とらいあんぐるハート3 To a you side 第十三楽章  村のロメオとジュリエット 第百三十七話
                              
                                
	 
 自分の身内といえば、誰なのか――かつては自分一人だったと言うのに、今では様々な顔ぶれが頭に浮かんでくる。 
 
しかもこの一年で結ばれた縁というのだから、自分でも驚きだ。家族なんて過去も未来も縁がないものだと思っていたが、人生何があるか分からない。 
 
とりあえずそれは置いておくとして、コンサートのチケットはあくまでも有限である。家族で招待されるとはいえ、全員を招いていたらチケットが足りなくなってしまう。 
 
 
ということであいつらは正体ではなく、協力を求める事にした。 
 
 
「――事情は分かりました。 
管理外世界といえど、派遣された地であることには変わりありません。 
テロリストがこの地に災いを招こうとしているのであれば、それを阻止するのが私達の務めです」 
 
「左遷されたことが活きてくるのは、評議会としては夢にも思っていないだろう。 
レンさんからもコンサートの話は聞いているし、君がトラブルに巻き込まれていることは先日の事件でもよく分かっている。 
 
当日は僕達も現場に張り込むことにしよう」 
 
 
 リンディ提督とクロノ執務官、空局から突如この地への派遣兼左遷を命じられた二人は、俺の要請に快諾してくれた。 
 
状況を聞いてみると、左遷されてからというもの特に何か命令をされた訳でもないらしい。上層部の態度は徹底していると言える。 
 
その冷遇ぶりが今の状況からすると、チャンスと言える。左遷された地の治安を守ることに文句を言われる筋合いはない。 
 
 
管理外世界のことに介入するなと言うのであれば、なぜ管理外世界へ派遣したのかという話になるからだ。 
 
 
「ゼスト隊長の意見としてはいかがでしょうか」 
 
「レジアスも中央の掌握に取り掛かっており、大胆な政策も打ち出しつつある。 
中央の権力争いはあまり好ましいとは言い難いが、その分こちらへ干渉する余裕はないだろう。 
 
――あるいはこちらへ干渉させないためにも、レジアスが張り切ってくれているかもしれないが」 
 
「それはいくらなんでも好意的に見過ぎじゃないですか、隊長。 
うちの子の仲介で関係も修復しつつあるとはいえ、あの強面が急に軟化するとも思えないですし」 
 
「あら、そうでもないわよメガーヌ。 
最近連絡の頻度も増えているし、人材こそ派遣できずとも、予算や資材の投入は検討してくれているようだし」 
 
 
 ゼスト隊の面々、ゼスト隊長にメガーヌ、クイントが話し合っている。仲がいいことだ。 
 
レジアス中将とは俺が社長をやらされている会社の取引相手となっているが、関係は良好どころか蜜月に等しい縁となっている。 
 
ジェイルは戦闘機人の製造は行っていないし、レジアス中将はうちとの取引によって戦力や権威を増しており、上層部との縁を切りつつある。 
 
 
ゼスト隊長達の話だと、今では独自路線を打ち出しており、ゼスト隊長との関係も修復して過去に思い描いていた理想へ突き進んでいるようだ。 
 
 
「とはいえ、これほど世間で騒がれている以上、コンサートも重警備となるだろう。 
時空管理局員とはいえ、この世界では認知されていない組織だ。我が物顔で介入する訳にもいかない。 
 
僕達はあくまで彼の支援という立場で手助けしていきましょう、提督」 
 
「そうね、リョウスケさんは私達にとっても大切な友人だもの。 
それにテロリストの狙いはコンサートの阻止だけではなく要人達、そして何より彼本人も狙われている。 
 
コンサート側はこの世界の治安組織に任せて、私達は彼を支援する形で独自の介入をしていきましょう」 
 
 
 彼らの論法が分かったようで分からないような感じで首を傾げると、ゼスト達が溜息を吐いている。 
 
こいつ分かっていないな、といった顔で見合わせているのがムカつく。 
 
 
馬鹿にされているのではなく、子供に諭すような口調で補足してくれた。 
 
 
「リョウスケ、テロリストの目的はコンサートの阻止と要人たち、そして貴方よね」 
 
「そうだよ」 
 
「テロリストの目的に上下はないの。 
けれど貴方の中ではコンサートの阻止が最上位にあるんじゃないかって、私達はいっているのよ。 
 
コンサートを成功させることと、貴方を守ることは同じことなのよ。それを区別してはダメよ」 
 
「あっ……!?」 
 
 
 メガーヌやクイントから丁寧に補足されて、やっと自分の間違いに気づいた。 
 
たしかに無意識で俺はフィアッセ達の安全とコンサートの成功に、主軸をおいていた。 
 
もちろん自分が狙われていることも分かってはいたが、何処かで俺は棚上げしていたかもしれない。 
 
 
だからクロノ達が俺を守ってくれると行った時、わざわざありがとうと言ってしまった。 
 
 
「やっと分かったのか…… 
君は大事な友人であることに何の違いもないが、任務としても君を守ることは治安に繋がるんだ」 
 
「色々大変なのは分かるけど、もう少し大人に相談してくれてもいいのよ。 
まあ自分の足で私達に会いに来て、こうして話し合いをしてくれているのだから良しとしましょう。 
 
貴方の大切な友人が歌を歌うのでしょう。是非とも成功させるためにも、貴方は安全にいなければ駄目よ」 
 
 
 さすがプロ、コンサートも覗きたいというような真似はしてこなかった。 
 
音楽への興味があるのかどうかは別にして、仕事がある以上優先順位は決まっている。 
 
こういう大人たちが揃ってくれている限り、まだまだ世の中捨てたものじゃない。 
 
 
こうして話し合いを終えて協力を取り付けられた後、電話がなった」 
 
 
『良介か。
お前からの提案、真剣に考えたが……覚悟を決めたよ。 
 
高町桃子さんへの仲介を、お願いできないだろうか』 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
<続く> 
 
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