ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」
Chapter 23 "Motherland"
Action22 -終演-
ミスティ本人は大いに渋ったが、カイ達に無理やり連れられてクリスマスパーティ会場へ案内される。
その強引さにメイアも苦笑しているが、本人には必要な事だからと反対はしなかった。
パーティ会場へ到着すると、待っていたかのように海賊達が歓迎の拍手をする。半ば茶化した状態ではあるが、皆に笑顔で迎えられるとミスティは何も言えなかった。
「知らない星で暮らすのは不安かもしれないけど、どんな時でもディータ達がついているから」
――ディータ達が悪い人達ではないことくらい、分かっていた。だからこそ、彼女達と喜びを分かち合えないのが辛かったのだ。
目の前に見えてきている惑星メジェールは、自分の故郷ではない。彼女達の故郷であり、自分の居場所ではないのだ。
否定的な気持ちではない。彼女達が無事に辿り着いたことは、祝福している。これは単純に、気持ちが追いつかないのだ。
どうしたって、異星であることを感じさせられる。自分が異星人であることを、痛感させられる。
「ミスティは、一人ぼっちじゃないよ」
「ディータ……」
だからこそ、なのだろうか――ディータ・リーベライはあろうことか、感動を押し付けていた。
ミスティにも喜んでもらおうと、必死になって笑顔を向けている。決して一人ではないのだと、善意をグイグイ押し付けてくる。
頭が痛くなった。何でバカな子なんだろう、人の気持ちを思い遣る気はないのだろうか。きっと、ないのだろう。
何故ならディータという子は、ミスティという少女を友達と思っているから。
「向こうに着いたら、部屋は一緒でいいよね。いっぱい、見せたいものがあるんだ!」
そして、ミスティ・コーンウェルは観念した。無理だ、このおバカな子は絶対に自分を一人にはしない。
果てしなくバカバカしくなり、ミスティは長く溜息を吐いた。悩んでいたのがアホらしくなる、精霊の試練は何だったんだ。
この子にかかれば、どんな人生も楽しくなるのだろう。とても賑やかで、毎日悩まずに生きていけるのだろう。
誰の故郷だとか、全く全然関係ないのだ――ミスティは、もうどうでもよくなった。
「海賊の仲間になる気、ないんだけど」
「大丈夫、ディータ達は皆ヒーローになるから!」
「えっ、初耳なんだけど!?」
何の前触れもなく自分の理想を余裕で語るディータにミスティどころか、話を微笑ましく聞いていたカイ達まで仰け反った。
ディータなりに将来を考えていたという事実は衝撃的で、クリスマスパーティ会場がサプライズで大盛りあがりする。
良い方向か、悪い方向か、別にして。
「待てディータ、ヒーローチームとはどういうことだ」
「だって宇宙人さんもミスティも海賊は嫌だと言ってるよ、リーダー」
「ミスティはともかくカイは出会った頃からずっと言い続けているではないか、何を今更」
「えっ、リーダーはこれからも海賊するんですか? 宇宙人さんに怒られるのに」
「むっ……」
「ちょっとメイア、そこで困らないでほしいんだけど!?」
「バーネットはまた宇宙人さんと喧嘩するの?」
「いや、それは……」
「何で聞かれると困るのよ、あんたら!」
ディータに純真に詰め寄られると、揃いも揃って黙りこくってしまう。純粋無垢な爆弾攻撃に、全員が鎮圧されていた。
ディータの言っていることは、ある種の真実をついている。カイやミスティが海賊を反対する以上、いずれ人生は分岐してしまう。
そして生き方に反しているのであれば、ぶつかり合うことだってありえる。少なくともカイはメイア達が仲間であっても、略奪行為を阻止しようとするだろう。
そもそもまだ海賊家業を続けるのか問われると、皆としても困ってしまう。
「ディータ・リーベライ、彼女は純粋であるがゆえに無慈悲だな」
「ドゥエロはこれからどうするんだ。故郷に戻るのか、あいつらについていくのか」
「退屈だった人生に戻るつもりは毛頭ないが、自分のこれからの人生は君たちにかかっている」
「俺達?」
「バートと、君だ。私は君達が好きだ、幸せになってもらいたいと思っている。だから共に、夢を語りたい」
「……そんな事を言う奴だっけ、お前」
「私はいつも自分には正直に生きている」
「言われてみれば、たしかに」
カイとドゥエロ、お互いに笑い合う。ドゥエロの言葉は半分本当で、半分ウソだ。
ここまで素直に言えたのはきっと、ディータの純真な言葉を聞いたからだ。友達と一緒に生きていきたいという本心が、ドゥエロに響いた。
生まれて始めて出来た友達、カイやバートが彼は大好きだった。彼らとともに歩む人生はきっと、楽しいだろう。
「だから、聞きたい。君やバートはこれからどうするんだ。君は特にタラークへ戻り辛いだろう、私でよければ口を利くぞ」
「そうだな……ツバサの事もあるけど、タラークにいる親父にも顔を出しておきたいし……あれ、バートはどうしたんだ」
「ああ、彼ならこのクリスマスパーティでサンタクロースになる為に――」
「た、たいへんだーーーー!!」
――クリスマスパーティ会場に響き渡る、バート・ガルサスの絶叫。
この悲鳴が、終わりの始まりを告げる。
<END>
|
小説を読んでいただいてありがとうございました。
感想やご意見などを頂けると、とても嬉しいです。
メールアドレスをお書き下されば、必ずお返事したいと思います。
[ NEXT ]
[ BACK ]
[ INDEX ] |
Powered by FormMailer.