ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 24 "Men and Women"






Action9 −津万−








「いいか、お前を信じて預けるんだからな。絶対の絶対に、何が何でもシャーリーを守ってくれよ!」

「何回念押しすれば気が済むんだ、お前!? まあ、心配する気持ちはよく分かるけど……
俺達がちゃんと面倒を見るから、お前は安心して爺さんを説得しに行ってこい」


 マグノ海賊団が無条件降伏をして、タラーク・メジェール両軍に捕らえられてしまった。

いよいよこの船には存在しないはずのカイ達も隠れる必要が生じて、彼らは今ペークシス・プラグマ保管庫へと来ている。

巨大な結晶体であるペークシスの中に、カイ達は隠れる予定であった。


まさか両軍も結晶体であるペークシス・プラグマの中に人が入れるとは、夢にも思わないだろう。絶対の隠れ家であった。


「シャーリー、心配ないからね。僕が必ずおじいちゃまを説得して、家族になるのを認めてもらうから!」

「うん、おにーちゃんのおじーちゃんに会えるの楽しみにしているね!」


 別れを惜しんで抱きしめ合う二人の姿は感動的に見えるが、保護者であるバートの方が大泣きしているので意外と台無しであった。

とはいえ、茶化すような真似は決してしない。少女であれど女であり、異星から連れてきた人間。簡単に許容される存在ではない。

まして、軍事国家であるタラークで到底受け入れない少女だ。バートも故郷を出る決意をしているが、それこそ家族が許さないだろう。


前途多難であった。


「……少し、君達が羨ましく思う」

「どうしたんだ、いきなり」

「君にはツバサが、バートにはシャーリーという家族ができた。大切な人を、君達は見つけられたんだ。
私なりに精一杯この一年を生きたつもりではあるが、他人を観察するばかりではなくもう少し踏み込むべきだったのではないか。

他者との交流を積極的にすべきだったと、反省している」

「ドクター……」


 カイに問われて見せたドゥエロの寂しげな表情に、カイの傍らにいたメイアも目を伏せる。

ドクターが感じている後悔は、メイア本人にも言えることであった。他者への交流を怠ったばかりに、成長が止まってしまった。

頑なだった自分を変えてくれたのは、カイ達であった。男達と共に戦ってきたこの一年は、新しい交流の軌跡だった。


だからこそ、思ってしまう。どうしてもっと、こうしなかったのかと――


「何を言っているんだよ。なあ、バート」

「そうさ、ドゥエロ君は僕達にとってかけがえのない友達だ。この一年、この三人で衣食住を共に出来たのは最高に楽しかった。
監房の中なんていう生活ぶりだったけど、僕にとってはどんな豪邸よりも充実した生活だったよ」

「君達……ふっ、そうだな。やや不衛生ではあったが、男三人揃っての生活は良い思い出ばかりだった。
今後どうなるかは不明だが、私は君達と人生を共に生きたいと願っている」


 出自も何もかも全然違う三人ではあったが、毎日朝起きて一緒に過ごし、夜は共に同じ空間で寝る生活は本当に楽しかった。

それは間違いなく交流であり、友情を育む大切な時間だったのだ。ドゥエロはその事に気づいて、笑みを零した。

彼らの話を聞いて、メイアは苦笑する。カイ達との旅は確かに学び多き事ではあったが、苦労だってあったのだ。


一言くらいは言ってやりたい気持ちが彼女にはあった。


「僕とドゥエロ君はこのまま、副長さんと一緒の監房で捕まっていたフリをするよ」

「副長との間で、了解は取れている。被害者面をしつつ、海賊達を手綱に取っていた手柄話でもしておこう」

「……我々の前でそれを言われると複雑なのだが」

「……何というか逞しいわね、あんたら」


 海賊達の前で堂々と虚言を自慢し合うバートやドゥエロに、メイアやミスティは呆れた顔を見せる。

ドゥエロ達は女性に対する偏見は、完全に消え去っている。タラークの女性蔑視にも真っ向から異を唱える気概も持っている。

だが、タラークは国家だ。国家に対して個人が異議を唱えたところで、潰されて終わりだ。


ドゥエロ達も国が相手であろうと、反論する気力はあるが――


「俺が言うことでもないが無茶はするなよ、お前ら」

「無論だ、我々は必ず生きてまた会うのだからな」


 ――ドゥエロやバートには、大切に思える友達や家族がいる。

国に対してテロリズムを仕出かせば、回りまわって大切な人たちに迷惑を掛けてしまうのだ。

絶対に国を変える志はあれど、焦ってはいけない。子供が阿呆のように騒いでも、大人は毅然と黙らせる。


海賊は間違っていると吠え続けたかいだからこその説得力であり、ゆえにこそバート達は自分を見失わない。


「それじゃあ、僕達は行ってくる。副長さんの事は任せておいてくれ」

「君が帰れる居場所となるように、我々も努めよう。君は、自分の戦いに集中してくれ」

「ああ、頼りにしている。では、また会おうぞ」


 男達三人は、しっかりと握手をする。

女達は揃って微笑ましくも、頼もしい瞳を向けていた。


カイ達はペークシスプラグマへ飛び込み、ドゥエロやバートは故郷タラークへと突撃していった。















<to be continued>







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