とらいあんぐるハート3 To a you side 第十三楽章 村のロメオとジュリエット 第百三十三話



テロ事件の余波も収まり、世界は日増しに明るいニュースで盛り上がる。言わずとしれたクリステラソングスクール、世界に羽ばたくチャリティーコンサートである。

俺は全くもって分からんが、出演者は世界に名だたる歌姫達の総出演。過去最高規模の音楽祭ということで、世界中のファンが色めき立つ事態となっている。

コンサートの初公演は日本だと発表された瞬間、日本への注目は沸騰するほどに高まり、政治的かつ経済的に高騰するほどの影響を及ぼしていた。都市伝説、あるいは社会現状とでも言うべきか。


当たり前だが、コンサートのチケットは一瞬で完売。転売対策は当然のように行われているが、それでもファンという名の亡者達が躍起になって求めている。


「はい、チケット。リョウスケやアリサちゃん達のためにSSSチケットを用意したよ」

「えっ、俺の分も入ってる?」

「当然だよ、リョウスケには絶対観てもらいたいもん!」

「お前の護衛で雇われているのに当日遊んでいろというのか、お前」

「あっ……」


 受け取ったプラチナチケットをヒラヒラさせながら聞くと、フィアッセは今気づいたかのように美貌を驚愕に染めている。アホか、こいつ。

いやまあ、実際コンサートの警備体制は国際的規模といえるほどに厳重であり、俺のような素人が入り込む余地は一切ない。むしろ現場をウロウロされたら、完全に邪魔だろう。

とはいえアルバート議員に雇われている以上、呑気にコンサートを楽しむ余裕はない。その点についてはエリスとも話し合っており、当日の体制は彼女に一任している。


情けない話、危険な配置は絶対任されないだろうが、報酬は出るしフィアッセ達への恩返しも出来るから、俺としては目的は達成できる。


「でもでも、会場には絶対いるよね!?」

「お前のコンサートなんて全くといっていいほど興味ないけど、流石にバックレるわけにはいかないからな……
会場の何処かにはいると思う」

「なるほど、パパとママに頼めばリョウスケの配置は教えてくれるよね」

「お前の位置関係を知ってどうするつもりだ、お前」


 こいつ平然と遊びに来そうだから怖い。当日のコンサートはメイン級の活躍をするはずなのに、一警備員の顔なんぞ見に来ないでほしい。

馬鹿め、口を滑らせたのが運の尽きだ。今のうちにエリスとアルバート議員に頼み込んで、当日の俺の護衛体制は教えない方に釘を差しておこう。

彼らだってプロなので、俺の主張のほうが正しいと理解してくれるはずだ。むしろフィアッセが能天気に会場をウロウロしようとすることを呆れるに違いない。


フィアッセの親父さんやお袋さんが我が子を心から可愛がっているが、娘を危険に晒すほどの親馬鹿ではない。


「それにしてもこのチケット、妙に数が多い気がするんだが……うちの家族分以外にもあるのか」

「うん、リスティ達の分もあるよ。勿論その中には、シルバーレイちゃんの分もあるから」

「全員、俺が誘えってのか……」


 嫌々受け取ったが、フィアッセは現在進行形で狙われているので制限がかかっているのは知っている。外部へ気軽に連絡できる状態ではない。

俺自身も狙われているのは同じだが、外部へ連絡する手段は幾らでもある。うちの家族なんて、空まで飛べるやつもいるしね。

高町家にはフィアッセ本人ではなく、クリステラ一家として招待しているそうだ。家族ぐるみの付き合いとあれば、義理人情の幅も広がる。


話はわかったので一応受け取ったが、


「シルバーレイは面倒臭がりだから嫌がると思うぞ」

「そうだよね、だから私からではなくリョウスケからの方がいいと思って」

「俺だったらオッケーという訳でもないだろう」


 むしろ俺から誘う方が嫌がる気がする。チャイニーズマフィアを裏切ったことは後悔しておらず、むしろ清々としているが、俺をからかいまくるからな。

フィリスやシェリーの誘拐、シルバーレイの裏切りによる事件で、彼女達はしばらく潜伏していたが、ようやく日常へ戻れつつある。フィリスもティオレ御婦人の医療チームに参戦しているからな

シェリーも職場のレスキュー部隊へ戻った方がある意味安全かもしれないが、渡航の許可がまだ出ておらず、日本で生活を続けている。


そういう意味ではチャイニーズマフィアが襲ってくるコンサートへ行くのは微妙かもしれない――とも考えたが、うちの頭脳陣は見解が違った。


『コンサートが行われる日で、別の側面で見れば日本で一番安全な場所と言えるかもしれませんよ。父上』

『チャイニーズマフィアが主目的としているのは明白だからね。
むしろ要警備対象が一箇所に来てくれた方が、警護する側もやりやすいでしょう。戦力を分散させずに済むし、気を配らなくてもいいわ』


 世界に名だたる歌姫達が集う音楽の祭典という名目で、主要各国から相当な戦力を集められる。師匠を通じて香港警備隊の精鋭達も来て貰えるらしい。

SSSチケットが有効なVIP席にはうちの家族、つまりユーリ達が一緒にいる。世界を滅ぼす戦力に襲われても、ユーリ達ならどうにでもなるだろう。

嫌がるかもしれないが、組織の裏切り者であるシルバーレイも連れてきた方がいいかもしれない。明白に裏切った形ではないにしろ、シルバーレイに懐疑的な目を向けているのは間違いない。


そういう意味ではあいつも一緒にいたほうがいいか、裏切らせた責任もあるしな。


「とりあえずチケットはありがとうよ。俺は仕事だが、連中は誘っておくよ」

「うん、お願いね」


 うーん……見た感じ、今のところフィアッセに緊張や不安は見られない。この前の説明で一応納得してくれたのか。

コンサート前に動揺される方が厄介なので良い傾向ではあるんだが、HGS関連で爆弾を抱えているので爆発しないかどうか気がかりではある。

失恋による不調は乗り越えているようだし、俺へのアプローチも日頃から無視や拒絶を決め込んでいるので、こいつも気にしている素振りすらない。


爆発する余地があるとすれば、近しい者の死――親父さんかお袋さんの危険になるのだろうが、それは俺達が全力で阻止すればいいしな。


「そういえばお前、課題を言い渡されているんだろう。
日本の初公演が間近に迫ってきているが、作曲は大丈夫なのか」

「うん。この前リョウスケと一緒にママと会った時、ヒントを貰えたから!」


 ……ヒント? ティオレ御婦人、何か作曲へのヒントなんて言ってただろうか。

音楽には疎い俺には全然ピンとこないが、フィアッセは何か感じ取れたらしい。

頭を抱えていた時期が嘘のように、生き生きとしている。どんな歌を思いついたんだろうか、こいつ。


世界中が注目している中でラブソングとか歌ったりしないだろうな……














<続く>








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