異常、どれほど言葉を尽くしても許されるかどうかは分からない。
少なくとも誤解ではないのだから、彼らが間違えているのだと批判など出来はしない。
彼女達は善人であろうとも、世間にとっては善良ではない。
彼らの連携が、メッセージポッドを発端に起こってしまったのである。
<to be continued>
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