ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 24 "Men and Women"






Action22 −点取−








「タラークとメジェールは男と女のみで分けているのではない。
地球と差別化するべく、全てを不完全にするために――何もかも、分断してしまったのじゃ。食も含めて、何もかもすべて。

タラークとメジェール、二つあわせて一つの世界なんじゃよ」


 何もかも半分に分けることで、不完全なままの世界を維持させる――地球こそが絶対の存在とするために。

本末転倒だった。そもそもの話、地球が不完全であるからこそ植民船が船出したのである。

地球の腐敗が加速しており、現状維持どころか未来も危うかった時代。新しき天地を求めて、偉大なる第一世代を乗せた植民船は旅立ったはずなのだ。


ようやくショックから立ち直ったドゥエロは、ここぞとばかりに問いただした。


「貴方の仰った話は、地球からの指示だったのですか」

「そうだと言えるし、そうではないと言える」

「? どういう事、おじいちゃま」


「地球は、変わり果ててしまった。少なくとも儂らが旅立った頃の地球は、最早すでにありはしないだろう。
タラークとメジェール、遥か果てのこの惑星に辿り着いた頃の話だ」


「ふむ……新天地を見つけ出したあなた方は地球へ報告し、そして祖先より新しい指示が入った」

「そうじゃ。実に聡明な若者だな、君は」

「恐縮です」


 ドゥエロ・マクファイルは率先して話さなかったが、彼の脳裏によぎったのはミスティと冥王星の話である。

かの惑星はすでに滅んでしまったが、ミスティがメッセージを伝えてくれたのだ。

地球の退廃を記した貴重な伝言、この情報を元にドゥエロは自分なりの推測を述べたのである。


冥王星と同じく、地球はタラークとメジェールに干渉したのだと。


「どうして地球の言いなりになんかなったのさ、おじいちゃま!」

「バートよ。お前は儂に逆らえるというのか」

「ど、どういう事……!?」


「儂らにとって祖国の存在は大きい。当然じゃろう、儂らにとってのふるさとはすなわち地球じゃ。
どれほど過酷な旅路であろうとも、祖国の為を思えば命をかけてでもやり遂げられた。

地球に生きる人々の明日の為に、我々は大海原へと飛び込んだのだから」


 ガルサス食品の会長を務める者の覚悟を聞かされて、ドゥエロやバートは固唾を飲んだ。

圧倒的すぎる、巨大すぎる。どれほどの苦難を越えようとも、ドゥエロやバートはたった一年間の旅をしただけ。

地球より船出した第1世代の旅は、未来さえも見えない暗黒への活路だったのだ。覚悟そのものが違いすぎる。


祖父の鋭い眼差しを向けられて、バート・ガルサスは怯えて俯き――



――シャーリーの笑顔を思い出して、顔を上げた。



「――おじいちゃま、僕には家族ができました」

「むっ、家族じゃと……?」

「女の子です。このタラークでは最大の禁忌である女、しかも異星の少女を自分の家族に迎え入れました」

「何だと!? それがどういう事を意味するか分かって――」


「僕にだって覚悟がある。たとえ貴方であろうとも――地球であろうとも、シャーリーを傷つけるものは絶対に許さない。
貴方だって同じだ。あくまでも地球に味方をするというのなら、

軍人として――いや、家族を持つ一人の男として貴方と戦ってやるさ!!」


 テーブルを両手で叩いて、バート・ガルサスは身を乗り出した。血走った目を祖父に向けて、荒い息を吐いている。

今度は、祖父が絶句させられた。バート・ガルサスという我が孫は、これほどの気概を見せたことがあっただろうが。


自分の孫である。彼が――精一杯の、虚勢を張っていることは分かる。


内心では、祖父を怖がっている。地球に対して、臆してもいる。

困難な現実に震えている。過酷な未来に戸惑っている。厳しい現実に、歯を食いしばっている。


けれど――戦おうと、している。


「……よもや、女を嫁にでも迎えたのか」

「ちょ、急に何を言い出すのさ!」

「ちっ、そこまでいうのであれば嫁くらい連れてこんか。この勢いでならば、認めてやったものを」

「お、おじいちゃま!?」

「祖父殿、それでは――」


「ふふ……まさか友のみならず、家族まで迎え入れておったとは。儂にとっては曾孫に当たるのか、それともバートと同じ孫か。
いずれにせよ、素晴らしきことではないか。今日は何という日なのか。

やれやれ、いい加減儂も覚悟を決める時が来たか」


 それはすなわち――自分達に賛同してくれるということだ。

一番のネックだった第1世代の賛同を得られたこの瞬間に、ドゥエロとバートはお互いの手を取り合って喜んだ。

バートからすれば、喜びもひとしおだ。何しろ、シャーリーを家族として認めてもらえたのだから。


怖かったが、それでも殴り合いくらいはする気はあった。


「とにかく、落ち着いて話を聞きなさい。儂らだって無条件に地球に従った訳ではないのだ」

「と、いいますと?」

「タラークとメジェール、この2つを分けた理由は儂らなりにあったということだ。
お前達にとっても決して無視の出来ない、大きな課題となるじゃろうよ」

「是非お聞かせください、その訳を」


 そして彼が語りだしたその内容は驚くべきものであり、それでいて納得できる理由だった。

軍事国家、タラーク。船団国家、メジェール。


その国家形成のあり方にこそ、ヒントがあった。















 ――その頃。


「そろそろ俺達も動くぞ」

「オッケー」


 摘発されてしまった融合戦艦ニル・ヴァーナの中で、第三戦力が動き出そうとしていた。















<to be continued>







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