ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」
Chapter 24 "Men and Women"
Action30 −壱与−
島流しの監獄で順調に仲間を増やしているマグノ海賊団だが、実際のところ作戦は慎重に進めていた。
まず第一として、マグノ海賊団入りについては徹底的に待ったをかけている。仲間であれど、同士ではない最低限のラインを敷いていた。
初対面だから信じられないという点は確かにあるが、それ以上に敵味方の判別を第一としていた。
同じ苦境に立たされていようと、個人の事情は一切異なるからだ。
(メンバーリストの仮草案を作成いたしました、お頭)
(檻の中にいようと小道具を揃えられる手癖の悪さは海賊らしいね)
例えば人種差別反対派と一口にいえど、思想そのものは異なる可能性がある。
人類みな兄弟と謳うのは簡単だが、実際男と女には違いがある。上下関係は抜きにしても、性別の違いはどうしたって出てくる。
マグノ海賊団も今更カイ達を敵だと思っていないが、自分達と同じ女のような扱いはしない。だからこそ今まで四苦八苦していた。
人種差別反対派はそうした違いすら良しとせず、平等であろうとする。その思想は危険だった。
(ふーん、真っ先に団入りを希望したあの子は横領事件を起こしているんだね)
(政府の支持に逆らったという点ではわたし達と同じですが、いわゆる反政府的活動に出るあまり無茶をしているようです)
思想の違いも難点だが、より分かりやすいのは行動の違いだった。
マグノ海賊団だって平和的な解決を常に模索していない。そもそも海賊行為こそ、暴力的なのだから。
さりとて反政府的活動、いわゆるテロリズムとは一線を画する。彼女達は義賊であって、強盗ではないのだ。
後ろ指を指される人生を送ってこようと、踏み越えてはならない一線は存在する。
(この監獄に関する人材や施設情報の交渉に出てきたあの子はどうだい?)
(値踏みされているのはこちらですね。地球に関する情報も疑っているようです)
――そして一番見極めが難しいのは、対等であろうとする者。
海賊のお頭であるマグノを心酔せず、あくまで自分のために利用しようとする者達である。
疑われているのだから仲間にしないと、一蹴するのは愚かに尽きる。
そもそもの話、自分達は海賊なのだ。世界平和を愛する正義の味方ではない。
(ほう、将来有望そうだね……いいさ、交渉に応じてやるな。適度にね)
(ラジャー、尻尾は見せないようにします)
大胆にもマグノ海賊団を利用しようとする輩達は、両者の関係を定めなければならない。
値踏みする目を持っているということは、メジェールの洗脳にも惑わされていないということだ。
島流しの目に遭っている以上脛に傷はあるだろうが、目利きが利くのであればメジェールに組するとは思えない。
ゆえにこそ仲間として有望であり、利用されないように気を使わなければならない。
(それと早速ですが、裏切り者が出ました。いわゆる密告者ですね)
(ま、分かりやすい行動ではあるね……)
逆にやりやすいのが密告者、ようするに裏切り者である。
仲間のような顔をしてマグノ海賊団に接して情報を手に入れ、看守側に告げ口する輩である。
全員が全員、マグノ海賊団に共感するはずはない。世界なんてどうでもよく、この監獄でどのように生きていくのか。
目先の利益にしか興味のない人間なんて、何処にでもいる。
(対応済みなんだろう?)
(看守を一人抱き込んでおいたので、発覚は早かったですね。とっ捕まえて、睨みをきかせています)
この手の裏切りの対処は簡単だ。敵勢力からたった一人でもいいので、抱き込んでしまえばいい。
味方の中に敵がいるのと同じく、敵の中に味方となる人間だって当然いる。
そもそもこんな監獄で仕事をするような人間が全員、職務意識を持って望んでいる訳がない。
政府側の役人だからこそ、政府に不満を持つ人間だっている。そんな人間を抱き込んでしまえば、告げ口は簡単に発覚する。
(それにしても)
(はい?)
(――お前さん。随分たくましくなったもんだね、セルティック。誰かさんの影響かい)
(……誰かさんが助けに来るのが遅いので頑張るしかないんです)
男と女は同じ人間、そして女と女もまた同じ人間であり――違う人間。
世界が一つになって悪と戦う物語なんて、フィクションの中の世界でしか成立しない。
こんな最果ての監獄であれば尚の事、ここにいるのは犯罪者ばかりなのだ。
孤独のように汚い世界の中で、海賊達は周到に立ち回っていた。
<to be continued>
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