ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」
Chapter 23 "Motherland"
Action20 -見時-
「やっほー、カイ」
「無事に任務を果たせたようだな」
「パルフェにドゥエロ、二人揃っているのか」
ディータと話しているカイに、パルフェとドゥエロの二人が声を掛ける.
労いの挨拶と、労りの籠もった言葉。磁気嵐を突破したカイに対して、惜しみない賞賛と経緯を向けてくる。
男女の垣根はなく、友情に満ちた関係。男と女の惑星へと辿り着いたその時に、友人関係は成熟したといえるかも知れない。
階級差もなく、皆揃って笑顔を向けあった。
「私も滞りなく仕事を終えたので、こうして足を運んでいる」
「そんなドクターを誘って今、パーティを楽しんでいるところだよ」
「仕事第一なお前らが、随分と変わったもんだな」
去年のクリスマスでは関心こそ向けていたが、職務があれば即座にそちらへと向かっていただろう。
今年はむしろ職務を早く片付けて、このクリスマスパーティへ足を運んできたようだ。
無論、職務も彼らにとっては大切である。だが少なくとも今この時だけは、仲間と故郷へたどり着けたことを第一とする。
喜びを分かち合うことが、人生において何より大切としていた。
「君こそ去年は不在だったではないか、カイ」
「そうそう、どこかに出撃していたよね」
「――うっ、言われてみればそうかも」
正確に言うとイベントクルーの一員として色々貢献はしていたのだが、肝心のパーティでは不在にしている場面が多かった。
あの頃はメイアも留守にしており、穴だらけの人間関係を象徴していたといえる。
一年という歳月で大きな人間関係の変化を見せたのは、彼らの努力の賜物であろう。
祝う権利は十分すぎるほどにあるといえる。
「バートの奴はどうしたんだ、何だか張り切っていたのに」
「張り切っているから、今もまだ準備中なのだろう」
「クリスマスパーティの顔役になってるようだね、彼」
仲間が勢揃いとはまだいかないが、話題に出ているだけでも進歩していた。
男同士の友情、一対一ではなく三人揃っての完成形。カイやドゥエロはきちんと分かっているので、決して忘れない。
特にバートは今回仲間たちを楽しませ、子供達を喜ばせるという大役を担っているのだ。
今回のメインはむしろ、彼にある。
「サンタクロースになるそうだね、ドクターに聞いたよ」
「子供達にプレゼントを送る存在だと認識している。心優しい老人のようだ」
「ドゥエロからそんな表現が出ることが驚きだよ、俺は」
サンタクロースに紛争して女性達のピエロ役となり、子供達のヒーロー役になるという一石二鳥の芸人ぶりである。
随分と悩んで仲間や友人とも相談し、ようやく決めた隠し芸。衣装も含めて今、必死で役作りに励んでいる最中だろう。
本人としては上手く出来るか緊張しまくっている状態なのだろうが、実際に登場すれば大盛り上がりに違いない。
本人に自覚はないが、この一年懸命にやってきたバートは仲間達から愛されていた。
「ねえねえ、宇宙人さん」
「どうした、赤髪」
「ミスティは来てないの?」
カイ達がパーティ会場を見渡すが、彼女の姿はどこにもなかった。
ディータの何気ない疑問に、全員揃って顔を見合わす。確かに彼女の存在が感じられない。
仲間はずれにされたとは思わない。何しろ彼女はイベントクルーの一員なのだ、ジャーナリストを本業としつつも協力はしていた。
だが、一方で――
「あいつの故郷は、ここじゃないからな。気後れしているのかも知れないな」
「ええっ!? でもでもミスティだって、ディータ達の仲間だよ」
「そりゃ皆そう思ってるけど、タラークとメジェールが故郷じゃないのは事実だ」
――難しい話である。仲間達として暖かく迎え入れているが、やはり垣根というのは存在する。
ミスティ本人も意地悪されているとは思っていないだろう。仲間はずれだと、彼女本人も感じてはいない。
けれど、事実は厳然として存在する。覆しようのない現実は、目の前にあるのだ。
タラークとメジェール。両惑星を目の当たりにしても、故郷だとは思えない――それは、事実なのだから。
<END>
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