VANDREAD連載「Eternal Advance」



Chapter 1 −First encounter−



Action3 −始まり−




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−メジェール星−



男のみが支配する星タラークを衛星とする巨大な惑星――

人類が適応する環境の水準を満たしておらず、古より住みよい環境を目指し開発された惑星である。

科学力、そして資源を利用した上で更なる発展をおし進めてきた。

しかしタラーク同様に地表は充分な開発が行われておらず、地表における人類の生存圏はまだまだ少ない。

現在も一部を除いてはかつての植民時代の宇宙船団を生活区域としており、いわば船団国家を形成している。

国家形態は『グラン・マ』と呼ばれる一個人を中心とした中央政権を築いており、国民より一身に敬愛されている。

一個人を象徴とする国家体制はタラークと変わらないが、メジェールは文化面に優れた国家として今日を生きている・・・・















そして、何より特筆すべきなのは・・・・・・




















メジェールは女性しか存在しない星である―――




































 煌く銀河の中で青白く輝く惑星メジェールの外周に添うように、数多くの微惑星が取り囲んでいる。

大小様々な微惑星は数が多い上に密度が高く、全てを探索する事は不可能といっていいだろう。





その中で――――ひときわ大きなある一つの微惑星がある。






その星が『マグノ・ビバン』率いる女海賊団の基地である事は・・・・・・







メジェール国家でさえ知らない事実だった・・・・・・・・


















『マグノ班の皆さん、お仕事の時間です。すみやかに乗船して下さい。
クルーは準備を整えて、出港モードへと移行して下さい』










基地内に涼やかな声色を伴った放送が流れ、基地内の赤鐘のランプが煌々と点滅する。

放送を耳にしたクルー達はそれぞれに行動を開始し、全ての支度を手早く整えていく。

クルー達の動きには一糸の乱れもなく、着々と用意が進められた。

そして母船とドレッド、その全てが発進可能にセット完了され、クルーは基地内の集合ポイントに集う―――










「今回は周辺のパトロールが主な任務だ。
男達に大きな動きがある事が現在明らかになっているが、事態としては考慮すべき程もないと見ている」










ポイントに集められたクルーは女性ばかりで、年齢的に十代・二十代の年齢層が殆どだった。

そしてクルー達の前で一人の女性が悠然と立ち、モニターによる今回の任務内容を説明している。

蒼い髪を短く揃えたその女性は厳格と表現できる冷静さをその美貌に秘めており、左目には頭を縁取るように髪飾りをつけていた。

海賊内においてチーフパイロットを担当する『メイア・ギズボーン』その人である。


「よって・・・・メイアチームを三つに分けて、それぞれのチームに新入りを振り分けたいと思う」


メイアの説明に、聞いていたクルー内に動揺が走る。

それまで何の問題もなく前線で活躍していたチームのフォーメーションに、新しい要素を取り入れようというのだ。

周辺のパトロールという通常任務であれ、クルー内に不安が出るのは当然だろう。

その雰囲気を知ってか知らずか、メイアは淡々と説明を続ける。


「ジュラ、バーネットが各チームリーダーとなり、新入りを教育・指揮してくれ」

「ええーー!?」


並んでいるクルーの前列に立っていた二人の女性が、メイアの言葉に反応する。

一人は黒髪を短くまとめ、勝ち気な顔つきをしているスポーティーな女性―――

もう一人はモデル並みのスタイルに腰まで届く麗しい金髪、そして妖艶な雰囲気を持つ美女だった。

二人は常に共に行動しており、現在も隣同士で隊列前に加わっている。


「新入りが入ってくるのかぁ・・・面倒のかからない娘だといいんだけど」


少し悩みを含んだ表情で、黒髪の女性−バーネット・オランジェロ−は呟いた。

逆に、もう一人の金髪の女性−ジュラ・ベーシル・エルデン−は心持ち気軽に構えていた。


「大丈夫よ。ジュラは日頃の行ないがいいから、きっと役に立つ娘に巡り会えるわ」

「あんたはそれでいいかもしれないけどね・・・・」


ジュラの楽観的な言い方には慣れているのか、バーネットは嘆息して返答した。

互いに呼吸が合ういいコンビである。

そんな二人に続く形で、メイアは手元のパネルを操作する。

「では、配属される新人名を呼び上げる。ジュラチームには――」


メイアが名を呼び上げる度に、張りのいい返事が響く。

クルー全員まで届くその声はどれほどこの海賊団の統制が取れているか、そしてチームをまとめるメイアの信頼があるかが分かる。

そしてジュラチーム、バーネットチームの新入り名が呼び終わり、メイアチームの呼び上げとなった。


「メイアチームにはミシェール、ディータ」


ミシェールと呼ばれた女性はすぐに返答があったものの、ディータと呼ばれた者の返事はなかった。

これまで淀みなく返答があった反動もあってか、メイアは整った眉を潜める。


「ディータ・・・・?ディータ・リーベライ、いないのか!」


何度も呼びかけるものの返答は全くなく、メイアは集まっているクルー達を隅から隅まで見渡した。

クルー達も小さなどよめきが起こり、次第に波紋が広がっていく。

そんなざわつき始めた気配の中、クルー達の中央付近より一本の白い手が挙がる。






「はい、は〜い!!ここにいます〜!」






中央付近より集まっている女性達の間を無理矢理かき分けて、一人の少女が飛び出してくる。

慌ててきたのか額にうっすらと汗をかき、少し恥ずかしそうにほんのりと頬を染めている。

メイアの視線上に入った少女は、不器用に敬礼をして言った。


「ディータ・リーベライ、参上しました!」


思春期特有の好奇心を宿した大きな瞳に、純粋な顔つきをしている赤い髪の女性。

彼女が海賊団のパイロットでありながらも、まだ新人である−ディータ・リーベライ−だった。

そんなディータに、メイアの厳しい視線が突き刺さる。


「訓練とはいえ油断はするな!これは遊びではない!」


任務には特に厳しいメイアにとって、ディータの疎かな行動には我慢ならなかったのだろう。

ディータは厳しい叱責に小さく首を縮める。


「ご、ごめんなさいぃ〜・・・・・」


俯く彼女の姿を、前列に並ぶバーベットとジュラが振り返って見つめる。

彼女達の表情には、ディータへの批判と侮蔑が混じっていた。


「やだあの娘、有名なUFOオタクじゃない〜」

「いつも星ばかり眺めている娘よ。本当にあんなのが役に立つの・・・・?」


彼女達の言う通りである。

ディータという娘はUFOという幻想的なイメージのある存在を信じ、宇宙人との迎合を果たしたいと本気で夢見ている女の子だった。

何でも信じやすく、さらにマイペースな彼女は良くも悪くも周囲より浮いた存在。

バーネットやジュラにとっては、彼女に悪い印象を持ってしまったのだろう。

だがディ−タは周囲の困惑にめげる事なく、明るい笑顔を浮かべた。


「ディータ、今回の任務も頑張ります!」


今度は先程よりやや勢いのある敬礼をして、彼女は少し控えめに胸を張る。

天真爛漫な彼女に、メイアは小さくため息を吐いた。
















「うっひゃあ〜〜!!さすがに広いよな、戦艦ともなると・・・・」


激しい蒸気と機関部より立ち上る激しい轟音に包まれた大規模な宇宙戦艦『イカヅチ』。

記念式典にむけて着々と準備がなされているその艦内を、カイとアレイクは歩いていた。


「メジェールとの大規模な戦闘を考慮した戦艦だからね。
兵器類も機関類も滞りない様に、各人員が万全の態勢で着々と改良をされていったんだ。
数百名の乗員と新兵器を収納できる程のスペースがあるんだよ」


アレイクは艦内を歩きながら、カイに一つ一つ丁寧に説明していった。


「で、実際に俺は何をしたらいいんだ?」


背中に背負ったリュックを抱え直して、カイは若干の身長差があるアレイクを見上げる。


「今回に関しては緊急要員として、私が直接君を動員した形になっている。
カイ君には格納庫の整理と訓練生達の部屋の支度、未収容スペースの整理補佐をやってもらおう」

「うーん・・・・それって要するに雑用って事だろう」


やや不満気に、カイは口を尖らせる。

自分としては、もっと派手に活躍が出来る仕事がやりたいのだ。

ましてや、朗々と聳え立つ戦艦の姿を真っ正面で見た後である。

男としての血が騒ぐのも無理はないかもしれない。

そしてそんな彼の不満を予想していたアレイクは、苦笑気味に彼の肩を叩く。


「仕方がないよ。さすがに親友の息子とはいえ、君が三等民である事には変わらない。
今回の緊急の動員も相当無茶をしてやっとの事なんだ。
すまないが、その辺を理解してくれると嬉しいな」


確かに階級制度が厳しいタラークにおいて、戦艦に乗員できる三等民はそうはいない。

下っ端であるとはいえ、今回の処女航海に同伴させてもらえるだけでも幸運といわなければいけない。


「ち、分かったよ。ちゃんと言われた仕事はこなす」

「結構。では君が乗船するにあたって、これを君に渡しておこう」


アレイクは胸元のポケットから一枚の銀色のカードを取り出し、カイに手渡した。

カイはカードを受け取ると、しげしげとそのカードを見つめる。


「これはIDカードか?」

「そうだ。 戦艦内の各部署の警戒や機密漏洩に備えて、格納庫や乗員の部屋・未知収容スペースの全てにセキュリティシステムが施されている。
だから、乗員にはそのカードが必要となるんだ」

「へえ、じゃあこれがあればそのセキュリティが解除される訳だな!」


期待と希望を目に爛々と輝かせて聞くが、アレイクは一蹴した。


「さすがにそこまで万能のキーではないよ。あくまでも君の身元照会の為だ。
もし乗組員や上司に身元を聞かれた場合に、僕の名前かそのカードを差し出すんだ」


特にカイの場合は、記憶喪失の身元不明者である。

軍事国家のタラークにおいて、きちんとした身分のない者は厳しい尋問と調査が待っている。

もし彼が下手な行動を起こせば独房入りとなるだろう。


「分かった、カードはきちんとぶら下げておく事にするよ」


カイは首に金色の小さな鎖を巻いてカードをぶら下げる。

胸元にカードが収まる形となり、カイに似合うデザインとなった。


「仕事の細かい内容については、その仕事場に行けば分かるんだな」

「ああ、各主任に話を通している。彼等の指示に従って動いてくれ。
それとくれぐれも言っておくが、勝手な行動をしない様にね。
今回の式典には皆、ピリピリしているから」

「そんなに釘をささなくても分かってるって。俺は常にポリシーを持って行動しているぜ」

「うーん・・・・・」

「なんだなんだ、その妙に不安そうな顔は!?俺が何かしそうだと思ってるのか!?」


どこか不安にしているアレイクが気に障ったのか、カイは不貞腐れた顔をする。


「君を疑っている訳ではないんだけどね。君はマーカスの息子だから・・・・」


よく分からない理屈だったが、カイには何となく理解だった様だ。


「あんな道楽で仕事をしている親父と比較するなよ!」

「はは、君はマーカスにそっくりだよ・・・・さて、そろそろ私は失礼させてもらうよ。
式典開始にあたって、閣下の演説が始まるからね。
警備班を指揮する立場として、そろそろ持ち場に行かないといけないんだ」

「ちょっと附に落ちないけど、しっかりと頑張ってこいよ・・・・っと、ちょっと待て。
式典開始後はおっさんは色々とやる事があるんだろう。
仕事場の案内役とかいないと、俺はどこで何をしたらいいのかわからないんだけど」


カイの意見はもっともだった。

全長1000メートルを越える戦艦内は、知らない者にしてみれば迷路と変わらない作りになっている。

下手に迷子になって、立ち入り禁止区域に入ったりすれば目もあてられない。


「おっと、そうだった。今日の君のサポート役を務めてくれる者を紹介しよう。
比式六号、こっちに来い!」

「ピピ、リョウカイ」

「な、なんだこりゃあ!?」


艦内の廊下をするするとカイの元へ、小型の情報ユニットが近づいてくる。

その姿は卵を連想させる水晶型の形をしていた。


「ははは、驚いたかい。こいつがカイ君を手助けしてくれるナビゲーションロボだ」

「ロ、ロボットなのか、これ・・・・」


今までに見た事がない形と造りに、カイは困惑した表情を浮かべた・・・・












・・・・・こうして男と女の運命の一日が始まろうとしていた・・・・・・





















<First encounter その4に続く>

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