とらいあんぐるハート3 To a you side 第十三楽章  村のロメオとジュリエット 五十話
                              
                                
	 
 フィリスやシェリーの救出作戦が完了し、ディアーチェ達と正式に合流した。 
 
フィアッセも親父さんとしばらく一緒に行動することとなったので、マンションで護衛体制を取る必要はなくなったのだ。 
 
同居人のアイリーンとかいう女もフィアッセが家族と一緒との連絡を受けて安心したのか、仕事へ行ったようだ。人目に付く所にいればひとまず安心だろう。 
 
 
被害者のフィリス達が事情聴取を受けることになったので、その間に隔離施設へ集まることとなった。久しぶりの家族会議である。 
 
 
「あんたのアホな作戦でも人命救助は出来たようね」 
 
「何だと、失礼なやつだな。結果として無事に被害者を救出することが出来ただろう」 
 
「その過程でだいぶみんな助けられたでしょう。オットーが居なかったら、怪我人が出てたかもしれないし」 
 
 
 合流したアリサは早速チクリと言ってくる。傍に居たすずかが照れ隠しと心配の裏返しだとフォローしている、ほんとかよ。 
 
フィリス達を救う囮作戦は身内にまでブーイングを食らった作戦だったが、結果として成功したのだから良しと思いたい。 
 
思いっきり夜の一族を筆頭にしたコネ頼みではあったが、その点は勘弁していただきたい。俺なりに必死だったのだ。 
 
 
一通り指摘した後で、アリサはちらりと見やる。 
 
 
「それでその子があんたを手引きしてくれた組織側の人間ね」 
 
「どうも、シルバーレイです。良介さんに誑かされて組織を裏切った悲劇の女です」 
 
「アタシはアリサ。こいつの趣味でメイドにされた女よ」 
 
 
「お前ら、ひどすぎる」 
 
 
 シルバーレイはチャイニーズ・マフィアより製造されたクローン体であり、HGSによる超能力者。取り扱いが非常に厳密であった。 
 
司法局へ大人しく引き渡せる存在ではなく、夜の一族の働きかけもあって一旦俺預かりとなっている。 
 
勿論どこぞとしれぬ一個人に預けられる存在ではないので、本人希望と夜の一族による後見があって何とか成立していた。 
 
 
御神美沙都が演じる”サムライ”という俺のネームバリューも効いたようだ。殲滅しまくっているからな、あの人。 
 
 
「シルバーレイという名前に、お父様成分を感じます」 
 
「貴女こそ、良介さんの遺伝子が伝わってきますよ」 
 
 
「何なの、お前らの感覚」 
 
 
 ディードとシルバーレイが何やら睨み合っている。どういう感覚を感じているんだ、こいつら。 
 
別に嫌っている訳ではないようだが、犬が互いに吠えているような警戒を感じる。 
 
ディードは救出作戦で積極的に剣を振るって活躍したようだ。殺人はしていないようだが、複雑な心境である。 
 
 
自分の遺伝子を継いだ子がマフィア相手に戦っている。子供が一度は夢想するシーンであるので、本当に実現しているのが少し羨ましく思う。 
 
 
「オットーもありがとうな、今回の作戦では随分助けられた」 
 
「ボクも自分の能力が家族の為に役立てたのが嬉しいよ」 
 
 
 オットーはディードと違って情熱的な子ではないが、感情がないのではない。 
 
必要とする情緒が大人並みに少なく、日頃は表に出さないだけだ。双子のディードを立てているとも言える。 
 
だからこそ今まであまり能力を使用する機会もなかったのだが、今回の作戦ではこの子の固有武装や能力が非常に適していて助けられた。 
 
 
オットーも貢献できたとあって、子供ながらに嬉しそうだった。 
 
 
「父よ。そのシルバーレイという人間を我らに紹介したのは、こちら側の事情に今度関わらせる為か」 
 
「アタシもあんまり友達とか欲しくないんですけど、良介さんがどうしても紹介するというんで来たんです」 
 
「正直今度どうするか悩んだんだけど、こいつはフィリスとは違って社会に貢献するタイプじゃなさそうだったからな」 
 
「あんた、本人の前でズケズケ言うわね……」 
 
 
「超能力で救急車飛ばす女だぞ」 
 
「ごめん、社会不適合者だったわ」 
 
「嫌な主従関係ですね、あんた達!?」 
 
 
 シルバーレイの今後については正直様々な意見が出た。 
 
オリジナルのフィリスは家族のように思っているのか、保護を名乗り出て同居を望んだ。シェリーも超能力者でも生きられる社会復帰を提示してくれた。 
 
チャイニーズマフィアの組織がまだ活動している以上、裏切り者は表には出られない。だからこそ組織の兵隊として生み出された彼女の扱いはさまざまだった。 
 
 
その本人は俺を手伝うことを望んでいたので、各方面とも調整した結果俺の所へ来たのだ。 
 
 
「良介さんの事情ってなにかあるんですか。まあこの場にいる人達、子供ばかりですけど只者ではなさそうですね」 
 
「そうだな。例えばこのディードとオットー、正確には少し違うがお前に似た過程で製造された」 
 
「! 良介さんを父と呼んでいるということは、もしかして良介さんの遺伝子を?」 
 
「お前を信用して、全てではないが事情を打ち明けよう」 
 
 
 社会復帰が厳しければ、保護という名の隔離が予想される。HGSはあくまで病気であり、医療のカテゴリーだからだ。 
 
夜の一族がバックアップしてくれているからこうして何とか立場が保証されているが、最悪超能力者の成功例として政府機関に引き渡される危険性もあった。 
 
人権にうるさい社会だが、言い換えるとマフィアという犯罪組織に関わった反社的立場には厳しい。 
 
 
超能力を持った犯罪者は危険として、立場が保証されなくなる事もありえる。俺預かりとなったのであればこれ幸いと、彼女でも生きられる世界に誘った方がいい。 
 
 
「戦闘機人に、魔導師……そんな人種がこの世にはいたんですか」 
 
「地球には本来居ないけどな」 
 
「自分が超能力者だからとイキってたのが、なんだか馬鹿らしくなってきましたよ……」 
 
「俺もここ一年での話だから、全て受け入れられた訳じゃないぞ!?」 
 
 
 この中では最初に出会ったアリサも元幽霊だからな。俺の仲間で普通の人間があんまり居ないのが悲しい。 
 
なのは達は地球の人間なんだけど、あいつらはあいつらで一般人とは厳密には異なる事情があるからな。 
 
そう考えるとフィリスのようなお人好しだってHGSだった訳だし、何の背景もない人間が全然いないな。 
 
 
孤児である俺が霞んで見える。少なくとも胸を張れるほどの異端ではなくなっている。 
 
 
「ということでこれからは協力してもらうことにした、頼んだぞ」 
 
「はいはい、一応約束していた身元保証はしてくださったんですし、少しくらい手伝ってあげますよ」 
 
「おう、マフィアの件が片付いたら惑星の開拓事業もあるからな」 
 
「またなんか出てきた!? えっ、宇宙にも行っているんですか!? 
ちょっ、どういう人生送っているんですかあなた」 
 
 
 どういう人生送っているんだろう、俺…… 
 
他人から指摘されて、初めて愕然となってしまった。 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
<続く>
  
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