ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 23 "Motherland"






LastAction -佐波-








『お頭、タラークの艦隊に包囲されました!』

『いえ、タラークだけではありません。メジェールの艦隊も!』


 メインブリッジのオペレーションより発せられる、緊急事態宣言。それの意味するところが分からない面々ではない。

ブザムが正体が発覚するリスクを恐れず、認証コードを告げてくれたことで、機雷原が発動することそのものは防げた。

だが、両国に接近するニル・ヴァーナの存在まで秘匿できた訳ではない。正体不明の艦が認証コードを告げる、その不気味さ自体は伝わってしまったのだ。


両国が艦隊を差し向けてくるのは、当然と言えた。


「まあ、そりゃそうだわな」

「うむ」


 カイやドゥエロにとっても覚悟を決めていたことである。どのみち、タラーク・メジェール両国に接近すれば、バレていたことである。

マグノ海賊団は両国にとって、敵そのものである。たとえ事前に刈り取りについてメッセージを送っていたとしても、友好的な態度をとってくれるとは限らない。

故郷の危機を告げるマグノ海賊団の事をどう捉えてくれるのか、一種の賭けであったのだが、やはりというべきか上手くはいかなかったようだ。


ブザムが囚われている監房の前で、男達は話し合う。


「この動きからすると、メッセージポットを送っても無駄だったようだな」

「あのラバットの話によると、タラーク・メジェールに求められているのは生殖器だ。
そのために男女が分けられて、我々というクローン体が製造されて、生殖器の純粋培養がされていた。いわばその牧場が、タラーク・メジェールであったということだ。

地球の命を受けている時点で、国家上層部は地球の手先であったのだろう」


 肩を落とすカイに、ドゥエロがタラーク最高峰の頭脳を持って両国の真実に迫る。

地球の手先として男女をわざわざ分けて生殖器の培養をしていたのであれば、刈り取りの真実を伝えても無駄だろう。

何しろ、その片棒を担いでいるのだ。危機を告げたところで、そんな事は知っていると言わんばかりに破棄したことは間違いない。


両国が滅ぼされる危機であっても、本望なのだ。


「ドゥエロとしてはどう思う? 以前の水の惑星のように、タラークやメジェールも地球に絶対遵守していると思うか」


 カイ達が以前に立ち寄った水の惑星では、自分達ごと滅ぼされようとしていたのに刈り取りの運命を受け入れようとしていた。

彼らが死の間際に立たされても、にこやかに受け止めていた。殉教者であり、狂信者であったのだ。

もしも両国家が地球に絶対であったのであれば、説得しても無駄だろう。共に闘おうと手を差し伸べても、払われて終わりだ。


ドゥエロは、一考する。


「……私としては、可能性はあると考えている」

「その根拠は?」

「水の惑星では地球という存在こそ明らかではなかったが、自分達の命を差し出すように教育されていた。
地球にとって都合が良いようにするのであれば、我々も同じ教育を受けていなければおかしい。

実際こうして両国出身の我々は地球に抵抗を示し、母艦さえも破壊している」

「なるほど……確かに男女がいがみ合うように洗脳こそされていたが、地球そのものについては何も言われていないな」


 軍事国家であるタラークと、船団国家であるメジェール。一応であったとしても、両国家は独自の文化を歩んでいた。

もしも地球へ臓器を差し出すことが目的であれば、それこそ民を奴隷として洗脳するべきだった。

それをしなかったということは、少なくとも国としての体裁は整えていたということだ。


そこに付け入る隙があるのではないかと、ドゥエロは忠告する。


「いずれにしても、説得は困難だろうな。両国家にとって地球は祖先であり、母星であることに違いはない。
強大な戦力を有していることも承知の上だろう。抵抗するだけ無駄と考えているかもしれない」

「だからといって、何もしない訳にはいかない。
今こそ俺達男女が力を合わせて、この困難に立ち向かうべきだ」

「賛成だ。私とて君達と分かりあった以上、今更タラークの軍人になど戻れん」


「へっ……こういう状況でもなければ、お前のようなエリートとは知り合えなかったしな」

「君やバートのような男と知り合えた偶然に、私も感謝している――それで、どうするつもりだ?」


「機雷原と同じだ、タラークやメジェールの軍隊と戦う訳にはいかない。でも白旗振っても、許して貰える筈がないからな。
ばあさん達とは仲間だが、海賊の仲間として捕らえられるのは納得がいかない。だからといって、タラークに今更戻れる訳がない。

だからどっちの国にも本来いない面子で集って、行動しようと思う」


 ――タラークにもメジェールにも存在していない、"第三勢力"

この船の中で多数存在している、どちらにも所属していない面々。タラークでもメジェールでもない、男と女の間にいる中立派。

一年間にも及ぶ旅の途中で巡り会った、数奇な運命を背負った者達。


真実を追求する新しい勢力が今、誕生しようとしていた。















<END>







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