ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」
Chapter 24 "Men and Women"
Action11 −侍臣−
マグノ海賊団の無条件降伏により、タラーク・メジェール両軍が融合戦艦ニル・ヴァーナを制圧。
徹底して無抵抗を貫いたおかげか、両軍はマグノ海賊団全員を捕虜とすることに成功。
武力制圧を前提としていたのだが、海賊達は一切手出ししなかった為に双方共に血が流れることはなかった。
結果的に、無条件降伏という決断が功を奏した形となった。
マグノ海賊団を捕縛した彼らは、速やかに撤収。作戦完了となり、マグノ海賊団側もまたひとまず怪我人を出さずに済んだ。
接舷は切り離されて、メジェールの軍艦は惑星メジェールへと帰還する。
故郷を目指した彼女達は、皮肉にも捕縛した形で帰国したのである。無事に帰れたという意味では、自由こそないがある種叶えられている。
そして――男達は、逆に開放された。
「よかった、ようやく助かったよ!」
「ああ、もう大丈夫だぞ」
作戦通り捕虜のフリをしていたバート達は、監房から開放された。
マグノ海賊団と出会った当時は本当に捕虜扱いされていたので、バートやドゥエロからすればお手の物だった。
男三人、監房で長く一緒に住んでいた事を考えれば、むしろ懐かしいとさえ言える。
あの時は本当に苦労を分かち合って生きてきたのだ、かけがえのない思い出だった。
「よく肝を食われなかったもんだ」
「食べ物は間に合っていたようだ」
監房が破壊されて開放されたバートやドゥエロを、同じ軍属の男達が気さくに出迎えてくれる。
海賊達を完全に鬼畜生と思い込んでいる事には閉口しているが、少なくとも彼らがバート達を心配してくれていたのは事実だ。
言いたいことはあるが、少なくとも彼ら自身に罪はない。地球からの誤った思想を教育された彼らを、誰が責めることができようか。
ドゥエロはバートを一瞥して、小さく頷いた。
(バート、分かっているとは思うが)
(ああ、適当に話は合わせるさ。僕達が今何言ったって、信じてもらえないからね)
女は決して男の肝を食う魔物ではない――そう主張することは簡単だが、何一つ証拠はない。
そしてメジェールの女は敵だという事自体は、嘘ではない。メジェール側が男を敵視している以上、相互理解はありえない。
少なくとも、今この場でバート達を助けてくれた軍人達に訴えても埒はあかないだろう。
変えるのであれば、国民を動かせる上層部であった。そのためにも――
「敬礼!」
「任務、お疲れ様でした!」
「うむ」
マグノ海賊団副長ブザム・A・カレッサ、その正体はタラーク軍人である浦霞天明。彼の協力が、必須である。
流石というべきか、軍人達に最敬礼されても眉一つ変えない。
女性の容貌でありながら、まるで威厳が損なわれていなかった。開放された後も、堂々とした姿勢を貫いている。
一瞬バート達を一瞥するが、関心を見せる素振りもない。バート達もまた、態度に出すこともない。
「首相がお待ちかねです、どうぞこちらへ!」
「分かった」
首相――軍事国家タラークの父であるグランパに次ぐ、国家最高責任者。
偉大なる首相に面通し出来る立場こそ、ブザムの最大の強みであった。だからこそ、バート達も協力を取り付けている。
マグノ海賊団のスパイであった事実でさえも、利用する。そのようなことはもはや些事。
これから挑む敵に比べれば、スパイだって味方にしなければならない。
懐かしき故郷、軍事国家タラーク――挑むべき国家へと、バート達は軍人として帰参した。
<to be continued>
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