ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」
Chapter 23 "Motherland"
Action11 -児野-
「男と女が赤ちゃんを生む事を、どう思う?」
「何だよ、当然」
カイとジュラ、二人のヴァンドレッド・ジュラが磁気嵐の攻略を進めていき時間が経過する。
仲間達のサポートもあって、カイたちは順調に攻略を進めている。被害も軽度、修繕一つで足りる形だ。
操縦にも慣れてくると、さほど集中する必要もなくなる。欠かしていいことではないにしろ、過度になりすぎる必要もない。
少なくとも、会話するくらいの余裕はできつつあった。
「地球だと、男と女が夫婦となって赤ちゃんを作るんでしょう」
「男と女が家庭を持つ環境だったそうだからな」
「ジュラが女で、あんたが男よね」
「作れるのかどうかという話をしたいのか、お前」
具体的に迫ろうとしていつつも、少し煮え切らないジュラの質問。
カイは要点を問い質しつつも、ジュラの聞きたいことは何となくでも察していた。
聞かれたところで応えようがない質問ではあるのだが、本人なりに考えてはいるらしい。
カイは操縦する手を止めず、考えてみる。
「作ろうと思えば作れるだろうけど、相手によるだろう」
「ジュラがあんたの子供を生んであげるとしたらどう?」
「俺とお前が夫婦になるということだぞ」
「そ、それもそうよね……」
「その点は照れるのかよ、基準が分からん」
赤ん坊を作ることには意欲的なのに、夫婦となると分かると顔を赤らめるジュラ。
メジェールにもファーマとオーマという夫婦形態があるが、両方女で成立している。
しかし地球の形態で言えば、夫は男であり、妻は女である。それを当たり前と言えないのが、タラークとメジェール。
それでも想像は出来るのか、ジュラは羞恥を見せている。
「そもそも子供を作るのだから、俺とお前が親になるだろう」
「うーん、そうなんだけど……もういいわ、そういう意味で受け取ってもいいから聞かせてよ!」
「だから、何を?」
「ジュラと子供を作る気があるのか、ないのか」
「け、結構すごいことを聞くよな、お前……」
カイは地球生まれなので、ジュラが迫っていることへの意味には気付いている。
半ば開き直りではあるが、ジュラはカイと子供を作りたいとのだと願っている。
カイはもう女性に対する差別は一切ないので、妻を選ぶのであればまず女性を選ぶだろう。
ジュラは、カイから見ても魅力的な女性だった。
「お前への好悪は別にしても、子供を作る気は今のところないな」
「何でよ、ジュラが気に入らないっての!?」
「そもそもそんな余裕はないという話をさっきしただろう」
「それは分かっているんだけどさ……一つの目標にならないかな、と思って」
ジュラは海賊を辞めるのだと決めている。カイは故郷へ戻る気はないと決めている。
どちらも全てを捨てるということではなく、自分の人生をやり直すのだと決意したのだ。
ならばどんな針路を選ぶべきなのか、決めかねている。今を捨てて、何処へ向かうのか――
将来設計がないのである。
「二人で家庭を持って、一からやり直すのはありだと思わない?」
「何をするのか具体的にも決めてないのに、新生活は無謀じゃないか」
「優しい家庭を作れれば、二人での生活もきっと幸せになるわよ」
「子供が生まれたら、具体的に苦労するぞ」
「うっ……」
カイに明確に否定されながらも――ジュラは少しだけ、希望を持てた。
嘘っぽく言っていたが、ジュラはカイとの生活に幸福を感じられたのだ。空想であっても、楽しそうだと。
好きか嫌いかで言えば文句なく好きであり、一緒に生活しても抵抗は感じられない。
頼もしいとさえ、思っている――ただ苦労するとなると、及び腰になる。
「じゃあとりあえず、夫婦になってから考えてみようよ」
「赤ん坊を作る話から始まったのに、脱線しているじゃねえか!」
「やーん、旦那様コワーイ」
「お前と夫婦になると俺が壮絶に苦労しそうなので、嫌になってきたぞ」
ジュラは乗り気に、カイは嫌気が差してくるというまさかの将来展望。
話してみなければ分からないことではあったが、話したところで生産性があるわけでもない。
子供という存在、そして親になるという可能性――
「俺が親になったら、子供に何を継がせるのか」
未来が見えてこない人間に、子供の未来を傷付けるのか。
地球との戦いが終わるまで、この答えは出ないのかも知れなかった。
<END>
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