とらいあんぐるハート3 To a you side 第十三楽章  村のロメオとジュリエット 第百二十四話
                              
                                
	 
 ホテルで起きた要人テロ脅迫事件。死傷者は出なかったが怪我人は多数、ホテルにも大穴を開けてしまった事件。全てを隠蔽するのは難しい。 
 
エリス率いる国際警備保障とティオレ御婦人の夫であるアルバート議員の働きかけ、上海で起きた要人暗殺によるテロ撲滅への逆風を防ぐべく政府筋からの協力。 
 
それらが入り乱される現場の邪魔をしないように、俺達は退室する事になった。ユーリ達は怪我人の救助、シュテル達は現場スタッフの協力を行うべく、活動してくれている。 
 
 
ということで、俺と御神美沙都師匠が静かに再会を果たすこととなった。 
 
 
「怪我はなかったか、良介。遅くなってすまなかった」 
 
「いや、むしろ非常に良いタイミングでした。 
先でも後でも大事になってしまっていたかも知れません、助かりました」 
 
 
 チャイニーズマフィアやティオレ御婦人達には毅然とした態度を見せていた師匠が、二人きりになった途端顔色を変えて詰め寄ってくる。 
 
自分自身の剣が届かない所で凶行が起きたのだ、過去に似たような事情で大切な家族達を亡くした師匠からすれば、気が気でなかっただろう。 
 
俺からすれば迅速な対応だったと思うので、努めて明るく何事もなかったかのように接した。まあ実際怪我人こそ出たが、死人が出なかっただけでも御の字だろう。 
 
 
ユーリ達や師匠が居なければありえなかった結果だったので、むしろ俺の方が感謝したいくらいだった。 
 
 
「もう一度お前の口から今日起きた出来事を説明してもらえるか、状況を整理したい」 
 
「落ち着いて話せませんでしたからね、分かりました」 
 
 
 支障が来てくれた安心感はえげつなかったので、堰を切ったように言葉が溢れ出た。チャイニーズマフィアに正面から脅迫されたのだ、緊張感がやばかった。 
 
テロ事件主犯の一人である大剣使いと、ボスを名乗るコートの男。チャイニーズマフィアの龍である事は間違いなく、その名前が出た瞬間師匠の表情がダントツに険しくなった。 
 
それでも感情を暴走させることはなく、事の次第を聞いて俺を励ますように肩を叩いてくれた。緊張していたことはやはり見抜いていたのだろう、寄り添ってくれて安心した。 
 
 
考えてみれば此処半年余り、頼られることは会っても頼ることは少なかった。頼もしい大人達は多くいるが、師匠の存在はやはり違うように思う。 
 
 
「とんだ面談となってしまったが、お前の仲介でティオレ婦人の護衛として雇われることが出来た。 
敵の目的も明らかとなった以上、事件の渦中に立てる事の意義が大きい。助かった」 
 
「こちらとしても大物が出張ってきた以上、師匠が加わってくれたことは心強いですよ」 
 
「後は任せておけと言いたいところだが、お前の存在が大きいようだからな。 
向こうとしてもお前がプロではない事は理解しているが、それでも御息女の事も含めてお前に力となってほしいのだろう。 
 
私の任務はティオレ婦人の護衛とテロリスト達の殲滅だが、師としてお前の力となろう」 
 
 
 御神美沙都を師匠と呼んでいるが、押しかけ弟子みたいなものであって、師匠本人は当初俺との関係はあまり好んでいなかった。 
 
俺本人がどうという話ではなく、復讐に邁進していた彼女は他者との接点を避けていた。孤独に血みどろの道を歩き続けていたのだ。 
 
今も復讐を諦めたわけではないが、夜の一族を始めとした多くの人たちとの連携の方が事を成せる状況となり、彼女も考え方を変えて表社会へ復帰した。 
 
 
その縁もあって、彼女は俺との関係も認めてくれたのだ。だからこそ自ら師と呼ぶことはなく、俺を励ますために行ってくれたのだろう。 
 
 
「初公演となる日本のチャリティーコンサートが狙われるのはほぼ間違いない。 
お前を通じて関係者との契約も結べたので、香港国際警防隊からも人員を動員できる。今度こそ奴らの息の根を止めてやる」 
 
「上海での悲劇で巻き返しを図ってきていますしね……」 
 
「そういった意味では今回敵を退けたことは大きいし、喧伝する効果はあるが……コンサートにも影響してくれるのでその線で追い込むのは難しいだろうな。 
ただ心配していた御婦人の体調は持ち直し、怪我人こそ出たが被害も多くはなかった。 
 
この状況であればコンサートの開催を第一に考え、日程通り進めることを優先するだろう」 
 
「ティオレ御婦人も決意していました。事此処にいたった以上、関係者も腹を括るでしょうね」 
 
 
 政治の難しい話はアルバート議員達に任せておいて、俺達はあくまでティオレ御婦人やフィアッセを護ることに集中する。 
 
ユーリ達も帰郷して早々頼りになってくれたし、魔法を超能力としてごまかすことにも成功した。 
 
ただ敵側にユーリ達の存在や力を知られてしまったので、本番では確実に何らかの対策を練ってくるだろう。 
 
 
個別に狙われる可能性はあるし、注意しなければいけない。 
 
 
「師匠は日本ではどうされるつもりですか」 
 
「本来であれば護衛である以上ターゲットの側にいるのが基本だが、彼女は警備会社に守られている。 
私はお前と同じ立場となるので、常に同行するわけにもいかない。ビジネスホテルは見つけてある」 
 
「せっかく日本に来たんですから行けばいいじゃないですか」 
 
「? 何処にだ」 
 
 
「高町の家」 
 
「なっ」 
 
 
 普段冷静な師匠は絶句していた。 
 
いやまあ、顔を合わせづらいのは分かるんだけどね…… 
 
 
復讐のために預けていた自分の娘が、高町の家にいるんだから。 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
<続く> 
 
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