ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」
Chapter 24 "Men and Women"
Action35 −曳航−
軍人が軍事機密を漏洩すると戦犯となるが、同じ軍人同士だとやや話が変わってくる。
勿論同じ軍人でも気密を打ち明けることは出来ないが、内部事情であれば噂の種くらいにはなる。
まして話し相手はかつての同期であり、首相からも勲章や表彰まで受けた英雄達。
多少話したところでバチは当たらないと、ドゥエロやバートに話し始めた。
「まず先程話した通り、女海賊達に襲撃を受けたことはかなり問題になった。
せめて討伐できていれば話は変わってきたんだけどね」
「軍部は決して認めないけれど、あの戦いは俺達の惨敗だっただろう。軍艦イカヅチだって何の役にも立たなかった。
海賊達相手でもこの有様なんだから、メジェール正規軍ならどうなっていたんだって危機感持つじゃないか。
軍人ならば尚の事さ」
かつての士官候補生達の嘆きに、ドゥエロやバートは妙な心持ちになった。
何しろ彼らが嘆いているのは敵である海賊達の強さであり、ドゥエロたちからすれば味方の頼もしさである。
彼女達が強いことは喜ばしいことではあるが、それは今の立場だから思えることだ。
危機感の共有は出来ないが、彼らの気持ちはよく分かるので複雑である。
「対メジェール戦略を見直す必要があるんじゃなかって、予定していた演習も軒並み中止になった」
「海賊襲撃の責任論もあって、軍部も難しい顔をしてばかりでな。
一応俺達も卒業ということで軍隊には配属されたんだけど、すげえ居心地悪かったんだよ」
あわよくばすべての責任を押し付けられそうになっているが、軍部からすれば責任のなすりつけなのは分かっている。
世論上は彼らを罰しなければいけないが、全てに非はないと分かっているので厳しく罰することも出来ない。
となれば軍隊でも居心地が悪くなるのは当然であり、士官候補生だって面白くはない。
結果として、軍部と軍隊の間で軋轢が生まれてしまった。
「そんなしばらく続いていたんだけど、あれは――ガルサス達が居なくなってから数ヶ月くらいだったかな」
「そうそう、ようやく事件の余波が落ち着いてきた頃だよ。メジェールへの派兵が一切中止になった」
「中止……? 戦争が終わったということかい!?」
「いや、そこまでじゃないけど……メジェールを刺激しないようにしようって日和りだしたんだよ」
士官候補生達の混乱は、ドゥエロ達にとっても困惑であった。
マグノ海賊団の襲撃はたしかに脅威だったかも知れないが、決して初めての敗北ではない。
海賊達の悪名は積み重ねがあったからこそ、鳴り響いている。初犯で軍隊相手は流石に戦えない。
衝撃的な敗戦だったとはいえ、タラーク軍が恐れを抱いて戦争を止めるなんて単純な話にはならない。
「具体的に聞かせてもらえるか。どういった変節があったのだろうか」
「いや、配属されて数ヶ月の俺達には話してもらえなかったけど……さっきも言った通り、演習とかは全部中止になった」
「それと海賊に関する噂とかも禁じられたな。いや、機密にするってのは前々からずっとだったんだけど――
あの海賊のことは一切に口にしないように、軍令が下されたんだよ。正式に」
つまりタラーク軍は海賊達を脅威とさえ見直すことなく、情報統制を図って封印しようとした。
これは敗戦を隠すという意味では、決していい処置ではない。そこまで徹底してしまうと、かえって逆効果になりかねない。
世論には隠せるだろうが、軍人達からすれば軍部は海賊を恐れてしまったのだと受け止めてしまうだろう。
何故戦わずに隠すんだと、憤るものだって出てくる。封じ込めるのは明らかに極端だ。
(――ひょっとすると)
(ドゥエロ君、何か分かったのかい)
(旅に出た当時、刈り取りの事を伝えたメッセージポッドを覚えているか。両国に送った我々からのメッセージだ)
(あっ!? じゃあまさか!)
(時期的にも一致する。恐らく両国の首脳がそれぞれメッセージを受け取り、内々で連携する動きを見せたのだ)
ドゥエロ達からのメッセージで地球が動き出したことを知った彼らは、本性を剥き出しにした。
マグノ海賊団が刈り取りの敵になったということは、祖先への反逆を意味する。
地球を主とする彼らは刈り取りに呼応するべく、お互いに連携することを内々に決めた。決めてしまった。
それはつまり――
(無論タラークやメジェールは我々への支援や協力ではなく――)
(地球と連携するために、軍の連合を開始したのか!)
――マグノ海賊団とドゥエロ達の、命がけのメッセージ。
故郷を救うべく送ったあのメッセージが、逆にタラークとメジェールを敵にしてしまった。
彼らの連携が、メッセージポッドを発端に起こってしまったのである。
<to be continued>
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