とらいあんぐるハート3 To a you side 第十二楽章 神よ、あなたの大地は燃えている!  第二十五話




 連邦政府の代理人より交渉で手に入れた惑星再生委員会のデータは、予想以上の効果をもたらしてくれた。

データ上からでも読み取れるほどに彼らの熱意は本物で、事細かく惑星エルトリアに関する情報が分析されていたのである。

単純な地表データのみならず、惑星の天体や気象、自然環境や生態系、動植物の分類や現地人のカルテに至るまで、細部に渡ったデータが保管されていたのだ。


委員会のデータを元にアリサとリーゼアリアが計算し、シャマルとクアットロが解析を行い、イリスが中継してユーリへと受け渡っていく。エルトリアのテラフォーミングがこうして順調に行われる。


「お茶でもお出ししましょうか」

「邪魔だから、あっちいって」


 ……これが親切心から申し出た主人に対する、メイドの言葉である。長年の付き合いじゃなかったら首を切っているぞ、おい。

一応言っておくと、やることがないのではない。あらゆる可能性を全て行っているため、全員一丸となって各方面で事を推し進めている。俺が全行程を調整し、担っているのだ。

だが惑星エルトリア開拓プロジェクトに参画するメンバーはどいつもこいつもずば抜けて優秀であり、各プロジェクトで全て成果を上げてくれているので、俺は命令さえしていれば良くなっている。


つまり過程の段階である今、やることがない。


「子供の頃社長ってのはふんぞり返っているだけの仕事だと思っていたが、本当にその通りだとは思わなかった」


 くだらないことに感心しつつ、伸びをする。テラフォーミングというのは急に成果が出るものではなく、どうしたって時間がかかる。

ユーリ・エーベルヴァインの全力の祝福を受けて、惑星エルトリアの生態系は順調に活性化しているが、いきなり緑の星になったりはしない。リーゼアリアに戒められて、細部に渡った調整がされている為だ。

勿論今この瞬間にも劣悪な環境が改善されている途中だが、目に見える効果が出るのはまだ少し先だ。そこまで来たら俺も忙しくなるが、今この時だけは結果を待つしかない。


――ということで、俺は近頃やっていなかった仕事をしようと思う。


「認めるのは忌々しいが……我が子の育児教育でもするか」


 信じられるか? 間もなく十八歳になるこの俺が、義理の姉妹に兄弟、義理の子供達に加えて、自分の遺伝子を継いだ実子までいるんだぞ。何なんだ、この家庭環境は。

結婚もしていないのに、俺の子を名乗る少女達が増え続けているのだ。異常だと思うのだが、誰一人も何も言わないのだ。どうなっているんだ、この世界は。

とはいえ自分の子供だと認めた以上は、親として育てる義務がある。毎日家族として接してはいるが、それとは別に我が子の面倒をみる義務がある。


放任主義と、育児放棄はまるで違うのだ。そこはきちんとしなければならない。


「さて、うちの子達は今何やっているんだろうな」


 暇がある家に、我が子達と交流を深めておこう。















「お疲れ様です、父上。まず真っ先に私に会いに来るその姿勢はいいですね、父への愛がより深まりましたよ」

「残念だが、ユーリに差し入れをしてきた後だ」

「ふ、私を焦らすとはやりますね父上。これは好感度アップですよ」

「どうやったら下がるんだよ、この恋愛ゲーム!?」


 極めて優秀な頭脳をもつ恋愛ボケな我が子は、格納庫で作業していた。うちで建てた施設ではなく、かつてあった惑星再生委員会の廃墟施設を使用したものだ。

研究員だったフローリアン母君より話は聞いていて、ありがたく利用させてもらうこととなった。CW者より持ち込んだ資材類を全てこちらへ移しているのだ。

職場での正装をしているシュテルは現場主任として、忙しく働いている。アホなことを言っているが、これでも自分の部下を持つ優秀な現場リーダーである。


そして彼女が指揮している作業員は、人間ではない。


「お疲れ様です、我が主。ローゼが寂しくなってきた頃に会いに来るその行動はいいですね、忠誠心が深まります」

「データ共有でもしているんじゃねえか、お前ら二人」

「シュテルお嬢様との会話が実に弾みます。我が主のことになると、三日三晩は余裕ですね」

「どういう会話のネタが広まるんだ、そこまで!?」


 ガジェットドローン。聖地では魔女に悪用されてしまい、世間様の評判が今ひとつよろしくはないが、遠く離れた異星では何の問題もない。

そもそも惑星再生委員会のデータがなぜこうも有効活用できているかというと、話は実に簡単でガジェットドローンが分析データの検証をしてくれているからだ。

どんな悪辣な環境で人を寄せ付けない魔境でも、ガジェットドローンであれば何の問題もない。戦闘能力をもつ無人機ほどこの惑星に適したものはない。


それに加えて――


「忍様が提案された"チヴィット"シリーズ、試験運用にもうってつけです」

「ガジェットドローンと併用してテストを行っていますが、予想以上の効果が出ております」

「"シュテゆ・ザ・キャット"に"チヴィ・ザ・ローゼ"か……CW社から売り出せそうだな」


 チヴィットとはAI-NPC、つまりデバイスのような人為AIが搭載されたロボット体である。外観はシュテル達をデフォルメした可愛いマスコットタイプとなっている。

月村忍が初めて異世界ミッドチルダへ訪れた際、レイジングハート達デバイスに多大な刺激と感激を受けた。彼らよりヒントを貰った彼女が、CW社所属となって立案開発を行ったのだ。

レイジングハート達のようなAI達を現実空間でも遊ばせたいというあいつならではのゲーム的な考えのもとで、ロボットの体が作られたのである。


――なぜシュテルたちをデフォルメ化したのか激しく謎なのだが、我が子を模しているだけに可愛いとも思ってしまう。


「仮想空間シミュレーターで実験するつもりでしたが、まさか実地で実験できるとは思いませんでした。成果もバッチリです」

「モンスター相手でも自前で戦えますからね、これは大儲けできますよ」

「俺の影響を受けすぎだろう、お前ら……」


 金に汚い子供達の将来が、激しく不安になった。















「勝負だ、ナハト!」

「おー?」

「どっちが先に一周するか、ヨーイドンしよう」

「おー!」

「ボクは一日で戻る自信があるよ」

「むふー」

「おお、ナハトも同じか。燃えてきたぞー!」

「うおー!」


「――待て、一周ってもしかしてこの惑星か!?」


 今にもヨーイドンしそうだった二人を慌てて足払いすると、凄まじい勢いでスタートダッシュしたナハトヴァール達が豪快にひっくり返った。俺は謝らない。

普通の人間なら一日持たない過酷なモンスターワールドでも、ナハトヴァールやレヴィにとっては楽しい遊び場らしい。公園のブランコとかで満足してもらえないだろうか。

どこへ行っても怯まず元気に遊べるこの子達は頼もしいのか、怖いのか。


「あいてて……もう、パパ。酷いじゃないのさ!」

「飛び出していったら、そのまま帰ってこなさそうだから怖いんだよ、お前ら」

「おとーさんもいっしょ!」

「えっ、俺も参加させられるのか!?」


 かつて地球を一周した人間を偉人として讃えられていたが、この子達は散歩にでも行く気安さで物語っている。自分に出来ることなら父親でも出来るなんて幻想なのに。

こうしてみると遊んでいるだけに見えるのだが、この子達はこれでも自分に出来ることを一生懸命やってくれているのでなかなか侮れない。

人と触れ合うのが大好きなナハトヴァールは皆の所へ出歩いて自分なりに手伝っているし、レヴィにいたっては先日開発した肉体強化を活用してモンスター達を追い払っている。


おかげですっかりこの場所を襲撃されることはなくなってしまった。遊びでやっているのだから恐ろしい。


「お前達から見てどうだ、この惑星は」

「昨日砂場だったところが森になってたから、遊んできた」

「ターザン!」

「環境の変化を楽しんでいるな、こいつら……」


 まあ子供達が遊べるような場所になっているなら、それはそれで順調かな。















「くくく、我の勝ちだな」

「待ってください、大規模殲滅魔法はルール違反ではありませんか」

「何をいうか、父の娘を名乗る剣士め。貴様の片割れこそ、固有能力でぶっ放しまくっていたではないか」

「僕のISであるレイストームはあくまで拘束に使っている。義理姉の魔法は殲滅、意図が全然違うよ」


「むっ――では今ちょうど参られた我が父に判定してもらおうではないか」

「墓穴を掘りましたね、義理姉様。お父様は、私の剣を認めてくださっているのですよ」

「お父さん、言ってあげて。僕が一番可愛いんだって」


「事情が何もわからんのに最終判定がエグすぎる」


 すさまじい爆撃音が聞こえて慌ててきてみれば――地平線が見えるほどの更地になっている現場で、姉妹達が激しく言い争っていた。

長女のディアーチェが余裕綽々で、妹分に当たるディードやオットーが突っかかっているように見える。父の前では物分りの良い子達なのだが、姉妹同士となると別らしい。

両者ともに血の繋がりの是非については一切焦点に上げておらず、差別的な意識もまったくない。彼女達なりに家族としてきちんとやっていてはいるのだ。


だがあくまで人間同士でもあるので、たまにこうして喧嘩もする。こればかりは兄弟姉妹関係ないのだろうな。俺もガリやデブとは孤児院でよく揉めていたしな。


「何の勝負をしていたんだ、一体」

「よくぞ聞いてくれた、我が父よ。実はこの周辺にスライムの大群が出現したのだ」

「……またモンスターに妙な名前をつけやがって……」


 人に迷惑を掛ける動物はすべてモンスターでいいと思うのだが、なぜだか知らないがコイツらは固有名詞をつけ始めたのである。

月村忍のゲーム知識を身に着けているノエル達自動人形が現実に輸入して、モンスター相手にそれぞれ勝手な名前をつけたのだ。

例えば今回の場合ユーリの生命操作能力で活性化した影響を受けて、ある湖の水が変質化したらしい。湖に生息する?生物の分泌する粘液が有機物となって襲い掛かってくるようになったらしい。


そうした液体のモンスターをスライムとして名付けたのである。


「たかがスライムと侮ってはならぬぞ、父よ」

「剣では切りづらくて大変なのですよ、お父様」

「襲い掛かってくると服を溶かされる女の敵なんだよ、お父さん」

「何でそこまでスライムをプッシュするんだ、お前ら!?」


 というか、服を溶かされるのか!? 試したのか!? お前達の柔肌は無事なんだろうな、おい!?

なるほど、湖ほどの規模がある液体がモンスター化すれば大変な事態になっていただろう。ユーリたちが事態に気づいて、自分の姉妹であるディアーチェ達を頼ったのだ。


その結果――更地になってしまったという事か。


「勝負も何も……完全に消滅しているではないか」

「我が力の賜物よ」

「いいえ、我が剣の切れ味です」

「僕の砲撃による成果だよ」


「愚かなり、我が子達よ。侍とは、首級こそ成果を示すものだ――首なき成果なぞ、ただの繰り言よ」

『!?』


 角が立たないように適当に言ってみたら――思いの外ショックを受けていて、我が子達はガックリと地面に膝をついた。

名言でも言われたかのように、衝撃を受けている。喧嘩両成敗、皆仲良くと暗に言いたかっただけなのに。


子育てとは難しい。















「村を作るわよ、良介」

「いきなりなんなんだ!?」


 こうして子供達と遊んでいたら、惑星エルトリアは次なる一歩を踏み出していた。















<続く>








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