ヴァンドレッド the second stage連載「Eternal Advance」




Chapter 23 "Motherland"






Action14 -御理-








『パーティを大いに盛り上げる貴殿の芸に期待しております』


 クリスマスパーティで一芸を強いられる無茶振りを押し付けられて、バート・ガルサスは悩みつつも自室へ戻った。

折角の休憩時間なので休めばいいのだが、パーティの時間が迫っているのであればそうも言ってられなかった。

仕事の合間でも思いがけず忙しくなってしまったが、本人は乗り気なので意外と充実していると言えた。


プライベートが充実しているだけでも、幸せと言えよう。


「シャーリーは留守か……」


 自分の家族の一員となったシャーリーはバートの部屋にはおらず、少しだけ寂しく感じつつもバートは口元を緩める。

病の惑星では明日をも知れぬ重病に苦しんでいた彼女も、テラフォーミングの奇跡で回復することが出来た。

本人が望んで故郷を離れ、バートの家族になることを望んで今を生活している。


これ以上ない幸福と言えよう。


「またカイの所のチビっ子と遊んでいるんだろうな。根はいい子なんだけど、あいつは口が悪いからな。
シャーリーが真似して不良にならなければいいんだけど」


 カイが引き取ったミッションの子供、ツバサ。容姿は可憐な女の子なのだが、女ボスであるリズが支配していた空間で育って口が悪い。

一旦口を開けば罵詈雑言が飛び出し、憎まれ口を平気で叩く。大人顔負けの悪口には、閉口させられる。

本人に、悪気はない。単純に口が悪いと言うだけで、大人を嫌っているのではない。気っ風の良さが、口の悪さとなっているだけだ。


そんなツバサも、カイの前では借りた猫のように大人しくしているので微笑ましい。口に出さずとも、引き取ってくれたカイが大好きなのだ。


「サンタクロースか……確か書物によると、子供達にプレゼントを贈る人なんだよな。
一芸で扮するのであれば、シャーリーになにかプレゼントを贈ろうかな」


 クリスマスパーティの一芸として、サンタクロースに化けることは既に決めている。

タラーク・メジェール両国家でもあまり馴染みのない文化なので、大々的に扮すればそれなりにウケそうではあった。

伝わっていないのではなく、浸透するほどに両国家に余裕が無いのだ。


明日を生きる為に今日を必死で生きる生活には適さない、文化であった。


「プレゼント、女の子へのプレゼント……一体何を贈れば、喜んでくれるんだ」


 そしてプレゼントも然り、である。相手に贈るほど余裕がなければ、これもまた浸透しない。

贈り物自体の風習は当然あるのだが、そもそも両国家において男女交流が一切ない。

女性が男性に贈るのも、男性が女性に贈るのも前例がないのだ。


正確に言えばこの船の中では幾つかあるのだが、少なくともクリスマスにおいてはまだ二回目である。


「くっ、シャーリーが喜ぶものは同じ子供に聞けばいいんだけど、今一緒に行動していそうなんだよな」


 シャーリーの友達であれば知っていそうだが、そのツバサは多分シャーリーと一緒にいる。

本人に聞けば一番早いかもしれないが、サプライズという文化をこの前のメイアの誕生日で知った。

サプライズは本人がとても喜ぶ文化であることを、他でもない女性達から教わったのである。


同じ女の子であるシャーリーにも、喜んでほしかった。


「よし、カイに相談してみるか。今ジュラと一緒だろうし、相談もしやすいからな」


 不思議なことに、サプライズであってもカイであれば素直に相談できるという確信を持っている。

話せばリスクが増えるというのに、そういった危険も一切感じない。本人の頭の中にもない。

それほどまでに信じられており、そんなカイが信じているジュラも無条件で信頼できた。


バートは鼻歌を歌いながら、職場へと戻っていく。磁気嵐を抜けるべく、カイ達はまだ頑張っている。


「やっぱ持つべきものは友達だよね」


 故郷を前にして一人、何もかも持っているバートは幸せであった。























<END>







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