とらいあんぐるハート3 To a you side 第十三楽章 村のロメオとジュリエット 第百三十五話



今日のフィアッセのスケジュールは完全なオフ、自室で一人作曲と練習に励むとの事だったので、俺は出かけることにした。

俺は今アルバート英国議員に雇われている身、当然だが労働時間内に自由に行動なんぞ出来ない。警備長のエリスと連絡を取り、護衛体制を築いて行動に出ている。

フィアッセの今日の護衛役はディード、高町道場で連日剣の修行をしていた我が子が休息の為戻ってきていた。


よほど毎日根を詰めていたのか、恭也と美由希に体を休めるように言われたらしい。


『美由希さんも過去、お父様に体を労るように言われたそうですね』

『そういえば昔、そんな事を言ったような気も……
あいつも昔挫折、というか苦難を味わって荒れていた時期があったんだ』


 ディードへの恭也や美由希の評価は非常に高く、俺の娘とは思えないほど真面目に鍛錬しているらしい。どういう意味だ、コラ。

テロ事件主犯の剣士に敗北した経験は俺の後継を名乗るディードのプライドをよほど傷つけたのか、誇りを取り戻すべく剣の修業に励んでいる。

だから生傷が絶えないのだが、傷だらけでも胸を張って修業の成果を報告するディードは可愛かった。頭を撫でてやると、とても嬉しそうにしていた。あの調子なら問題ないだろう。


今日はディード達にフィアッセの護衛を任せ、俺は外出することにした。


「リョウスケ、今日はミヤが一緒に行動するです」

「お前と一緒に行動するのは久しぶりだな」


 ジュエルシード事件で暴走した闇の書から切り離されたユニゾンデバイス、ミヤ。最近聖地でボランティア活動に励んでいた子が、久しぶりに帰郷した。

聖女カリム・グラシアの予言で戦乱が起きた聖王教会本土は荒れてしまい、戦乱が収まった後もその傷跡を残していた。

役目を終えた俺達はさっさと帰ったのだが、お人好しのこいつは残ってボランティア活動を頑張っていたのである。主導していたのは白旗であり、あくまでこいつはお手伝いだけど。


おかげでようやく落ち着いたのと、コンサートの一件もあって里帰りしたのである。


「しばらくアギトちゃんにお願いして任せていましたけど、やはりリョウスケは危険なことをしているんですね。
聞けば悪者たちに狙われているらしいじゃないですか」

「悪者達が悪いことをしようとしていたから阻止しただけなのに、逆恨みされているんだぞ」

「話を聞いたので事情は分かっていますけど、それはそれとしてはやてちゃんに心配をかけてはダメですよ」

「お前だってここ数ヶ月以上留守にしていたんだから、心配させているんじゃないか」

「うっ……ミヤもはやてちゃんのところへ帰りたかったですけど、皆さんも困ってましたから」


 そう、このお人好しバカは人助けに夢中になってしまい、聖地に留まったまま数ヶ月以上経過したのである。

人に飼われた犬だって恩を忘れず、どこへ行っても主の元へ帰ってくるぞ。自由気まますぎるだろう。

ミヤも決してワガママな子ではない。捻くれ者のアギトでさえ呆れるお人好しぶり、主が心配すれば本来真っ先に帰っていただろう。


ただ地球と聖地という距離感は絶望的であり、自由気ままに行き来するのは困難だった。そういった意味ではこいつの事情も理解は出来るのだが。


「と、とにかくアギトちゃんの分まで、ミヤが今回リョウスケのお世話をするですよ。ちゃんと守りますからね!」

「妹さん含めた警護チームもついてきてくれているけどな……お前の存在を証明するのが難しいけど」


 ミヤはユニゾンデバイスであり、当然だが地球上に存在する生物ではない。どれほど驚異的に科学技術が発展しても、妖精は製造できない。

ユーリ達は外国人とか、超能力者など表現できる単語はあるが、ミヤの場合は確実に見た目から存在しない為説明が難しいのだ。

敢えて言えば機械仕掛けという説明が出来なくはないが、そこまでしてまで隠すよりある程度でも説明した方が話は早いだろう。


元々はユニゾンデバイスという存在だからな、ある意味で機械仕掛けと言えなくはないが。


「バタバタしていてあまり話せてなかったが、お前の近況はどうなんだ」

「ふえ、ちゃんと頑張って皆さんのお力になるべく頑張ってましたよ!」

「それは聞かなくても分かる。こうなんというか、お前の身の回りで何かなかったのか」

「ああ、そういう事ですか。心配してくれてありがとうございます。
そうですね……やはり実際に皆さんのお力になるべく頑張ってたので、回復魔法とか結構上手くなりました。
あとはやはり悪いことをする人も出てきましたので、拘束魔法とかも覚えたりとかしましたねー」

「お前の魔法、生活に密着し過ぎなのが凄い……案外、なのはやはやてが目指す方向性なのかも」


 好きこそものの上手なれという言葉があるが、やはり人助けを趣味としている女の子は違う。

考えてみれば俺と一緒に行動していた頃は戦う力ばかり求めていたのもあって、始終苦労させていた記憶がある。

魔法を他人を傷つける為に使うより、他人でも助ける為に使った方が、ミヤにとっても使い甲斐があったのだろう。


魔法の詠唱や構成もずいぶん早くなったと自慢している。


「魔法の使用頻度が増えれば自然と魔力量も多くなりそうだな」

「うーん、それがあんまり増えていないんですよね……ガス欠になるのが早くて困ってます。
勿論使えば使うほど増えてはいるんですけど、はやてちゃん達に比べればまだまだですね」

「あいつらはガキンチョの分際で、化け物レベルの魔力量を秘めているからな。
ユーリとか太陽並みの熱力を秘めているしな」


 魔法を使えば使うほど洗練はされるが、魔法を生み出す量は限定的らしい。

この点については正直なところ不満と言うより、むしろ納得できる。だってこいつ、ユニゾンデバイスだしな。

ユニゾンデバイスの規格はあくまでマスターあってこそであり、主と合体することで本領を発揮する。


言い換えると主が傍にいない状態では、フルスペックを発揮できないのはむしろ当然だった。


「そういえばリョウスケ、最近砲術を使ってないですよね」

「? どうしてそう思うんだ」

「魔導書が改竄されればミヤにも伝わりますけど、リョウスケと別行動してから全然反応しなくなったので。
元々不安定な力ですし、あまり多用しないほうがいいですよ」

「そんなのまで分かるのか……まあ確かに最近使っていないな」


 俺の法術は他人の願いを叶える力であり、自身の望みは叶えられない。

しかも手動でコントロールできず、どういう条件なのか分からないが自動で勝手に発動する。

だから聖地の聖典を求めたり、イリスに解析を頼んで、法術の制御方法を探しているのだ。


ミヤに指摘されて気付いたが、確かに最近使ってない。むしろ法術を使うのを、発動するのを拒んでいたきらいがある。


「法術を使わないに越したことはないだろう、何があるか分からんしな」

「それもそうですね。さあ、はやてちゃんの家へ行きますよ! コンサートへ誘うんですよね」

「ウキウキなのはいいけど、家に帰らないままだとそのうち怒られるぞ」

「うっ、それは……リョウスケがいますから」

「俺になすりつけようとするな!?」


 ということで懐かしきコンビである俺とミヤが、はやての家へ帰ることになった。

俺もずっと留守にしていたから、あまりミヤを責められないな。


はやてもそんなに怒らないだろうけど、フォローくらいはしてやろう。














<続く>








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