ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 23 "Motherland"






Action10 -瑣事-








「どうするんだピョロ?」

「どうすると言われても――」


 メジェール・タラーク到着記念パーティー、開催決定。

イベントチーフより直々に主催を任されて、ミスティは困惑するしかなかった。

メジェールはミスティにとって、故郷でも何でも無い。マグノ達の故郷という関心は持っているが、感慨に浸るほどではない。


彼女達の故郷到着を祝えと言われても、困るのだ。


「こんな事あまり言いたくないけど、お前の故郷は遠く離れているピョロ」

「……はっきり言いなさいよ、もう何処にもないと」


 ピョロの言いたいことは分かる。彼だって気遣っているのだと、察している。

だが、気持ちを押し付けられてもやはり困惑してしまう。割り切ることなんて、出来ない。

ミスティは、自分の故郷だった冥王星に深い思い入れはない。長年コールドスリープしていて、全てが過去に置き去りになってしまった。


思い返すには、あまりにも遠い年月なのだ。


「だから、メジェールがこれからのお前の故郷だと思えばいいピョロよ。皆きっと歓迎してくれる」

「あんた、いつからそんなお節介ロボになったのよ……」


 ピョロだけではない、メイア達全員がきっと彼のように言ってくれるだろう。

メジェールへの思い入れはないが、仲間達への気持ちは十分に持っている。幾つもの修羅場を乗り越えて、仲間だと思えるようになった。

イベントの主催も言うならば、ミスティへの歓迎パーティも兼ねているのだろう。その気持ちは、本当に嬉しかった。


でも――メジェールへの愛は、なかった。


「ミスティ・コーンウェル」


 自分の名を告げられてミスティが顔を上げると、ソラが立っていた。

いつの間に現れたのか、ナビゲーションロボットのピョロでさえも目を白黒させている。

シャーリーやツバサ、一緒に来ていた子供達も度肝を抜かれていた。彼女の存在は、それほどまでに圧倒的だった。


ソラは降り立って、ミスティを崇高に見上げる。


「マスターは、精霊の試練を乗り越えました」

「精霊の、試練……一体、何の事?」

「自分が故郷と思える居場所を、作ったのです」


 ソラが告げた事実は――猛烈で、圧倒的な目眩がするほどの、嫉妬を吐き出した。

メイア達が故郷へ辿り着けたと知ったときは、何も感じなかった。仲間でも、他人事だったから。

ツバサ達が故郷を離れたと知ったときは、何も感じなかった。同類でも、他人事だったから。


カイが故郷を作ったのだと知った時は――


「……なんで」


 ――裏切られた、と思った。


浅ましいまでの、思い込みである。他の誰でもない、ミスティが痛感している。

カイが自分で故郷を作れたのは、彼がきちんと行動したからだ。ミスティの先を越そうとしたなんていう思いそのものもなかっただろう。


でも、心は決して割り切れない。


「何でそんな事、あたしに教えるのよ」

「真実を追求することが、貴女の使命」

「人の心情を気安く語らないでくれる、人間でもないくせに!」


 シャーリーやツバサがギョッと、目を見開いた。久しく聞かない、他人への強烈な悪意。

決して言い過ぎたと、ミスティは思っていない。後から振り返っても、酷い事を言ったと後悔もしないだろう。

ソラがミスティへ告げた真実は、ミスティが傷つくと確信しての通告だった。


許せるはずが、なかった。


「人である貴女に、人の先へと辿り着けますか」

「だったら、あたしを試してみなさいよ――そのために、ここへ来たんでしょう。

受けてやるわよ、精霊の試練!」


 それはつまり――精霊との対話を目指す、試練。

カイにはココペリ達が居た、だからこそ精霊の真実を知って先へと進められた。

ミスティは、すでに精霊への認識は済ませている。ゆえにこうして、ソラと接しられている。


けれど彼女の心には、故郷がない――自分が孤独だと、思い込んでいる。























<END>







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