とらいあんぐるハート3 To a you side 第十三楽章 村のロメオとジュリエット 五十六話
早速妹さんに頼んで”声”を聞いてもらった結果、爆弾が設置されているのはあろうことか三箇所もあった。何個仕掛けてるんだよ、この犯人。
その内の二箇所はホテル内、一階と屋上。もう一箇所はあろうことかホテル前、公共道路脇に設置されていた。人目に触れずどうやって仕掛けたんだ、この犯人。
親父さん達を脅かしつつ、フィアッセに直接危害を加えない場所。デモンストレーションには最適な場所に、爆弾を設置しているということだ。
プロとしての仕事と、テロリストとしての美意識が為せる仕事であると、同じプロの御剣いづみが解釈を述べる。
「……何で爆弾の位置がこれほど正確に分かるんですか、この子」
「”声”を聞きました」
「声ってなんです!? あっち系のヤバい子、いやでも爆弾の位置は本当にあってるっぽいし……超能力? 異能とかそういう類?」
「お前に分かるように言うと、爆弾のテレパシーだな」
「余計に分からなくなったんですけど!?」
「私にとってはあなた達二人共超常的なのですが……忍者の私って実は一般的な部類のでしょうか」
「存在意義を見失わないでくれ、護衛チーム長……」
ホテル周辺の地図を広げながら、月村すずかこと妹さんが爆弾の位置を説明。的確に示す妹さんをシルバーレイが驚愕の眼差しで見つめ、御剣が改めて疑問視している。
いつの間にか自然と受け入れていたが、妹さんの能力も世間的に見れば超能力の部類なんだよな。海外に異世界、惑星と随分広大に冒険してきたが、どの世界から見ても妹さんの能力は際立っていた。
まだ子供で護衛として力不足を感じているようだが、この子が去年の6月から護衛として守ってくれなければ、俺はもう生きていなかっただろう。数多くの難事を乗り越えられたのは、間違いなく妹さんのおかげだった。
だからこそ何かあったら妹さん頼みになっていたが、人から指摘されて自分の感覚の変化に気付かされる。常識のように考えていては確かにいけないな。
「とりあえず能力の探り合いはやめておくとして、爆弾の位置が把握できるのであれば解除しなければなりません」
「爆弾を全て解除できればフィアッセ達が脅迫に脅かされることもないし、議員さんが動いてこの混乱を収められるだろう」
「しかし我々が動くのはオススメできません。特に貴方が動くのであれば反対いたします。
ちなみにこれは護衛としての意見というだけではなく、雇い主の意向でありますので貴方に恨まれようと我々は制止にかかります」
「雇い主の意向というのは何だ、一体」
「貴方に対するあらゆる不利益が生じる場合、貴方の意志に関わらず制止するように厳命を受けています」
……夜の一族の女共、下僕だの愛人だの婚約者だのと言っておきながら、全然俺のことを信じていないじゃねえか。
目を離すと俺が考えなしの無茶な行動に出るとでも思っているらしい。何で失礼な奴らなのだろうか、信頼関係を築くつもりはないのか。
ガッデムと憤りたいところだが、実際映画の主人公よろしく爆弾の解除を考えていたのだから、あまりアイツラを非難できない気もする。
ちっ、分かりましたよ。アクションスターを演じなければいいんだろう。
「爆弾処理班でも呼びたいところだが、警察が動くと犯人にバレるよな」
「この騒ぎです、当然犯人も目を光らせているでしょう。とはいえ、この町の治安において我々が独自に動くばかりではいけません。
警察に連絡するのではなく、警察に介入してもらいましょう」
「? 同じではないのか」
「違います。警察に連絡するのは市民の義務ですが、警察に介入させるのは上の仕事です。
よって我々は警察に直接通報するのではなく、動いてもらいましょう。そうすれば現場に動きを悟られることはありません」
俺達は車の中で話し合っていたのだが、話し終えると御剣は運転席を出て何処かへ連絡を取り始めた。俺もそうだが、シルバーレイも話を聞いていて呆然としている。
警察を動かすとアッサリ言ったのだが、警察より上の立場ってどこらへんなのだろうか。そんなおえらいさんと、なぜ平然と連絡が取れるのだろうか。
夜の一族の連中は今諸事情あって動けないはずなので、既に根回し済みということだ。地域密着という言葉では生温い、夜の一族の浸透ぶりに恐怖さえ覚える。
そんな中で、説明を引き継いだ妹さんが続ける。
「ホテル内部はいいのですが、外にある爆弾の解除が困難です。地下駐車場の爆破で人の目もある」
「……爆弾の位置と状況から考えて、犯人は野次馬も人質に入れているのか」
「可能性は高いでしょうね。スナッチ・アーティストの考えそうなことです」
地下駐車場での爆発は爆破の被害を考慮したのではなく、フィアッセ達を脅かすのと警察や野次馬を呼ぶのが目的だったというわけだ。
ホテルに集まる人が多ければ多いほど、外にある爆弾の影響力が大きくなる。人の目があれば、解除するのも困難だ。
自分の足元に爆弾が設置されていると分かればまず間違いなく大パニックになるし、大混乱による死傷者が出ることも考えられる。
全く十重二十重に張り巡らせた罠である。変な言い方だが、流石は国際指名手配犯だった。
「どうするんです。迂闊に動けば大パニックになりますし、犯人にもバレますよ」
「この世の中には超能力という奇跡の力があって――」
「ちょっと、いい加減怒りますよ!?」
「お前、救急車とか空に飛ばしてたじゃねえか!」
「爆弾みたいな精密機器を超能力で動かしたら私が危ないじゃないですか!」
くそ、どうする。他の爆弾を解除しても、肝心なのが残っていたら脅迫材料になり得る。
一般的な力では無理なら、一般的ではないのに頼るしかない。何か出来ることはないだろうか。
ディアーチェとディード、オットーは戦闘中、妹さんは探知のみ、アリサは頭脳労働。
魔導師連中ならどうだろう。なのはは爆弾処理とか聞いたら泣くだろうし、はやては車椅子。シャマルの旅の鏡なら何とかなりそうだが、あいつとシグナム、フェイトはエルトリアで開拓中。
恭也達は剣士だし、忍は技術者だけど流石に爆弾は無理。那美は退魔師だし、久遠は小狐。
クロノ達、時空管理局はどうだろう――うーん、技能的にクロノ達は不明なので保留。イリスならどうにかなりそうだけど、ユーリ達含めて全員エルトリアにいる。
あああああ、なぜ俺は主戦力のあいつらを置いてきてしまったのか。
ぐぬぬ、後は戦闘機人の連中とか――工作担当のチンクもエルトリアだし……あっ、そうだ。
「妹さん、聖地から人を派遣することは出来るか」
「? はい、剣士さんの権限であれば可能かと」
「セインを至急呼んでくれ、ヴィヴィオの護衛で暇しているはずだ」
<続く>
|
小説を読んでいただいてありがとうございました。
感想やご意見などを頂けるととても嬉しいです。
メールアドレスをお書き下されば、必ずお返事したいと思います。
[ NEXT ]
[ BACK ]
[ INDEX ] |
Powered by FormMailer.