とらいあんぐるハート3 To a you side 第十三楽章 村のロメオとジュリエット 百一話
フィアッセの母親、ティオレ・クリステラの来日。
極秘とは聞かされていたが、当日に至るまで一切マスメディア関係より放映されなかった。噂の影一つもない。
その代わりというのも変だが、クリステラソングスクールのチャリティーコンサート開催は大々的に喧伝された。世界的に有名な歌姫達が参加するコンサートなだけに、注目度は高い。
世界ツアーとして発表されて、世界は大歓喜。チャリティー目的とあって、世界は称賛の嵐。暗いニュースが多い昨今、実に世界を明るく照らし出す話題となった。
世間が賑わう中で当日、静かな朝を迎える。
「飛行機は予定通り到着。ティオレさんを載せた車が海鳴へ向かっているわ」
「空港を襲うほど馬鹿じゃなかったか」
「情報管理は徹底されているし、今日の来日は関係者の中でもごく一部しか知らされていない。
爆破テロ事件以後組織構造も見直され、アルバート議員主導の下で対テロ対策が徹底されている。その成果が今日出たという訳ね」
フィアッセが住むマンションの一室。俺達は今日ここから活動を始める。
フィアッセのお袋さんが来日する際空港まで出迎える必要があるのかと思ったが、むしろ相手側からフィアッセの護衛に回るように申し出があった。
同時に夜の一族からも今日の任務にあたって、海鳴から出ないように言及されている。フィアッセも俺も、お袋さん同様かそれ以上にターゲットとされているらしい。
来日が万が一バレていれば空港の襲撃もあり得たらしいが、何事もなく飛行機は降りて車へ乗り込めたらしい。俺としては空港を襲撃するというテロリズムからしてすごいのだが。
「では前もって決めたスケジュールを説明するわね。
ティオレさんを載せた車が海鳴へ到着次第、こちらへ一報。安全確認を行って、マンションへ出迎えに来る」
「事前に何度も確認したけど、本当にフィアッセがいるマンションへ直接来てもいいのか」
「大丈夫。マンションへ来るまでのルートで炙り出しが終わっているから」
「その発想が恐ろしいんだよな……」
フィアッセが居るマンションに来賓を載せた車が出入りするのは目立つのではないかと詮索したが、警備陣営が心配ないと太鼓判を押している。
どういうやり方なのか分からないが、エリスの警備会社が定めたルートを走っていれば、備考や襲撃の気配があった場合察知できるらしい。コンサート前からマフィアの炙り出しが行えるようだ。
爆破テロ事件は未然に防げたが、主犯達の捜査は芳しくはなかった。戦力は削げたが、肝心の主犯は雲隠れしてしまったらしい。
むしろ裏社会はここぞとばかりに動き出しているようで、情勢としては油断ならないらしい。
「フィアッセさんとティオレさんが再開した後、喫茶翠屋でランチ。親子水入らずで楽しんでもらう予定よ」
「リョウスケの発案なんだよね、気を利かせてくれてありがとう。私から正式に紹介するね」
「水入らずだと何度も言っているだろう!?」
どうせ昼飯を食うのなら娘の職場で食べればいいと推したのは確かに俺だが、採用されるどころか俺の同席まで求められてしまった。何故だ。
何が悲しくて護衛対象と、その母親と一緒に喫茶店で飯を食わなければならないのか。何ならお袋さんだって重要人物であり、護衛対象だ。
俺の提案は思いっきり拡大解釈されて、エリスからアルバート議員、そしてお袋さんにまで伝わって、是非にと頼み込まれてしまった。
フィアッセの母ちゃんと何話せばいいんだ、おい。
「その後、翠屋から桃子さんも同行してお墓参りね。準備は事前にできているから、そのまま直行できるわ」
「静かな場所で襲撃がこないことを祈るしかないな」
「すずかも警護チーム側で同行するし、ディアーチェも空から監視するから大丈夫よ」
「そうか、二人とも頼んだぞ」
「お任せ下さい、剣士さん」
「任せておけ、父よ。ディードは稽古と静養、オットーは街全体の警戒にあたっている以上、我が適任であろうよ」
妹さんこと月村すずかは今日、俺とは同行しない。正確に言えばフィアッセやお袋さんと同行する俺の警護チームに回っている。
ややこしい配置となるがクリステラ親子は俺とエリスの警備会社が担当し、護衛する俺の警護を妹さんやディアーチェ達、そして御剣 いづみ達警護チームが担当する。
カレン達は俺が来日の件を伝えるかどうか悩んでいる間も与えず、既に掴んでいて警護チームに命じていた。
来日は極秘だったので俺も下手に報告するわけには行かなかったのである意味良かったのだが、既に掴んでいるというのが恐ろしい。
「その後はフィアッセの友人達の紹介と、観光を兼ねた交流ね。あまり堂々とは出来ないけど、目立たない限りで良い場所は選出しているわ」
「うむ。フィリスやシェリー、リスティには既に伝えている。それに」
「……なんでアタシまで同行しないといけないんですか」
作戦会議の場に朝早くから呼び出されたシルバーレイは、美貌を超不機嫌に染めている。
フィアッセ本人の希望もあったが、さしあたって今日戦力の一人として俺もお願いしておいた。
当然本人は嫌がっていて拒否られたのだが、そこを何とかとお願いして渋々ながら承諾させてやった。
今もまだ納得行かないのか、口を尖らせて俺を見やる。
「お前の超能力が頼りになるかもしれない、頼んだぞ」
「一応組織からまだ追われているので目立ちたくないんですけど」
「フィアッセの親父さんは議員をやっているし、母親も著名人だ。
今の内に顔を売っておけば、この先自由を手に入れる近道になるかもしれないぞ」
「……まあ、そういう事なら」
と、いう取引をしておいたのである。
テロ組織を裏切ったこいつは今のところ保護観察にあるのだが、クローン兵士かつHGS患者というのが立場を微妙にしている。
完全に組織に利用された兵士なので犯罪者として扱われることはないが、さりとて野放しには出来ないという人材。
立場を確立させていくには、実績が必要となる。
「夜は高町家に行き、友好を温める食事会を開催。その後はホテルといった流れね」
「エリスや親父さんからも承諾を得ているし、スケジュールは問題無さそうだな」
「あたしはここから後方支援を行うから、常に連絡を取れるようにしておいてね」
ティオレ・クリステラが既に来日している以上、賽は振られている。
どのような目が出るか分からないが、せめて悲惨なことにならないように祈るばかりだ。
剣をすぐに呼び出せるようにしておいて、俺達は行動に出る。
<続く>
|
小説を読んでいただいてありがとうございました。
感想やご意見などを頂けるととても嬉しいです。
メールアドレスをお書き下されば、必ずお返事したいと思います。
[ NEXT ]
[ BACK ]
[ INDEX ] |
Powered by FormMailer.