ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」
Chapter 24 "Men and Women"
Action1 -等安-
――タラークとメジェール、両軍による包囲。
示し合わせていたとしか思えないほどに、本来敵同士であるはずの両惑星から、軍艦が続々と列挙して押し寄せている。
マグノ海賊団は、タラークとメジェール両国共通の敵。そう認識されていると見て、間違いはないだろう。
事実を肯定するかのように、事態は深刻化している。
「タラーク艦隊の後方に、メジェール艦隊を確認」
「両艦隊、共に攻撃態勢です」
「どうやら、裏がありそうだね」
アマローネとベルヴェデールの報告を受けて、海賊団頭目であるマグノ・ビバンは熟考する。
彼らが海賊である自分達を敵視する理由は分かる。両国家を脅かしてきた海賊を捕まえようとするのは当然だ。
だが、両国家が連携しているのはおかしい。共通の敵だからといって、敵の敵は味方となるほど両国家の溝は浅くない。
連携せざるを得ない理由が他にもあるのであれば、それは――
「タラーク艦隊より、通信です」
『女海賊二告グ 即時無条件降伏セヨ』
――ほぼ一方的な、降伏勧告であった。
メインブリッジクルーの間に動揺こそあれど、騒ぎ立てる様子はない。彼女達もまた、この程度の危機は乗り越えてきている。
軍事国家タラークはそもそもメジェールの敵であり、マグノ海賊団も彼らを獲物にして多くの物資を奪い取った。
今自分達が乗艦するこのニル・ヴァーナも、元々は軍船イカヅチと海賊母艦が融合した戦艦だ。
彼らからすれば期待の新造艦を奪われたのだ、目の敵にするのは無理もない。
「メジェール艦隊からも通信です。タラークの要求に従うのであれば、これより接舷して私達を回収するとの事です」
「ふむ……今は、波風立てない方がいいだろうね」
メジェールからの勧告を受けて、マグノはようやく決断した。
無論このまま大人しく捕まって、彼らが溜飲を下げてくれるなんて思っていない。事態も改善どころか悪化する危険性が大きい。
マグノ海賊団は両国家に多大な損害を与えたのだ、捕まれば本来問答無用で死刑か終身刑だ。それこそ見せしめにでもしなければ収まりがつかない。
それでも降伏することを決めたのは、やはりこの両国家の連携であった。
自分達が以前両国家に送った刈り取りに関する情報と、地球の危険性を訴えたメッセージポット。
この連携はそのメッセージを受け取ったからこその結果である可能性が、極めて高い。それでもなければ、説明がつかないのだ。
メッセージを受け取ったことへの反応であれば、少なくとも問答無用で殺されることはないだろう。
(とはいえ、このまま大人しく白旗をあげるのも癪だね。後々のために手をうっておく必要がある。
それに――あの子達の事もある)
もしも自分達だけであれば、マグノはこのまま白旗をあげていただろう。抵抗しないのであれば、現状打つべき手はないに等しい。
だが幸か不幸か、今の自分には手札がある。奇札だとも言えるが、こういった非常時には有効的な手段。
非常時に頼みとするのは申し訳なくも思うが、同時に頼もしくも感じている。きっと自分とは違う、思い切った手段に出てくれるかもしれない。
そう考えて周りを見渡すと、思い浮かべていた顔ぶれがいない。
「エズラ、ミスティの嬢ちゃんはどうしたんだい?」
「カイちゃんに呼び出されて、慌てて飛び出していきました」
「……なるほどね、バート――もいないか」
操舵席を確認すると、自動待機モードに切り替えられている。昔であれば逃げ出したと思っていたが、今は違う。
どうやらあの子達は、早速行動に出たらしい。緊急事態ではあるが、きっと悲観せずになにか考えているのだろう。
余計な危惧であったと、マグノはそっと微笑んだ。どうやら後は任せても問題ないらしい。
これで心は、決まった。
「それじゃあ後は、あの坊や達に任せるとしようかね」
<Chapter 24 "Men and Women" 開幕>
|
小説を読んでいただいてありがとうございました。
感想やご意見などを頂けると、とても嬉しいです。
メールアドレスをお書き下されば、必ずお返事したいと思います。
[ NEXT ]
[ BACK ]
[ INDEX ] |
Powered by FormMailer.