とらいあんぐるハート3 To a you side 第五楽章 生命の灯火 第六十七話







 "アルハザード"とは、神話や古史・古伝・民間伝承で紡がれる幻の地を指す。

「伝説の王が眠る」、「失われた秘術が封印されている」、「古代の遺跡が存在する」等など、数多くの伝説が残されているようだ。

有名な一説では次元世界の狭間に存在し、奇跡のような秘法が眠っているらしい。

ようするに、眉唾物の世界らしい。

御伽話の延長でしかなく、実在するかどうかも怪しいと、博識の先生が結論付けた。

ムーやアトランティス大陸のような不確かな理想郷と考えれば、何となく分かり易い。

ようするに、


「俺の推理は大ハズレって事ですね」

「あっはははははは〜! こいつ、本当に馬鹿だね」


 ガックリと、テーブルに額をぶつける。

ファンタジックな話がここのところ続いて、俺も毒されてきたのかもしれない。

大マジで禁断の魔法とか鼻高々に語っていた自分が恥ずかしい。

絶望の鐘が鳴り響く中、アルフの笑い声が耳障りだった。


「いや、君の推理はそう的外れでもない」

「どういう事だ!?」


 意外にも、生真面目な執務官が俺に賛同してくれた。

顔を上げて縋り付くように見つめると、本人は苦笑いを浮かべてフォローに入る。


「アルハザードは確かに実在すら疑わしい。
だが、問題はアルハザードそのものよりも――プレシアが存在を信じている・・・・・・・・点なんだ。
伝承によれば、アルハザードは次元世界の狭間に存在すると言われている。

恐らく彼女は……ジュエルシードを使って、アルハザードへ旅立つつもりだ」

「ああっ!? くそっ、そういう事か!」


 ジュエルシードが真の力を発揮すれば、大規模な次元震が発生する。

俺はてっきり世界を吹き飛ばす力を利用して、禁断の魔法を使用するのだと思っていた。

――そうではなかった。

プレシアの望みは力ではなく、次元震そのもの。

ジュエルシードで次元世界に亀裂を入れて、アルハザード狭間へ繋がるトンネルを掘るつもりなのだ。

強引過ぎる力技だが、何しろ世界の狭間に存在する代物だ。

無茶をしなければ絶対に辿り着けないと、高を括ったに違いない。

これでようやく全てが繋がった。


「アルハザードには死者の蘇生や、時間の操作を行える秘術があると言われているの。
リョウスケ君の推理の根本は間違えていないわ。間違いなく、彼女の狙いは禁断の魔法よ。
プレシア・テスタロッサ程の大魔導師なら、何か確証を得ているのかもしれないわ」


 納得、そして危機感増大。

他者の願いを叶える法術と、禁断の魔法が眠るアルハザードへの到達――

成功確率は実例の在る法術が上だが、万が一成功すれば断然向こうに旨みがある。

俺の法術では、死んだ人間は蘇らない。

あくまで死者の魂をこの世へ呼び戻し、結晶化させるだけだ。

術者の俺が死ねば効果は消滅、肉体もないので成長しない。

極端に言えば、死亡時の状態のまま停滞・・するだけだ。

死んだ人間と話せるだけでも大きな利点だが、死者の時間は決して進まない。

加えて、法術には多くの使用条件がある。

死亡後も魂が残っていたアリサやアリシアが特別なだけだ。

ごく限られた条件の中で、特別な魂と器を持ち、尚且つ奇跡的な可能性を潜り抜けて、ようやく辿り着ける願い――

術者の俺ですら原理が分からない力だ。

プレシアもアリサという前例がいるからこそ、法術を頼みにしているだけ。

アルハザードに万が一行ければ、本当の「死者の蘇生」が出来る。

そして何より時間の操作さえ可能となるならば、彼女は必ず過去へ飛ぶだろう。

幸福だった過去へ。


アリシアが笑顔を見せてくれた、懐かしき時代へ――


愛娘の死後どれほどプレシアが苦痛と絶望に喘いだか、アリサを一度喪った俺には痛いほど分かる。

まずいな……時間が経てば経つほど、こちらのアドバンテージが崩れていく。

俺が使えないとなれば、彼女は必ずアルハザードへ行くだろう。


「それがプレシアの目的なら……ジュエルシードの回収は急いだほうがいいな」

「ああ、残り六個が彼女の手に渡れば危険だ。計画を実行に移す可能性がある。
彼女が今ジュエルシードの発動を行わない理由は君の存在もそうだが、所持数の少なさにもあるんだろう。

早い段階でジュエルシードを全て確保し、プレシア・テスタロッサを逮捕する」


 時空管理局執務官クロノ・ハラオウンの正式通達――

世界の平和を管理する組織が、プレシアを犯罪者と認識した。

どれほどの力を持つ魔導師でも、彼女は一個人。

凶悪な犯罪者相手に日夜戦い続けている組織には、決して敵わない。

彼女は逮捕され、牢獄の日々が待っている。

――仕方ない事だと思う。

だがそのまま悠長に事態に流されているようでは、病院のベットから抜け出した意味がない。

強張ったフェイトを横目に、俺は積極的に時空管理局に主張する。

別に意味はないが日本人の習性として、手を上げて立ち上がる。


「逮捕するからには、何か理由があるんだろうな」

「プレシアはアルハザードへ行く為に、世界を破壊するロストロギアを使用するつもりだ。
明確な次元犯罪だ」

「まだ使ってないし、アルハザードの話も俺達の憶測だろう。
証拠がないぞ」


 事実関係を突き詰めれば明白なのだが、俺は強気に反論する。

どれほど規模と世界観が違えど、警察に似た組織ならば体面を重んずる筈だ。

強行に逮捕劇を演じるようでは、民間の支持は得られない。

クロノは眉間に皺を寄せる。


「先程と言っている事が違うぞ。君はどうしたいんだ?
プレシアを庇い立てしても、彼女本人が罪を認めなければこの事件は解決しない」

「それは分かってる。ただ、逮捕する理由を聞きたい。
それによって今後の罪が変わってくるだろう」


 世界規模の凶悪犯罪を起こせば、俺の国では問答無用で死刑だ。

良くて一生牢獄、社会から抹殺される。

プレシアは既に崖っぷちに追い込まれているが、まだ奈落へ落下していない。

……犯罪を犯しつつある当人に自覚がないのがむかつくが、フェイトの為に我慢して援護する。


「プレシアはジュエルシードを集めている。この事実はどう説明する?」

「俺達の世界に危険なロストロギアがばら撒かれたのを見かねて、回収してくれたんだ。
きっと全部集めて管理局へ渡すつもりだったんだよ」

「自分でも信じていない事を、平然と話さないでくれ」

「ユーノだって同じような真似したじゃねえか」

「彼の取った行為も賛同は出来ないが、責任を感じての事だ。プレシアとは違う」

「違うって言う証拠はねえよな」

「証人はいる、フェイトだ。集めていた彼女が事実を語っている」

「フェイトはプレシアに言われて集めていただけだ。真意は知らない。
推測の域を出ない」

「っ……」


 咄嗟に言っただけだが、図星らしい。

言葉に詰まるクロノを見ても、やりこめた事への愉悦は微塵もなかった。

二言目には証拠がないの一点張りだが、少しでも踏み込めば山のように積まれている。

彼女の宮殿を隅から隅まで探せば、腐るほど出てくるだろう。

それをしないのは、クロノやリンディ達が中立だから。

被害者にも加害者にも寄らず――どちらも助けようとしている。

彼らはどこまでも正しかった。

捜査の邪魔だと一言言えば済む、俺はその程度の存在なのに。

それでも耳を傾けてくれる優しさに、結局俺は頼っている。

――自重しない、自嘲しない、自虐しない。

弱者でも、俺は運命に抗いたいのだ。


「……こんな事は言いたくないが、プレシアは人造生命研究を行っている。
過去携わったプロジェクトを元に、理論を構築して実験を繰り返し、完成させた。

法律の枠を、超えて――その結果がアリシアであり、フェイトだ」

「どこまで禁断の領域に踏み込んだのか、調べてみないと分からないだろ」

「だから、その為に彼女を――」

「結論を急いで手段を無理に行使してるだけじゃねえか!」

「それは君だろう、ミヤモト!
君は彼女の罪を認めたくないから、明るい未来に逃げようとしているだけだ!
そもそも君が彼女を庇わなければ、誘拐の罪で穏便に連行出来たかもしれないんだ!

君が再三口にする証拠がないせいで、武装局員出動の申請も出来ない」

「やっぱり無理にしょっぴこうとしてるんじゃねえか!?
彼女だって言い分があるのに!」

「それを言うなら、どんな犯罪者にも言い分はある! 君はそもそも――」


「いい加減にして下さい!!」


 驚くほど強い力で、テーブルが叩かれて激しい音を立てた。

睨み合っていた俺達は不意の大声に立ち尽くし、戸惑いを見せる。

小さな手のひらを真っ赤に染めて――高町なのはは、悲しみに濡れた表情を向けた。


「――喧嘩なんてしないで下さい。おにーちゃんも、クロノ君も。
二人が一生懸命なのは分かりますけど――フェイトちゃんの事も考えてあげてほしいです。

でないと、フェイトちゃんも……フェイトちゃんのおかーさんも可哀想です……」


 フェイトが顔を上げて何か言おうとするが、瞳を潤ませるなのはに唇を噛む。

なのははジュエルシードの、フェイトはプレシアの被害者だ。

事件に関してそれぞれに思う所があり、深い悩みを抱えている。

暢気に毎日を何も考えずに生きる小学生自分である筈なのに――

頭ごなしに責め合っていた俺達は、二人の少女を見てきまり悪げに佇む。

当事者の前で罪を擦り付け合うのは、心苦しかった。


「……落ち着きなさいよ、みっともない。
アンタがどんなに肩入れしようと勝手だけど、突っ走ってまた怪我するつもり?」

「貴方もよ、クロノ。切羽詰った状況だからこそ、冷静さは必要だわ。
性急に事を進めないように、こうして話し合う場を作ったのよ」


 エイミィとリンディに注意されて、俺達は渋々席に座る。

お互い納得はしていないが、溝を埋める努力は必要だろう。

場が静まり返ったのを機に、議長のリンディが会議を再開した。


「プレシア・テスタロッサへの、私達の見解は概ね今クロノが話した通りよ。
その上で――貴方の意見を聞かせて貰えるかしら?

プレシアと直接話をして、彼女の思いと目的を知り、貴方がどう感じたのか――正直な気持ちを」


 全員の視線が俺に集中する。

先程言い合ったクロノも感情を抑えて、冷静な物腰で俺の意見を待っていた。

会議の発言権を渡された事実に少し驚いたが、同時に感謝もあった。

捜査方針なんて部外者に聞くべきではないのに、尊重してくれたのだ。

遥か異世界の正義の組織に半信半疑だった――いや今でも不信はあるが、少なくともリンディ達は信用出来る。

素直な気持ちを語ろう、そう思えた。


プレシアやフェイト――アリシアと出会い、話して、固めた決意を。


「プレシアが罪を犯したのは事実だ。無関係な人間を、傷付けた。
それでも――俺は彼女の気持ちも、成そうとしている事も、心のどこかで理解出来てしまう。
同情……と呼べるのか分からないが、このままアイツが悪者になるのは――悲しいまま終わってしまうのは、嫌だ。

彼女は、俺に任せてくれないか……?

リンディ、クロノ。頼む」


 人に――頭を下げる。

安っぽい行為だと、昔の俺が笑っている。

見下げ果てた男だと、一人旅をしていた男が見下ろしている。

――引っ込んでろ。


「――もう一度彼女と会って、どうするつもりだ?」

「自首するように……罪を償うように、説得する。

アリシアの復活を望んで、違法な研究をしたとかそんなのは正直どうでもいい。
アリサが戻らなければ、俺がやっていたかもしれない。
誘拐された事だって、俺もレンも恨んでいない。

罪を償って欲しいと思うのは……あいつ自身に変わって欲しいからだ。

アリシアとフェイトが、悲しむからだ。
今のままでは、プレシアも誰も救われない」


 ――そう。昔も今も変わらない。

この世の正義とか、社会のルールとか俺には正直どうでもいい。

世界を破滅させても大事な人間を助けたい気持ちは、痛いほど分かる。

クロノ達には悪いが、そこは譲れない。

俺はどうあれ……世間に背中を向けた旅人なのだ。

善人ぶる気すらなかった。

そんな権利は――はやてとフェイトを傷付けた時点で、消えた。

ハッピーエンドはもう望めない。


だからといって……このままダラダラ悲劇を続けていい筈はない。


無理やりにでも閉じなければいけないのだ、物語を始めた人間が。

俺は考えに考えて決めた事を、この場にいる皆に話す。

この事件に関わった、全ての人間に。


「プレシアの願いは、俺が阻止する。
あいつが世界を破滅させるつもりなら――俺は、あいつが望む理想の世界・・・・・・・・・・・・を壊す。

アルハザードへ行かせない。今更逃げるなんて許さない」


 悩みに悩んで、俺は決めた――彼女の願いを、叶えない・・・・と。

冗談じゃない、ふざけるな。

気持ちは分かる――でも、俺はお前を許さない。

レンは死に掛けた、フェイトは心が壊れた、アリシアは今も苦しんでいる。

お前も、俺と同じだ。

何も背負わずに、何も傷つかずに、全てを手に入れようなんざ、虫が良すぎる。

てめえにだって背負う義務はある。

俺はもう逃げない――だから、お前も理想に逃げようとするな。

はやてが味わったジュエルシードの呪いを、今度はお前自身に味わってもらう。


願い事には、代償が必要なのだと――


プレシア、お前自身が言ったんだぜ?

俺は「他者」の願いを叶える法術使いなんだって。

残念だけど、同類・・の願いは叶えられない。

他人の願いしか叶えられないんだよ、俺は。


ならば――やるべき事は自ずと決まってくる。


「……そうね……彼女自身が罪を認めて自首してくれるならば、それが一番いいわ」

「予想は付いていたが……本当に出来るのか?
君やフェイトの話から想像する彼女だと、見込みは殆どないように思えるが」

「話し合いは大切。だよな? なのは」


 話を聞き入っていた少女はぱっと顔を上げて、満面の笑みで頷く。

クロノは呆れ顔だが、不思議と笑っているようにも見えた。

堅物で融通が利かない外見だが、懐の深さを時折覗かせる。

まだ少年だが――人の上に立つ器を感じさせた。


「どうやら、今君の話してくれた気持ちは本当のようだ。
今までの君の証言と現状を見るに、嘘はない。

――思考や言動に恐ろしい矛盾はあるが」

「どういう意味だよ!?」


くっ、クロノ達どころかフェイトまで笑ってやがる。

折角俺様が今後絶対にあり得ないほど他人の心配をしてやっているのに、何故面白がるか!

クロノも口元を緩めて、


「プレシア・テスタロッサは、君に任せる。
本来は確実な証拠を揃えるべきだが、逮捕の理由を探している猶予も無い。
艦長の仰る通り、彼女本人が出頭すればそれに越した事は無い。

ただしプレシアに悟られない形で、君には監視をつける。

自覚が無いだろうが、君は先日まで死に瀕していた怪我人だ。
君一人危ない目に合わせる訳にはいかないからね」


 冗談じゃねえ――と言いたいが、拒否すれば外されるのは間違いない。

民間人一人に凶悪の説得を任せるなんて、異例の事態だろう。

この件に関して、クロノ達は随分と歩み寄ってくれている。

これ以上甘えるのも忍びない。

――気も引き締まる。

もし俺が説得に失敗すれば、クロノ達は問答無用でプレシアを逮捕するだろう。

プレシアだって当然抵抗する――多分、不完全な数のジュエルシードを起動させて。

そしたら大事だ、プレシアの極刑はおろかフェイトまで何らかの罰が下る。

ジュエルシード事件を平和に解決するには、もはや俺が成功させるしかない。

今まで間違い続けた俺の、最後の名誉挽回だった。

真剣に俺が承諾するのを確認して、クロノは残りのメンバーに向き直った。


「僕はジュエルシードの早期回収を行う。君達はどうする?」


 それは――多分、最初の一歩。

神の予想すら超えて、なのはとフェイトが奇跡のようなタイミングで目を合わせた。

瞳に宿る御互いの意思を確認して――


――彼女達は、凛々しく微笑んだ。


「わたしは……わたしは、皆を助けたい。
フェイトちゃんの想いとおにーちゃんの気持ち、それからわたしの意志。
皆の悲しい顔は、わたしもなんだか悲しいの。
だから助けたいの、悲しい事から。

全てのきっかけは、きっとジュエルシード――

悲しいことを終わらせる為に、わたしはきっと此処に居る。
ジュエルシードを全て、封印します」


 高町なのはにとって、プレシアはフェイトの母親なのだ。

彼女を狂気に至らしめたのは愛娘の死だが、凶行に走らせたのは――ジュエルシード。

俺が事件に巻き込まれ、はやてが孤独の闇に落ちて、レンが誘拐されて、フェイトが傷付けられた全ての原因。

魔導師への道を歩みだした、悲しいきっかけ。


ジュエルシードを全て回収する事――世界を滅ぼす悪魔を封印する事が、高町なのはの『終わり』なのだ。


「私は弱いから……迷ったり泣いたりをずっと繰り返してる。
どうしていいのか分からない、今も泣きたいほど胸が苦しい――
だけど、それも全部――母さんが育ててくれた、『私』だから。

友達になりたいと、好きだと言ってくれたから――

今度こそ私は私の意志で、母さんに会いに行きます。
全部、それから。

――終わらせる事が出来れば、きっと胸を張って返事が出来ると思うの」


 フェイト・テスタロッサを傷付けたのは、ジュエルシードでもプレシアでもない。

生まれた頃から必要とされず、彼女を巣食う『孤独』が心を壊した。

自分が本当に独りだと思い知らされて、彼女は飛び立つ翼を失った。


だからこそ終わらせる――自分の宿命を。


人造人間として生まれた仮初の生を、本物に変える為に。

フェイトにとっての『終わり』は、自分自身の願いを手に入れる事。

もうフェイトは絶対に、プレシアに負けない。

プレシアは独りだが、フェイトは一人じゃない。


――手の中に、姉に愛された証があるから。


「……わかった。
こちらとしても、君達の魔力を使わせてもらえるのはありがたい。
フェイトとミヤモトがプレシアを、僕となのはがジュエルシードを担当する。

アルフとユーノはジュエルシードの回収を優先。その後フェイト達のバックアップ。それで良いか?」


『ジュエルシードに関しては、僕の責任でもあるからね。
皆が自分の責任を果たすのならば、僕だって自分で何とかしたい』


 クロノの提案に、ユーノも神妙な口調で承諾した。

ジュエルシードに関しては多分、ユーノが一番責任を感じている。

万が一世界が滅ぶ事態に発展すれば、ユーノはその重さに潰されるだろう。

こいつにとっても、これが自分の責任の果たし方なのだ。

――気に食わないが、ユーノにはアリサを救ってもらった恩がある。

ユーノの知恵と援護がなければ、俺はあの娘の笑顔を見れなかった。


最初で最後だが――ユーノの為にも、俺は必ず世界を無傷で救ってみせる。


「ハァ……悔しいけど、アタシに出来る事はもうなさそうだからね。
あの憎たらしい女をぶん殴るのは、アンタに任せるよ。

――フェイトを、守ってあげてね。お願いだよ。

全部終わったら……あの娘に、謝るよ。
皆責任を取るって言ってるのに、アタシ一人図々しくシカト出来ないからね」


 ――はやての家を襲撃した事を言っているのだろう、俺は頷いた。

襲われた事は多分はやてに自覚は無いだろうけど、その気持ちは大切だと思う。

頭を下げない限り、アルフもまた終われないのだ。


俺達は……一人一人、背負う気持ちも目的も違う。


戦う時は皆それぞれ心が離れ、孤独な戦いを強いられる。

けれど、終わらせようとする気持ちは同じならば――ケリがつけば、きっと笑い合える。



それを信じて、俺達は――自分の道の終わりへと、進む。









































































<第六十八話へ続く>







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