ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 24 "Men and Women"






Action66 −二華−








マグノ海賊団が許可された刑務作業を実施するに当たり、通常は労働安全衛生を徹底する必要がある。

こういった基準は国からの法令に準じた措置を講じており、作業災害の発生防止に万全を期するのが決まりだ。

だがここは流刑地で、犯罪者達の成れの果て。安全を心がける必要はなく、死ねば終わりとされている。


当然、法令を守る必要はない――言い換えると、法令が適用されない場所ということである。


「空調システム、ガタガタなんできっちり修理してもいいですか」

「いや待て、受刑者の環境を改善してどうする」

「刑務官さん達、こんな所に住んでて何とも思わないんですか」

「うっ……」

「牢獄内の環境まで手出しするつもりはありません。
ただせめて刑務官さん達の目が届く労働環境について改善させてくださいよ」


 法令が適用されない以上、結局流刑地の管理はすべて現場の人間に委ねられる。

極端な話、刑務長や刑務官達のさじ加減でどうとでもなるということである。

本来こういった収容所関連は国の管理になるのだが、流刑地という離れ島にまで至るとほぼ放置されている。


現場任せといえば聞こえはいいが、犯罪者達が投獄さえされていればなんでもいいのだろう。


「大変です、刑務官。事故が発生しました!」

「ふん、医務室へでも放り込んでおけ」

「作業上で起きた不測の事故なんですが――」

「だから何だ、犯罪者を手厚く介護でもしろというのか」

「事故に巻き込まれたのは、刑務官なんですけど」

「何故それを先に言わないんだ!?」

「大丈夫です、我々が適切に対応いたしました。ただ刑務官が仰られたように医務室へ運ぶ必要があるので、許可をもらえますか」

「ちっ、そういうことなら仕方がないな」


 こうした不慮の事故で身体に障害が残ったとき等は、障害の程度に応じて本来国から手当が支給される。

ただそれはあくまで他の刑務所の話で、流刑地にまで至ると不慮の事故まで現場責任にされてしまう。

これは犯罪者に限った話ではなく、刑務官まで現場責任となる。


現場の責任ということは、死んだとしても現場が責任をおう羽目になる。


「何とか助かりましたけど、一歩間違えれば死んでいましたね……」

「ぐっ、なんてことだ……」

「この前申請した話、やはり考え直してもらえませんか」

「作業場の改善の話か。
しかしだな、この流刑地で犯罪者が刑務を行う以上、改善などしては反省も何もあったものではないだろう」


 ――マグノ海賊団はこの事故を予期していた。

故郷を追い出されて、厳しい環境下で海賊のアジトを建設して生活空間を整えた彼女達の目はごまかせない。

予期していたからこそ刑務作業者の被害はなく、刑務官側のみ事故に巻き込まれた。


命が助かったのも偶然ではない。危険を演出した上で、死人が出ないようにした。


「その結果、刑務官さんまで苦労する事になりますよ。
海賊のアタシらが見ても酷い環境ですし、多分そのうち死人が出ますね」

「……ちっ、分かった。所長にかけあうので待ってろ」


 結果、労働環境はマグノ海賊団の手により整えられることとなった。

眼を見張るほどの改善はされたが、結果として作業場の隅々にまでマグノ海賊団の手が入る事になった。

どこに何があるか、どういったセキュリティで、どういう防衛がされていて、どういった抜け穴があるのか。


善意というお善立ての元、流刑地は内側から改善されていった。

















<to be continued>







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