ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 24 "Men and Women"






Action13 −貴意−








「――聞くところによれば。
"刈り取り"などという根も葉もない噂で国民を惑わせ、海賊共によるクーデターを計画していたというではありませんか」


 マグノ海賊団への裁判は進み、いよいよ佳境へ入った。

追求するべき論点が定まったところで、被告席に座るジュラはいよいよ気を引き締めた。

予想外に赤子の作り方や出産方法への追求が厳しかったので、いい加減ジュラも霹靂していたところだった。


メイアの代わりにリーダー役を任された身として、情報を聞き出さなければならない。


「誰から聞いたの、その情報」

「黙りなさい、質疑しているのは常にこちらです」

「被告席から大声で、知っていることをぜーんぶ叫ぶわよ。
裁判官のあんたはともかく、裁判員さん達は事情を知っているのかしら」

「生意気な……!」


 裁判が進むにつれて分かったことだが、この裁判官は感情的すぎる。

同時に感情論でしか論破できないのだと、ジュラも冷静にこの状況を見つめていた。

日頃の態度から見れば意外に思われるかもしれないが、ジュラはメイアに次ぐリーダー候補のパイロット。戦略眼は優れている。


華やかさだけでサブリーダーが務まるほど、マグノ海賊団は甘くはない。


「計画していたのは認めるのですね」

「うーん、そうね……」


 結論ありきの指摘を受けて、ジュラは考える。

刈り取りの話を突然持ち出してきたということは、自分達がかつて送ったメッセージポットが届いていたことを意味する。

その上で洗脳だといっているということは、事実を黙殺するつもりだということだ。


地球と、メジェール上層部は繋がっている。ならば、どうするべきか。


「おやおや、アタシらは今初めて知ったよ」

(――お頭……なるほど)


 すっとぼけた態度でひょうひょうと煙に巻いた自分達のお頭を見て、ジュラは苦笑する。

洗脳という表現はともかくして、国民に訴える計画があったのは事実だ――何しろ同じ女の、ミスティが今やろうとしている。

向こうは冤罪のつもりなのだろうが、実は本当に計画していたと知ればこの裁判官はどう思うだろうか。

返答に悩んでいたが、お頭はこの場は白を切るつもりなのだと知って、自分も腹を決めた。


とことん、とぼけてやる。



「判決を、言い渡します」



 こうして裁判官と被告で無意味な応酬を繰り返して、数時間。

全てを知りながらもお互いに何も語らないというのは不毛であり、徒労であった。

冤罪を押し付けようとするのは腹も立つが、この裁判官は正直ジュラとしては同情する。


彼女からすれば海賊としての罪を追求したいだろうに――地球という巨大な存在が、裁判官の正義を歪めていた。


「グランマ様の名において採決いたします。
海賊マグノ・ビバンとその一味は、終身刑。即刻、即刻流刑地へ移送するように」

「……」


 随分と――軽い罪だと、ジュラは思った。


物資の略奪を繰り返し、祖国や敵国を延々と苦しめ続けた自分達。生きるためなら、平気で他人を犠牲にした。

カイ達は自分達を責めなかったが、状況次第ではカイ達も敵として危害を加えていただろう。五体満足だったのは状況による偶然だ。


海賊として死罪を言い渡さず、国家騒乱の罪で死地へ追いやろうとしている。


「アタシらを流刑地へ追いやって、真実を葬り去るつもりね」

「真実ではありません、デマです」

「刈り取りはもうすぐそこまで来ているわよ」

「黙りなさい、我々を洗脳しようとしても――」


「アタシは、あんたを守りたかった」

「!?」


「言いたいことは山ほどあるけどさ、一つだけ言わせて。
冤罪まみれだけど、この裁判を受けてよかった。あんたに色々言われて、ようやく自分の償い方が分かったの」


 だからありがとうとジュラは告解すると、裁判官の女性は一瞬ではあるが――瞼を震わせて、目を閉じた。

彼女だって分かっている。真実は明らかであり、上層部が突然むちゃくちゃ言い出してきたのだ。


けれど国家には刃向かえず、グランマの言うことは絶対である。疑う余地などありはせず――


「アタシはね――
あんたのような立派に生きる人達を刈り取りから守ることが、海賊としてやってきたことへの罪の償いだと思う」

「っ……連れて、いきなさい!!」


 真実であると、押し付けるしかなかったのだ。















<to be continued>







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