ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」
Chapter 24 "Men and Women"
Action29 −沙都−
――収監されたマグノ海賊団は分断され、各独房へと投獄された。
島流しの流刑地とはいえ、全員一箇所に集めるような真似はしない。
戦闘員、非戦闘員問わず、各自バラバラに分けられた上で、投獄を余儀なくされている。囚人として当然の扱いだった。
マグノ海賊団という集団を恐れての処置だったのだが――結論から言うと、ほとんど意味のない処分だった。
(メジェールに危機が迫ってる!?)
何故ならマグノ海賊団とは、自立した個が集まった集団なのだから。
戦闘員のみならず、非戦闘員も多くの修羅場をくぐっている。ニル・ヴァーナという船そのものが襲われる事態もあったのだから。
危機的状況を何度も超えた彼女達は、一人一人が自覚を持って行動している。
お頭の指示待ちに甘んじるお嬢様など、マグノ海賊団にはいない。
(地球って確か……祖先の星だったんじゃないのかい!?)
(信じられない話だけど……あんたらほどの海賊が言うんじゃ、眉唾ってわけじゃないわね……)
基本的に独房は私語禁止ではあるが、大人しく聞き入れる犯罪者などいない。
刑務側も島流しほどの重い刑罰を食らっている人間に対して、殊更目くじらも立てない。彼女達はここで死ぬだけなのだから。
犯罪者達も大っぴらに私語はしないが、小声で話し合える技術くらいは有している。
海賊達も然りだ。この程度のスキルは、子供でも持っている。
(男と一緒に旅をしてきたなんて、勇気あるね)
(へえ、タラークの男たちってのはそんな肝っ玉のデカイ連中なのかい)
(海賊のあんた達と一緒に戦ってきたとあれば、相当の連中だね……やはり故郷の連中は、騙してたんだね)
島流しという刑罰は特殊で、テロリストや殺人者とは一線を画する。
武装テロなどを起こした犯罪者は放置するわけにはいかないが、政治や人種差別者は逆に隔離しなければならない。
特にメジェールの思想に反する者達は故郷に置いておくわけにはいかず、こうして遠き星の彼方へ置き去りにする。
ここに収監された人間はメジェール人だが、メジェールの思想に洗脳されているのではない。
(刈り取りという無人兵器、それはまた厄介な兵器に狙われたんだね)
(生殖器を奪うってどんな外道だよ……)
(何でグラン・マやお偉いさんはそんな連中を放置しているんだ、どうかしているよ)
島流しに遭った者達の犯罪歴は多岐に渡るが、目立った犯罪といえばやはり政治的犯罪者だろう。
思想犯と呼ばれるこうした者達はメジェールの教えを乱す悪であり、厳罰に処される。
死刑もありえるが、片っ端から殺しまくってしまうと目立ってしまう。だからこそ、こうした島流しによって行方不明となる。
彼らの思想はメジェールにとっては非常識であり、人としては当然の苦悩を持っている。
(男が下劣な生き物ってのも嘘なのですね)
(悪い奴らだって当然いるだろうけど、それは私達だって同じだもんね)
(メジェール人が一番偉いなんてのは幻想なのですわ)
政治的思想犯以外にメジェールが警戒しているのが、人種差別である。
何しろメジェール政府が率先して男蔑視をしているのだ、他の視点で差別されるのは困る。
歴史を振り返ってみれば明らかだが、人種差別はいつの時代も起こり得る。そして――
人種差別を許さない者達も必ず、一定数存在する。
(オッケー、私達も協力するよ)
(不自由多いでしょうけど、ここの暮らしのルールや抜け道を教えます)
(その代わり、アタシらもあんた達と一緒に戦わせてよ)
(男が一緒でもかまわないよ、むしろ会ってみたいね――その連中と)
マグノ海賊団一人一人が各独房で――種を巻き続ける。
真実という劇薬を振りまいて、囚人達を刺激し続ける。
いずれ爆発するその日まで、海賊達は檻の中で自由に暴れ続けた。
<to be continued>
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