とらいあんぐるハート3 To a you side 第十三楽章 村のロメオとジュリエット 九十四話
『アリサさんが立案された計画書に従って、リーゼアリアさんが指揮を取り、開拓は順調に進んでいます』
「惑星の環境改善もようやく落ち着いてきたか。ナハトヴァールはどうしている?」
『たまに夜お父さんを恋しがっていますけど、冒険が楽しいのか、翌日にはケロッとして遊び回っています』
「うーむ、俺の子供らしすぎる……」
意外と大変ではあったが、忍達の尽力もあって地球から惑星エルトリアとの通信に成功している。ミッドチルダとエルトリアの技術革新とは恐ろしいものだった。
惑星の環境改善も一大事業ではあったが、ユーリ・エーベルヴァインとイリスの連携もあって、ようやく惑星全土の改善が落ち着きを見せてきた。
環境が激変した影響で生態系まで狂いが生じないように、ユーリとイリスが力を合わせて事業に乗り出している。
惑星にある遺跡も使用して、ようやくフローリアン一家が夢見たエルトリアの新世界が実現しようとしていた。
『環境が落ち着いてきたので、開拓チームを作って今未開の地に分け入っています。キリエさんが先導してくれて張り切っていますよ』
「ナハトヴァールがモンスター退治とかもしているけど、怪我人は出ていないか」
『その辺は環境改善前、つまりわたし達が来る前からアミティエさんやキリエさんが日常的に戦っていて、経験を積まれているので大丈夫です。
シグナムさんも護衛として立ち回ってくれていますし、一種の狩りとして盛んになっていますね』
「狩猟生活がサマになってきているな」
文明生活とは言い難いが、元々エルトリアの環境が生活できない荒廃ぶりだったので致し方ない。急に文明開化するわけにもいかないからな。
ただ悠長に開拓を続ける訳にもいかないので、あらゆる支援や提供を行って、劇的に開拓事業は進めている。
地球から移住してきた妖怪達の中には古き時代から生きている種族もいるので、歴史の移り変わりを目の当たりにして無理な開拓を行わないように調整してくれている。
おかげでというのも何だが、こうしてユーリも環境改善に集中する必要もなくなり、会話もできるようになってきている。
『住居や農地造りも進んでいて、今は森を林に変えるなどの作業を行っています。目下の課題は治水事業ですね。
社会基盤である道路はすでにある程度開発の見込みは出来ておりますが、安定的な水の供給を図る治水は環境に依存する部分もあるので、今のところは調査中です』
「環境改善したおかげで治水が行えるようになっているが、その環境変化による影響を考慮する必要があるということだな」
さっさと都市化でも出来ればいいんだけど、惑星を激変させてしまうと住民だけではなく環境にもしわ寄せが来る危険性もある。
それに惑星エルトリアの主権を、連邦から勝ち取ったばかりなのだ。主権を勝ち取った後で急に都市化なんてしたら不審に思われるだろう。
技術の出どころを探られるだろうし、下手をすると出身まで辿られてしまうことだって考えられる。
エルトリアが注目されている現状、おかしな真似はしないほうがいい。
『お父さんがいなくて、イリスの機嫌が悪いですよ。わたしも会いたいです』
「状況は話した通りで今のところまだ解決は難しいな……ただ皆も頑張ってくれているし、考えがある」
『考え、ですか?』
「知人のコンサートが日本で開催されてるんだ。その時に可能であれば、お前たちも招待しようと思っている」
今後の対応について考えてみた。
フィアッセのコンサートツアーが世界中で行われ、最初の開催国は日本に決まりそうだった。
普通に考えてチャイニーズマフィア達は脅迫状まで送っている手間、何が何でも開催は阻止したいだろう。
となれば当然、最初の開催を全力で潰しにかかるだろう。
『本当ですか!? でも皆さんを呼ぶと大変になるんじゃ……』
「さすがに全員呼ぶのは難しいから、フィアッセやクリステラのご両親にうちの家族をお願いする形になるな。
シグナム達には悪いけど、彼女達も仕事として責任を持っているから、強引に誘ってもむしろ遠慮するだろう。
彼らへの配慮は改めて行うとして、今は家族水入らずで楽しもう」
こういった危険な場に家族を呼ぶのは良くないが、ユーリ達であればあまり心配はいらないだろう。
ユーリ達にマフィア達の殲滅をさせるのは簡単だが、この事件はあくまで俺達が請け負っている任務だ。出来る限り俺達でなんとかするべきだと思っている。
ただクリステラ一家にとって、今回のコンサートは悲願だ。マフィアに脅迫までされているのに開催を強行するということは、並々ならぬ覚悟なのだろう。
ならばこちらも出来る限りの手段を講じるべきだ。
『シュテル達もきっと喜びますよ! 開催されるその日が今から待ち遠しいです。
でも大丈夫なんですか、聞いた限りですと今もまだ狙われているんですよね』
「だからこそこうして地球で今も協力して対応にあたっている。心配しなくても大丈夫だ。
勿論何かあれば頼りにしているぞ」
『はい、まかせてください。お父さんのためなら、わたし達も頑張りますから!』
全て俺達に任せてコンサートを楽しんでくれ、というのは簡単だが、賢い子達であるうちの娘達は納得しないだろう。
だからこそ敢えて胸襟を開いて事情を話した上で、自分たちで対応するということを話す。
何かあれば頼むと信頼を預ければ、安心して応えてくれるだろう。それだけの関係は築けている確信はある。
手続はこれからするとして、今はお互いに出来ることを対応していこう。
「なにか問題が起きたら遠慮なく相談してくれ。アリサも応じてくれるだろうからな」
『はい、それでは連絡しますね』
通信を終えて考える。コンサートが開催されるとなれば、誰が来るだろうか。
極めて残念ではあるが、危険だと分かっていてもフィアッセが出るのであれば、高町家も多分来るだろう。
危険だと分かっていても、危険だと分かっているからこそ、フィアッセを応援に来る。対処しなければならない。
そういった意味でもうちの一家、宮本家と一緒にコンサートへ行くのが最善かもしれない。
「何もなければそれに越したことはないんだがな……」
こちらが襲撃を警戒して待ち構えていることくらい、向こうも察しているだろう。
このまま怖気づいてくれればそれに越したことはないが、見込みとしてかなり薄いと言っていい。
犯罪者が警察を恐れないというのは、実に厄介なものだった。
<続く>
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