ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」
Chapter 24 "Men and Women"
Action10 −愛真−
お頭であるマグノが無条件降伏を決定し、メインブリッジクルーやパイロット達が投降。非戦闘員達も全員、大人しく連行された。
無抵抗で大人しく両手を上げたこともあって、怪我人などは特に出ていない。
タラーク・メジェール両軍は強引でこそあったが、制圧に無駄な手間はかけなかった。だからこそ、無抵抗な彼女達に余計な手出しはしていない。
クルー達全員の安全を確認してから、ようやく最後の重鎮が動き出した。
「ガスコさん、店員達も全員作業は終わったわ。彼女達も投降させた」
「ガスコじゃない、ガスコーニュ。結局、最後の最後まで直らなかったね……たく」
副長であるブザム・A・カレッサがスパイであったことが判明して、役職を降りてブザムは捕縛されてしまった。
階級順としては次なる副長にはこのガスコーニュこそ適役だったが、本人は真っ先に固辞した。
緊急事態であるからこそ必要な人材ではあるし、代役であろうと求められているのは本人も分かっている。
だが彼女は、全ての事情を把握していても代役は引き受けなかった。
「だってレジの店長も辞めちゃったし、呼び名がね……こんな時に私が代わってもよかったのかな」
「こんな時だからだよ。前線で命張ってたお前さんなら立派に務まるし、パイロット時代から店員達との関係もよかったじゃないか。
バーネットこそ、パイロットに復帰しなくてもよかったのかい」
そして、バーネットも結局パイロットには復帰しなかった。
カイ達との確執や衝突から人間関係を悪化させた挙げ句、刈り取り襲撃で危機的状況にさせてしまった彼女は責任を感じていた。
その後の和解で罪悪感に苦しむことはなくなったが、同時にパイロットへの熱も冷めてしまった。
戦闘はどちらかといえば好きな性質なのだが、パイロットでなくても戦える。
「副リーダーとしてジュラは今では立派にやれているし、新人だったディータはメイアの指導を受けてメキメキ頭角を見せている。
新人達もこの一年間の戦いで、今では立派なパイロットとなったからね……私はもう必要ないよ。
カイ達が懸命に戦う最前線を、私は精一杯支援したいんだ」
「ふふ……生意気に、立派なことを言うようになったじゃないか」
バーネット本人は気づいていないが、この情熱を買ってガスコーニュは彼女を後継者としたのである。
まだ店長代役の身分ではあるが、立派に切り盛りしてうまくやっている。
今も店員達の仕事ぶりを見届け、彼女達の安全が確保されるのを見届けていた。立派な仕事ぶりであった。
ガスコーニュ本人もこれで安心して、後を任せられる。
「後のことはあんたに任せて、アタシはあの生意気な坊やの相手に専念するつもりさ」
「生意気な坊やって……もしかして、あの奪取した刈り取り母艦?」
「ああ、カイ達が頑張って奪い取ってくれたあの地球の母艦さ。なかなか言うことを聞いてくれなかったが、アタシが頑張ってしつけてやったのさ。
いよいよ地球が本腰入れて攻めてくるとなれば、総力戦になる。
あの母艦の戦力は是非ともアテにしたいからね、最後の戦いではアタシはあの母艦に乗り込んで戦うつもりだよ」
そう――副長代役の責務を置いてでも彼女が優先したのは、地球と戦える巨大戦力である。
副長代理の責務が重要なのは、彼女とて分かっている。
しかし今最も必要とされているのは、やはり戦力だ。総力戦となるのであれば、地球と戦える戦力が必要となる。
カイ達だけに戦わせるわけにはいかない。責任を果たすためにも、彼女は戦う決意を固めた。
「それに……あんたらだって分かっているだろう。このニル・ヴァーナの副長が務まるのは一人だけだってね」
「……まあ、そうだけどね」
ガスコーニュとバーネットは苦笑いを浮かべた。
ガスコーニュが皆から求められているのは、副長"代役"であって副長そのものではない。
今だからこそ必要な代わりであって、今後に必要な人材ではない。だからこそ今も、待望論までは出ていない。
本当に必要なのは、一人だけなのだ。
「バーネット、レジのことは全てあんたに任せたよ。あんたがいるから、アタシは安心して出られる」
「うん、こっちは任せて――"ガスコ"さん、私の代わりにカイ達をどうか助けてあげて」
「たく……お前さんもなかなか言うようになったじゃないか」
こうして万事全てをそれぞれに託して、彼女達は安心して両手を上げた。
後に任せられる人間がいるからこそ、彼女達は無条件に降伏できる。
何も、心配なんてしていなかった。
<to be continued>
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