ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」
Chapter 22 "Singing voice of a spirit"
Action3 -眞言-
――戦いが、始まった。
予想通りと言うべきか、敵が待ち構えていた。磁気嵐が発生する岩石地帯に身を潜めて、虎視眈々とマグノ海賊団を狙っていたのである。
潜んでいると確信していれば、事前にレーダーによる観測が容易く行える。ブリッジクルー総員で敵影を洗い出し、敵情報を分析していた。
案外敵も、磁気嵐を起こす手段を持っていたのかもしれない。カイ達が通るタイミングで磁気嵐が都合良く発生するかどうか、神頼みをする連中ではない。
結局のところ、憶測でしかない――磁気嵐は、カイ達が起こしたのだから。
「プラズマ変換装置、完璧に機能してくれたな。急だった製造依頼を引き受けてくれて、ありがとうよ」
『ペークシスちゃんはそもそもエネルギー変換を行えるからね。この子が協力的だったので、本当に助かったよ。
――ただそれでも日数が限られていたから徹夜作業だったけどね、あはは』
『……うう、眠い、眠すぎる……まったくここぞとばかりに、儂をこき使いおってからに』
「俺の専属エンジニアとなったんだから覚悟しておいてくれ、アイ」
機関士のパルフェとSP蛮型専用技師であるアイ、二人の天才の手によって短期間でプラズマ変換装置が完成した。
ソラやユメの立ち会いで試運転も見事に成功して、本番に望むことが出来た。磁気嵐の誘発が、見事に成功したのである。
磁気嵐を誘発させるには、コロナ放出に匹敵するプラズマエネルギーが必須。ペークシスの運用によって、その試みは成功したと言える。
敵側にとっては突如発生した磁気嵐、磁気の強さも敵の想定を上回っており、隠れ潜む余裕もなく炙り出される。
「作戦を、決行する。磁気嵐が発生する戦場の指揮は、この機体より行う――行くぞ、みんな!」
『人機合体、スーパーヴァンドレッド!』
人と人外、そして機械。あらゆる全てを飲み込んで吸収し、合体せしめた究極の兵器。激戦の果てに進化した機体が今、再び誕生する。
巨いなる翼を持った、剛き人。紅と蒼の光翼が、磁気嵐の中で燦然と輝いている。磁気嵐の強力な磁場にも、まるで怯んでいない。
この二枚の光翼がスーパーヴァンドレッドを機能する莫大なエネルギーを安定出力させており、無類のエネルギーを発揮する器官となっている。
当初はヴァンドレッド・メイアの予定だったが、指揮艦ともなればこの機体こそ相応しいと全員が進言したのである。
「主要メンバーが一堂に会するのはどうかと思っているんだがな、俺としては」
「指揮官クラスがチーム別に対処する戦術も考えたが、長期戦になるのは避けられない。消耗戦を強いられると、こちらが不利になってしまう。
だったらこのスーパーヴァンドレッドを指揮艦として、全軍による総攻撃を行った方が効果的だ」
「皆集まっていますけど、役割はそれぞれ違いますもんね。ディータは、チームに指示を出します!」
「ジュラは、このスーパーヴァンドレッドの機体運用維持。チマチマした作業は好きじゃないんだけどね」
「私がサポートするから大丈夫よ、ジュラ。細かい作業は、任せて」
スーパーヴァンドレッドはカイ達にとって最大の切り札であり、この戦いにおける司令塔であった。
このスーパーヴァンドレッドはあの偽ニル・ヴァーナさえも無傷で撃破した最強の機体だが、本作戦における役割は異なっている。
戦力ではなく機能、人機合体した事で備わったハイスペックを、最大限有効活用するつもりなのだ。
最強の機体ということで戦力に目が行きがちだが、スーパーヴァンドレッドは母艦さえ凌駕する機体ポテンシャルを秘めている。
大気圏での戦闘が可能なのはカイのSP蛮型も同じだが、スーパーヴァンドレッドはあらゆる環境時における適応機能を有している。
磁気嵐の中であろうと通常運行は可能で、強い磁気に晒されてもビクともしない。凄まじいプラズマでも変換出来るペークシスの有効性があった。
その上ヴァンドレッド・ジュラを超える頑強性と、ヴァンドレッド・ディータを凌駕する火力まであるとなれば、単なる一機体に留まらない。
すなわちこのスーパーヴァンドレッド本体そのものが、要塞なのである。
「私はこのスーパーヴァンドレッドの機体性能をフル活用して、戦場全体の分析と把握を行う係。現場取材は任せてよ!」
「ミスティ一人じゃ大変だろうから、アタシも手伝ってやるよ。危険な仕事は大得意さ」
張り切るミスティに、ガスコーニュが景気良く申し出る。異星人という特殊な立場ではあるが、ジャーナリストとなったミスティの行動力は評価されている。
『私はマスターの命令通り、スーパーヴァンドレッドとニル・ヴァーナのリンクを行います。ペークシス・プラグマとの調整もお任せ下さい』
『ユメはソラに協力してもらって、あの金髪人間と一緒に雑魚共を殺しまくる係。あいつと一緒にますたぁーの敵を撃ちまくってやるからね』
ソラとユメの関係について今までユメが一方的に突っかかって来た感じではあったが、目的が同じであれば二人の協力体制はこれ以上ないほど頼もしい。
「そして俺は青髪と一緒に、このスーパーヴァンドレッドで敵主力の撃破と味方の警護だな」
「一体化したピョロのサポートがあれば、磁気嵐の中でも敵影を補足できるからな。頼んだぞ、ピョロ」
『合点承知だピョロ!』
カイとメイアのコンビも、他のどのチームにも負けていない。彼らの戦略として、敵はスーパーヴァンドレッドに注目して戦力を集中する。こちらの最大の戦力とあれば、当然である。
そして敵が包囲網を仕掛けてくるのであれば、磁気嵐の中で敵の位置をわざわざ補足する必要はない。こちらへ集まって来てくれるのだから。
集中砲火を浴びせられるが、無人兵器の攻撃程度では傷一つつかない。加えて磁気が荒れ狂っているので、敵は通常の攻撃力を発揮できない。
カイ達がそれぞれの役割を持って分担しても、全く問題はないのだ。わざわざ出向いて、戦う必要性もない。
ただ黙って立っているだけで、スーパーヴァンドレッドは切り札となりえるのだから。
『スーパーヴァンドレッドの重要性は理解している。だが、敵に知られてしまう。出来れば――』
「言いたいことはよく分かる。故郷での決戦で用いれば、これ以上ない切り札となっていただろう。
下手に見せるといちいち真似てくるからな、あの連中は。
俺もその辺は懸念していたんだが、どうやら心配はないらしい」
『どういう事だ、カイ?』
『私達がスーパーヴァンドレッドを構成するピースとなりましたので、地球に模倣することは不可能です』
『パクってみせたところで、ユメとソラを作り出すのは無理なの。だって、オリジナルだもん』
『オリジナル……?』
今までヴァンドレッドシリーズは全て、敵が模倣してみせた。先日に至っては、ニル・ヴァーナさえも作り出したのだ。
なのにスーパーヴァンドレッドだけは不可能であると、二人は断言してみせる。ゆえにどうしても、気になってしまう。
この二人は何者なのか――その正体は、明らかとなるのか。
<to be continued>
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