とらいあんぐるハート3 To a you side 第十三楽章 村のロメオとジュリエット 八十話



 気を取り直して犯人達に関する情報共有を行う。主犯に関する情報を共有してもらったので、今度はこちらから提供を行う。

事件で使用された爆弾に関する点、襲撃を行った主犯との交戦。そして何よりも組織に一度所属していたシルバーレイからの犯人像。

指名手配された当時とテロ事件を起こした今を照らし合わせれば、犯人達への具体的な捜査が行える。俺が貢献できる点はあまりないが、出し惜しみはしなかった。


シルバーレイも美味しい食事や歓談を受けて気を良くしたのか、情報提供は快く行ってくれた。これも宴席の狙いの一つと思うのは勘ぐり過ぎだろうか。


「君たちを歓迎する場を提供したつもりだが、こちらにとっても非常に有益な時間となったよ」

「私の方こそ民間人でしかない身の上で、機密とも言える情報まで提供して頂いて感謝しています」

「いや、君も事件に関わっている状態であり、関係者だ。我々にも進んで協力してくれている、礼など不要だよ」


 アルバート議員の言葉に対して、警護のエリスも深く頷いた。その一連のやり取りを見て、ようやく俺も気付いた。

主犯達の具体的な捜査状況や情報を提供されれば、迂闊な行動は行わなくなる。


つまり――俺達の今後の動きを制限する意味合いもあったのではないか。


普通情報を受ければ動きたくなるものだが、俺達は被害者でもある。犯人の脅威を理解していれば、むしろ追跡するのは危険と判断するだろう。

実際ここまで話を聞いていれば、彼らを疎んじてまで行動しようとは思わなくなる。この効果も狙っての情報提供であれば、警護としても立派な意味がある。

これがエリスの手腕と考えると脱帽だった。まだ若い女性であるのに海外で警備会社を運営し、英国議員に信頼されるのも頷ける。


「これだけの情報が揃えば、友好国である日本と協力して捜査を大々的に行えるだろう。日本の拠点のみならず、海外の本拠地や施設も狙えるかもしれない。
全てが公にこそなっていないが、此度おきたテロ事件は国際的にも話題になっている。各政府も及び腰ではいられないだろう」

「探るつもりは毛頭ございませんが、議員としては今度いかがされるのでしょうか。特に、フィアッセについて」


 一歩踏み込んで質問してみると、フィアッセが目を輝かせて俺を見ている。一応言っておくが、お前と別れるのが嫌だからでは断じてないからな。

護衛すると約束した以上、最後まで果たすつもりではいる。しかし親父さんやエリスがフィアッセを守るのであれば、俺がしゃしゃり出る必要はなくなる。

むしろ今こうして高級ホテルに滞在して警護する状態が最適だ。今更素人の俺が出しゃばって、護衛に加わることはないはずだ。


俺個人もそこまで感情移入していないので、フィアッセが安全であれば自分が守ることに固執していない。


「私はしばらく日本に滞在する予定ではあるが、本国へも一度は戻らなければならない。これだけの事件となってしまったのだからね。
特に昨年、異国ドイツの地でテロ事件が起きたばかりだ。今度は日本となれば、主要各国も平静ではいられなくなるだろう。

国際的な足並みを揃える意味でも、本国での調整は必要だ」

「人員や予算に加えて、情報も出揃っている。追い込みをかければ成果を出せる状況で動き出さない事はありえないでしょう。
日本は特に今回の件を重く見ており、成果を望まれています。徹底した捜査が行われるはずです」

「なるほど、各国が動き出す状況であれば事情を知る議員には動きを求められますね」


 想像していた以上に、国家が動きを見せている。ここまでくると、俺個人が変に動くのはむしろ悪影響を生み出しかねない。

狙われているのは現時点でも明らかだし、追い詰められているからと言ってチャイニーズマフィアが諦めるのはありえない。

むしろ成果を求めて、俺を躍起になって狙う可能性さえある。少なくとも日本の海鳴にいるのはもうバレているからな。


だとすればフィアッセも本国へ帰らないといけないだろうな。俺もお役御免になりそうだ。


「そこで君に頼みがある。フィアッセのことを引き続きお願いできないだろうか」

「は……?」


 なんで? いや、ほんとなんでだ!?


「これは正式な依頼と受け取って頂いて構いません。これまでは口約束だったご様子ですが今後は正式な依頼となる為、報酬はお約束できます。
勿論協力を求めている事もありますので、体制についても潤沢な準備が行えるようにいたします」

「いやいや、大切なご令嬢を何故私に!?」

「大切な娘だからこそ、君に任せたいのだよ」


 意味が全然、分からない。急に何故個人論を持ち出すのか、全く持って理解できない。

今までずっと大人の話をしてきたし、極めて常識的な流れで進めてきたじゃないか。急にロマンティックな話にされても困る。


意図を探ろうとしたが、肝心の令嬢がいたく感激されている。


「パパ、リョウスケとの事を許してくれてありがとう」

「幸せになりなさい」

「明らかに適当に話しているでしょう、あんた!?」


 絶対娘可愛さで言っていない、必ずなにか目的があっていっているはずだ。黙らされるな、これは罠だぞ俺!

そもそもフィアッセは主犯に狙われていると情報提供したのは、この人たちだ。なんで自分達で守ろうとしないんだ。

くそ、アリサがいれば相談できたのに、頭脳を補ってくれるのがこの場にはいない。


恐る恐るディアーチェやシルバーレイに目を向けるが――


「さすが我が父だ。英国の政治家まで信頼を受けるとは!」

「がんばってくださいねー」


 くそっ、味方がいないぞ!?














<続く>








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