ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」
Chapter 22 "Singing voice of a spirit"
Action30 -本真-
――レーダー室では引き続き、メイア達によるカイ・ピュアウインドの捜索が懸命に行われていた。
小惑星群に引き込まれた可能性も考慮すると、捜索範囲は膨大になる。何しろ星雲単位で、人間一人を見つけ出さなければならないのだ。
世界規模ではなく惑星、惑星のみならず惑星群ともなると、高精度なレーダーであろうと発見するのは不可能に等しい。
不可能ではないと断言できないのは、あくまで可能性はゼロではない為。限りなくゼロに近いが、ゼロではない。
『こうなったら目には頼らず、心眼であいつの気配を追って――』
「真面目にやれ、バート」
『はい』
操舵席の中で目を閉じて当てずっぽうで探そうとするバートを、メイアが叱責する。
闇雲になる彼の気持ちは分からなくはないのだが、ヤケになっていては見つけられるものも見つけられない。
カイのSP蛮型はスーパーヴァンドレッド誕生による影響で、強化されている。大気圏突入も可能となり、頑丈さは折り紙付きだった。
だからこそ生存の可能性はあり、ゆえにこそ発見が困難となっている。宇宙空間に漂っていても生存できる分、何処にいても助かる可能性が出てくるからだ。
「あいつのことだから、何処かの惑星に流れ着いている可能性もあるんじゃないの?」
「ミッションで手に入れた情報か。カイが立ち寄ると言っていた惑星なら、人が住んでいる可能性も高いな。ただ――」
「磁気嵐の影響が強いので、地表面まで追えないんですよね……宇宙人さんがそこにいればいいんですけど」
ジュラの指摘にはメイアも賛同しているが、リーダー的観点としてディータと同じ難題に気付いている。
カイが目指していた惑星には人が住んでいるという情報があるが、強い磁気嵐の影響を受けている惑星でもあった。
惑星の座標はミッションのボスであるリズより情報提供を受けているが、惑星内部のデータは地場の妨害を受けてしまって分析が行えない。
流石に何の確証もなく、飛び込む訳にはいかなかった。
『そもそも惑星の人達への交渉も、カイが行う手筈だったからね』
「ラバットの紹介もあったからな、あの男が先頭に立てばスムーズに事が運べていた」
「その本人が遭難していたら、世話がないわ」
カイ本人より事情を聞かされていたバートが嘆息し、同じく聞いていたメイアも同意するしかない。
バーネットも呆れているが、本人を責めるつもりはなかった。過失ならともかく、完全な事故だ。どうしようもなかった。
せめてなにか手掛かりでもあればいいのだが、これといった確証がない。結局、捜索するしかなかった。
――この場にいる全員、死んだとは夢にも思っていない。
楽観的になっているわけでも、希望を追っているのではない。極めて現実的に、カイは生きているのだと確信している。
相当な事故、かなりの窮地なのだが、それで死ぬような男ではない。どんな絶望的状況に陥っても、カイは打開してきたのだ。
揺るぎない信頼は、彼らの想いの強さを証明していた。
"――!?"
それは、"声"だった。聞こえるはずのない、"声"。言葉ではなく、想いが伝わった。
話していた皆の声が、途絶える。言葉など邪魔だと言わんばかりに、皆が耳を澄ませていた。
この時――カイは、精霊と邂逅した。
彼らは既に、資格を持っていた。精霊の声に耳を傾けられる、器。心の広さを、十分に持っていた。
その心の余裕は、絶望していれば決して無かっただろう。彼らに優しき心の器を与えたのは、カイだった。
笑い話だった。精霊の試練を受けたカイが誰よりも開花に手間取り、試練を受けずとも彼女達は"声"を聞き取ることが出来た。
奇跡では、無い。人と人との繋がりが生み出した、力であった。
「カイは、あの惑星にいる」
『ああ、間違いない。僕達も行こう、あいつがきっと待っている!』
こうして役者は揃い――試練は今、果たされようとしていた。
<to be continued>
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